フランスの暮らしとデザインを紹介する連載の13回目はパリに新しく登場したホテルを2軒ご紹介します。一つはパリ17区に完成した大型施設内のホテル、もう一つはカルチェ・ラタンの歴史ある建物を利用したアパートホテル。どちらも新しい旅の形を体験したい方にお薦めです。

新しいライフスタイルを提案する複合型施設「La Fondation」

コージーなロビー。ギャラリー「アメリ・メゾン・ダール」が厳選したアートピースが各所に散りばめられ、小さな美術館のような印象を受ける。
©Clément Gérard

 近年、開発が進むパリ17区のバティニョール地区に、2025年4月、「La Fondation ラ・フォンダシオン」がオープン。10,000㎡を超える敷地に5つ星ホテル、スポーツクラブ、オフィススペースを統合した複合施設。宿泊、ウェルネス、アート体験が一体となった新しいスタイルのラグジュアリースペースだ。

 駐車場だった建物を活かし、ロビーには螺旋状スロープを空間のアクセントとして残している。壁面緑化、ルーフトップテラス、中庭など、建物全体に息づく緑も特徴的だ。

エグゼクティブルーム。
©Romain Ricard

 室内空間はニューヨークの名門デザインスタジオ「ロマン&ウィリアムズ」が担当。モダニズムへのオマージュと職人技への敬意が融合した空間は、高級感がありながらも温もりを感じさせる。ギャラリー「アメリ・メゾン・ダール」によってキュレーションされたアート作品が随所に配され、暮らしの中にアートが溶け込むパリらしい体験を提供する。

スイート・エスプリ・リーブル。
©RomainRicard
スイート・エスプリ・リーブル内のバーカウンター。

 全58室(うち3室がスイート)の客室は、職人が仕上げた家具など、クリエイティブな驚きに満ちている。また、ベッドリネンはフランスの老舗リネンブランド「ガルニエ・ティエボー」とコラボレーション。環境に配慮したテンセルとコットンの混紡素材「エティック」コレクションはサテン仕上げの柔らかな肌触り。快適な眠りをサポートする。

左・カジュアルブラッスリー「La Base ラ・バース」。右・魚や肉のローストなど、シンプルな料理が味わえる。 ©Romain Ricard

 館内には2つのレストランとバーがある。地上階のカジュアルブラッスリー「La Base ラ・バース」は、季節の食材を生かし定番料理を、軽やかで現代的にアレンジ。昼下がりのランチにも、夜の一杯にもぴったりの、居心地のよい空間だ。

メインダイニング「Restaurant de La Fondation レストラン・ド・ラ・フォンダシオン」。
©Romain Ricard
フォアグラ、オマール海老といった高級食材、秋冬はジビエも登場する。
©Romain Ricard

 8階の「Restaurant de La Fondation レストラン・ド・ラ・フォンダシオン」はパリの街を一望する、洗練のモダン・フレンチ。指揮を執るのはシェフ、トマ・ロッシ。伝統的なフランス料理に現代的な感性を重ね、旬の素材を主役にした繊細な一皿を生み出している。

ルーフトップバーは17時〜翌0時の営業。
©Romain Ricard

 夕方からオープンする屋上のバー「The Rooftop ザ・ルーフトップ」では、ワインやカクテル、世界各国の軽食を楽しめる。友人や恋人と、ロマンティックな時間を過ごすのにも最適だ。

ウェルネスセンター。左・クライミングウォール、中・25メートルプール、右・「ル・スパ」。
写真左・中央:©Romain Ricard 右:@MARIKA

 ウェルネスセンターには、最新設備のフィットネスエリア、クライミングウォール、25メートルのセミオリンピックプールを完備。著名なアスリートによる個別指導も受けられる。スパでは「ティポロジー」と「オ ・カラン」のプロダクトを用いたトリートメントを提供。

 宿泊、ウェルネス、アート、グルメまでがひとつにまとまった、新しいライフスタイル型の複合施設「La Fondation」。心も体も満たされる時間を過ごしてはいかがだろう。 

 

La Fondation

ラ・フォンダシオン

住所:40rue Legendre 5017 Paris

料金:1泊€400〜

HP:lafondation-paris.com

カルチェ・ラタンの旬スポット「Le Jardin de Verre by Locke」

入口に面する18世紀の建築。

 緑豊かな植物園に近いパリ5区に、イギリス発のアパートホテルブランド「Locke」のフランス初進出となる「Le Jardin de Verre by Locke ル・ジャルダン・ド・ヴェール・バイ・ロック」が完成。パンテオンやソルボンヌ大学から近く、プチホテルが多いカルチェ・ラタンには珍しい大型ホテルとして、話題を集めている。

レセプション。フランスのアーティスト、パブロ・グラン・ムルセルの壁画を飾る。

 ホテルの設計と共有スペースのデザインを手がけたのは、ロンドンとロサンゼルスを拠点とするデザインスタジオ「フェトル」。ホテル名「Jardin de Verre(ガラスの庭)」は、隣接する植物園「Jardin des plantes ジャルダン・デ・プラント」の緑豊かな庭と、園内の温室から着想を得たもの。“自然を屋内に迎え入れる”をテーマに、ガラスを多用し緑と自然光を巧みに融合させ、まるで現代の温室のようなホテル空間を作り上げている。

工場の鉄骨を一部利用して再構築したアトリウム。手前にバー、奥にレストランがある。

 ホテルは3つの時代の建物から構成される。入口から通りに面した建物は18世紀の邸宅。奥には20世紀の工場建築を再利用した建物があり、その間に旧工場の一部を利用してガラス天井のアトリウムを建設。さらに、手前と奥の建物をつなぐ形で新築の客室を配置している。

 エントランスはグリーンとテラコッタをベースに観葉植物を配し、明るくナチュラルな雰囲気を演出。アトリウムのレストラン&バーは、ピンク、オレンジ、レッドのビビッドなトーンと特注シャンデリアで、グラマラスな空間に仕上がっている。

ロズレア・スイート。広さ67㎡のゆとりある空間が魅力。8人掛けのダイニングテーブル、特大ソファ、ヴィンテージの家具などを厳選。
ベゴニア・スイートは2フロア形式。家具はオーダーメードで、シャンデリアはヴィンテージ。

 全145室は11カテゴリーに分かれ、最上階には2層式のベゴニア・スイートとガラス天井を備えるロズレア・スイートがある。客室デザインは、Lockeを展開するedyn社のインハウスチームが担当。18世紀の邸宅、20世紀半ばの産業時代、21世紀のホテルという3つの建築スタイルを融合し、ダークオークの重厚な床、ヴィンテージやレトロなオーダーメード家具、ステンレスキッチンをミックス。すべての客室にフル装備のキッチンとリビング・ワーキングスペースを備え、短期から長期まで幅広い滞在に対応している。

レストラン「Bibie ビビ」。
左・焼いたポロネギにリヴェッシュというハーブとミモザ卵を添えた前菜。中・メイン。円形にカットしたタラ、ローストトマト、ハーブのヨーグルトとヘーゼルナッツプラリネ。右・ローストしたイチジク、イチジクの葉のオイル、コリアンダーのクリームと野菜のソルベ、香ばしいヘーゼルナッツとイチヂクのソース。
©︎Nashand Young

 広さ900㎡のアトリウムに位置する「Bibie ビビ」は、パリ左岸の新しい美食の拠点。シェフのロイック・ジュリアンは、パリの3つ星店ギー・サヴォワやシンガポールのジュリアン・ロワイエで経験を重ねた実力派。季節の素材を生かしながら、モダンなタッチを加えたフレンチを提供する。ナチュラルワインやビオワインを中心とした200種類のワインセレクションも魅力。

エントランスのそばにあるカクテルバー。17時〜翌2時の営業。
コワーキングスペース。ホテルのゲスト以外も利用できるとあり、人気を集めている。
「Bibie café ビビ・カフェ」。営業時間は7時〜18時。

 館内にはカクテルバー、コワーキングスペースを完備。その一角には「Bibie café ビビ・カフェ」を設け、自家製のヴィエノワズリー、パティスリー、パリを代表するコーヒーブランド「Coutume クチューム」のスペシャルコーヒーや、コールドプレスジュースがメニューに並ぶ。

 ホテルの近くにある植物園は散策にも最適。Lockeが提唱するのは「自分らしく旅する自由」。パリに住まいを持つような体験ができるホテルだ。

Le Jardin de Verre by Locke

住所:7 rue Lacépède 75005 Paris

料金:シティスタジオ(バルコニー付き)1泊275€〜

HP:lockeliving.com/en/paris/le-jardin-de-verre-by-locke

(文)木戸 美由紀/文筆家

女性誌編集職を経て、2002年からパリに在住。フランスを拠点に日本のメディアへの寄稿、撮影コーディネイターとして活動中。株式会社みゆき堂代表。マガジンハウスの月刊誌「アンド プレミアム」に「木戸美由紀のパリところどころ案内」を連載中。

Instagram:@kidoppifr

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