フランスの暮らしとデザインを紹介する連載の16回目は、パリに新しく登場したショコラトリーをご紹介します。五感を刺激する空間には、名作映画を彷彿とさせる魔法のような仕掛けがいっぱい。その驚きに満ちた世界を覗いてみましょう。

2025年10月のオープン以来連日行列が絶えない「セドリック・エ・ラ・ショコラトリー」。パリ2区、オペラ通りの角地に位置し、パティスリー「セドリック・グロレ・オペラ」はすぐそば。

 世界で最も有名なパティシエの一人、セドリック・グロレが2025年10月、パリ2区のオペラ通りにショコラトリーをオープンした。店名は「Cédric et la Chocolaterie(セドリック・エ・ラ・ショコラトリー)」。ロアルド・ダールの名作『Charlie et la Chocolaterie(チャーリーとチョコレート工場)』へのオマージュだという。

店内は、一歩足を踏み入れれば誰もが童心に帰るような仕掛けに満ちている。天井にはチョコレートで作った600個のカカオの実がぶら下がり、壁には本物のチョコレートが流れる。入場制限が行われ、ゆったりと買い物ができる。

「ウィリー・ウォンカのように魔法のショコラトリーを作りたかった。3年以上かけてコンセプトを練りました」とセドリック・グロレは語る。パティスリー、カフェに続く新たな挑戦が始まった。

トロンプ・ルイユ(騙し絵)のケーキ。ピーナッツ、レモン、ピスタチオ、アーモンド、カカオ豆など、まるで本物のようなリアルさで作られている。

 セドリック・グロレは、フルーツを模した精巧なケーキで世界的に名を馳せたパティシエ。リンゴ、レモンなど、本物と見紛うほどリアルなケーキは、世界中のスイーツファンを虜にした。

 セドリックはパリの名門ホテル、ル・ムーリスのシェフ・パティシエを務め、2018年に「世界最優秀レストラン・パティシエ賞」を受賞。Instagram等、SNSで絶大な人気を誇り、世界中の美食家に愛される存在だ。

タブレット・ショコラはミルク、ダーク、ホワイトの3種を展開。ピスタチオやピーナッツのプラリネ、インドネシア産バニラビーンズ入りのタブレットが好評。

 彼が満を持してオープンしたショコラトリーは、厳選されたカカオ豆を使用。「良質なカカオ豆を選ぶことが、美味しいチョコレートの第一歩」と強調する。

 タブレットは、ダーク、ミルク、ホワイトチョコレートの3種を展開。プラリネ入りはアーモンド、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、ピーカンナッツ、ピーナッツの5種。丁寧にローストされたナッツは香ばしく、サクサクとした食感も魅力。バニラのガナッシュ入りタブレットも人気商品のひとつ。

ボンボン・ショコラ(手前)もミルク、ダーク、ホワイトの3種を展開。ピーナッツやアーモンド、ピスタチオなどのフォルムで、目でも下でも楽しめるようにデザイン。

「ボンボン・ショコラは、遊び心と洗練を兼ね備えています。木の実を型取り、自然への敬意を表しています」とセドリック。

 艶やかなダーク、ミルク、ホワイトチョコレートのクーベルチュールの中は、サクサクとしたプラリネ。口溶けの良いチョコレートと、ナッツのバランスは完璧だ。「チョコレートの木の実」は、幼少期へのオマージュであり、純粋な喜びや、チョコレートをかじる時のワクワクするような楽しさを称えているそうだ。

左:マシュマロをチョココーティングした「セドリコ」はお店のマスコット。右:左からパート・ド・フリュイ、オランジェット、マンディアン。

 コンフィズリー(砂糖菓子)は、オレンジの輪切りを模したオランジェット、鮮やかな色彩のパート・ド・フリュイ、そしてチョココーティングされ、口の中でふわっととろけるマシュマロ菓子をラインナップ。どのお菓子もフランスに古くから存在するが、こちらの商品は斬新なフォルムを採用しながらも、品良く繊細な味を実現。

会計はショップの奥のカウンターで行う。オーダーした商品は小さなエレベーターに載せられ、カウンターのガラスケースまで運ばれてくるという遊び心あふれる演出も魅力。

「子供の頃、チョコレートが魔法の道具になるような場所を作りたいと考えました。その夢を実現したのです」とセドリック。

 連日絶えない行列の先に待っているのは、現代のウィリー・ウォンカが魔法をかけた、驚きと喜びに満ちたショコラだ。パリの街角に現れた「夢のチョコレート工場」は、訪れるすべての人を、ひと口で幸せな世界へと連れて行ってくれるだろう。

Cédric et la Chocolaterie

住所/33 Avenue de l’Opéra, 75002 Paris

Instagram/@cedric.et.la.chocolaterie

(写真・文)木戸 美由紀/文筆家
女性誌編集職を経て、2002年からパリに在住。フランスを拠点に日本のメディアへの寄稿、撮影コーディネイターとして活動中。株式会社みゆき堂代表。マガジンハウスの月刊誌「アンド プレミアム」に「木戸美由紀のパリところどころ案内」を連載中。
Instagram:@kidoppifr

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