芸術と歴史が交差する街、パリ。130を超える美術館・博物館が存在するこの都市には、そこかしこにアートが息づいています。
ここでは、パリと日本を拠点に、アートについて発信する杉浦岳史さんによる連載『パリとアート』から、芸術の都パリで文化を満喫するための、厳選された美術館をご紹介します。
荘厳な教会から華やかな百貨店まで、パリを彩るステンドグラスの美しさを訪ねて。

パリのアートシーンといえば絵画や彫刻が話題になるが、さすがは芸術の国だけあってほかの身近なところでもそこかしこにアーティスティックな風景を見ることができる。そのひとつが「ステンドグラス」の文化だ。
金属酸化物を混ぜることでできる着色ガラスを使って模様や装飾を描くステンドグラス。フランスでも主にキリスト教の物語を民衆に伝えるために教会の窓がステンドグラスで彩られてきたが、その手法はスタイルを変え、あるいは飾られる場所を変えつつ、現代まで受け継がれている。今回はパリで見ることができるさまざまなステンドグラスのアートを訪れてみたい。
旅と芸術をこよなく愛した夫婦が築いた珠玉のミュゼ。
パリ、ジャックマール・アンドレ美術館。

パリという街の中心部が、今のような整然と美しい街並みになっていったのは19世紀の頃。それまでは細い路地が入り組んだ中世以来の街並みが続いていた。
それを進化させたのは、19世紀半ばにパリをふくむセーヌ県の知事になったジョルジュ・オスマン。彼と当時フランスの皇帝だったナポレオン3世が主導してパリの中心部にいくつもの大通りを造り、上下水道やガス管が街に張りめぐらされた近代的な都市にしたというわけだ。これがいわゆる「パリの都市大改造」で、その象徴ともいえるのが、凱旋門からサン・ラザール駅方面に向けて延びるその名も「オスマン大通り」。今回ご紹介する「ジャックマール・アンドレ美術館」は、このオスマン大通りに沿って建つ美しい建築だ。
巨匠が一生大切に手元においていた作品と美しき建築を観る、パリ・マレ地区のピカソ美術館。

パリに数あるアーティスト個人の美術館でも世界的に最も有名な「パリ国立ピカソ美術館」。9月のパリを彩るデザインウィークやファッションウィークでも華やぐ人気のマレ地区にそれはある。美術館が入る「サレ館」は、かつてルイ14世の時代に塩税徴収を担当して私腹を肥やしたピエール・オベール・フォントネーが3年の歳月をかけて1659年に完成した洋館。その経緯から人々が「Salé サレ=しょっぱい」館と呼ぶようになったのが定着したのだという。展示室へと向かう豪華な階段には、当時の美しい彫刻装飾が残されている。
暮らしに彩りを添えるエスプリがつまった、パリのコンセプトストア「EMPREINTES」。

パリ3区、ファッションアイテムや雑貨を集めたショップ、現代アートギャラリーなどが集まる人気のエリア「マレ」地区。その中でも流行に敏感な人々が集まるブルターニュ通り付近は、立ち並ぶカフェやビストロ、17世紀に開設されたパリでもっとも古い市場「マルシェ・デ・アンファン・ルージュ」、色とりどりのマカロンが世界的に知られる「ラデュレ」など、生き生きとしたパリらしい雰囲気が漂う楽しい界隈だ。このブルターニュ通りとピカルディー通りの交差するあたりに、今回ご紹介するコンセプトストア&ギャラリー「EMPREINTES(アンプランツ)」がある。
画家ギュスターヴ・カイユボット。印象派の「陰の立役者」を育てた美しい邸宅の風景を訪ねる。

今回は、美しい緑に包まれたあるパリ郊外の風景と、誰もが知るモダンアートの潮流や名画にまつわるお話しをしてみたい。
アート作品を語るときには、まずは当然ながらそれを創った芸術家に注目することになる。しかし実際にはいつもそれを評価する評論家やジャーナリスト、芸術家を支援する画商やコレクター、パトロンなどの存在があった。一人一人の芸術家、一つ一つの作品をめぐって多くの人々が関わり、彼らを取り巻くさまざまな物語がアートの歴史に彩りを添えてきたと言ってもいい。










