ワンコと暮らすようになって2年と3ヶ月が経ちました。12時間に及ぶ開頭手術、12時間のICUでの苦しみを耐え抜いて、病院のベッドで人生のどん底を10日間味わい、退院したその日から始まったのがワンコとの新しい生活です。それ以来、柴犬のルーとポンスキーのフェイが大きな心の支えになっています。最初の数ヶ月は彼女たちのおかげで、どうにかベッドから起き上がることができました。

実は術後から5ヶ月間、物が二重に見える複視が続いていました。写真のように見える世界が全てでした。今でも手術した左側の目は不安定のままで、瞬きするたびに視力と焦点が変わってしまいます。疲れが溜まると少しの間ですが、複視になってしまいます。左側の肌感覚も嗅覚も味覚も、顔に残った強烈な痺れのせいで微妙なままです。でも、先生が言っていました。一度壊死した脳細胞は再生されることはないけれど、一般的にどんな神経も1日あたり1mm〜3mmの速度で再生するって。病気になったり、怪我をするというのはとてもつらいことですが、健康体では考えうることのできない希望が生まれます。もし今あなたがつらいなら、先生の言葉を、私を通じて信じてください。あなたの周りにそんな人がいたなら、伝えてください。それから頑張りすぎないで。でも諦めないでって。

ワンコとの暮らしが始まり、気持ちが上を向いてくると、やっぱり好きなことに夢中になります。それは家を整えること、インテリアを変えること。掃除機は毎日かけます。そうじゃないと家も私も毛むくじゃらになってしまうから。

長年使っている茶色のレザーソファーは、ルーとフェイというエイジング加工職人によって古びた雰囲気を醸し出すどころか、大きな穴が空いてしまいました。だからお気に入りのBLESSのブランケットで覆うことに。

こちらも長年使っているロッキングチェアですが、ルーという研磨職人のおかげで脚の先端の角が丸く加工されてしまいました。

別名“瞑想チェア”という私お気に入りの椅子は、基本的にフェイとルーに陣取られています。フェイに至っては、リラックスしている証拠に前脚をクロスして鎮座しています。犬はリラックスすると、咄嗟に立ち上がって走る必要がないから、前脚を組むそうです。

柴犬のルーは脚が短めなので、リラックスしても組むことができません。

書き物をする場所、ダイニングルームのダイニングテーブルも時には占領されます。特に暑い日には、木の表面が冷たくて気持ち良いようで、2匹揃ってテーブル上で昼寝をすることも。

いつものお散歩で立ち寄るカフェには色々なワンちゃんがいます。娘たちのお友達の名前よりも、フェイとルーのお友達の名前の方をよりたくさん覚えています。今みたいに笑えるような日が来るとは2年と3ヶ月前は想像もしていませんでした。時々、後遺症がひどくて落ち込むときもありますが、こんな体になったからこその希望が私にはあります。明日もいい日になりますように!
クリス‐ウェブ佳⼦(モデル・コラムニスト)
1979 年10 ⽉、島根⽣まれ、⼤阪育ち。4 年半にわたるニューヨーク⽣活や国際結婚により、インターナショナルな交友関係を持つ。バイヤー、PR など幅広い職業経験で培われた独⾃のセンスが話題となり、2011 年より雑誌「VERY」専属モデルに。ストレートな物⾔いと広い⾒識で、トークショーやイベント、空間、商品プロデュースの分野でも才覚を発揮する。2017 年にはエッセイ集「考える⼥」(光⽂社刊)、2018 年にはトラベル本「TRIP with KIDS―こありっぷ―」(講談社刊)を発⾏。
今回をもって『徒然のすゝめ』は最終回を迎えることとなりました。
長らくご愛読いただき、ありがとうございました。










