部屋にお気に入りの絵画を飾るだけで、空間の雰囲気が変わったり、気持ちが豊かになったりするもの。 そんな「アートと暮らし」をつなぐ体験を広げるべく、アーティストやアート作品の情報を集約したオンラインプラットフォーム「ArtSticker」を運営する「The Chain Museum」とともに、3回にわたって生活を素敵に彩るアートの連載をお届けします。

今回は、「The Chain Museum」のオフィスを訪れ、アートアドバイザー・大和久 凪さんに、自分に合ったアートの選び方を伺いました。
初めての一枚を選びたい人にも、コレクションを広げたい人にも役立つ内容です。
記事内に登場するアートは、「The Chain Museum」オフィスに点在する多彩なコレクション。作品との出会いを楽しみながら読み進めてください。

The Chain Museum アートアドバイザー 大和久 凪(おおわく・なぎ)
新卒で高級車のディーラーに入社。高単価商材における顧客との信頼構築や、有形・無形の多様な領域で営業経験を積む。前職のアートテックスタートアップでは、ギャラリー向けSaaSのセールス・CSに従事。2025年10月にThe Chain Museumへ参画。現在は作品のセールスに留まらず、アートを通じて広がるコレクターの体験を多角的にサポート。

The Chain Museumとは
「気付きのトリガーを、芸術にも生活にも。」 をミッションに掲げる日本のアート企業。 アーティストと鑑賞者、そしてアートと生活をつなぐプラットフォーム「ArtSticker」やアートギャラリーを運営する。
「ArtSticker」では、価格や作品のテイスト、色合いなど、さまざまな条件から好みのアートが見つかるほか、日本各地の展覧会やアートイベント、芸術祭などアートに関する情報が集約されている。
The Chain Museum https://www.t-c-m.art/
ArtSticker https://artsticker.app/
アート初心者は身近にある現代アートを意識することから

――暮らしにアートを取り入れるとき、最初の一歩として何から始めると良いでしょうか。
まずは、実際のアートに触れる機会を増やすことをおすすめしています。街中にはたくさんのパブリックアートがあるので、意識をして歩くだけでアートに出会うことができます。また、オークションで数千万円という価格で取引されているイメージが強いかもしれませんが、数万円台から購入できる作品も多くあります。「アートは身近なものなんだ」という感覚を持っていただきたいですね。

――初めてアートを購入するという人におすすめの出会い方はありますか?
今は多くのアーティストがSNSで作品や制作過程を発信していますし、まずは自分が気になるものを意識して見てみるのが良いと思います。SNSで作品を見ると、似た系統の作品が表示されるようになるので、自然と視野が広がっていきます。また、ArtStickerなどのオンラインサイトには、たくさんのアーティストの情報が集まっているので活用していただきたいですね。
そして、行ける範囲であればギャラリーに足を運んでみるのはとてもおすすめです。実物を見ると、写真で見た印象とまったく違うこともあります。その“差”を体験するのもアートの楽しさです。
――ギャラリーに行くのは少しハードルが高いと感じている人もいるかもしれません。
ArtStickerでは、展示会情報をまとめて見ることができます。そのなかで、観覧無料 などの情報も載っているので、気軽に行けるものに立ち寄ってみていただきたいですね。ギャラリーは文化施設の役割もあるので、観るだけでももちろん大歓迎してくれます。記念にポストカードを持って帰って家に飾るというのも最初は良いと思います。
また、例えば京橋にある「Gallery & Bakery Tokyo 8分」は「THE CITY BAKERY」と併設されていて、パンやコーヒーを楽しみながらアート鑑賞ができます。カフェという普段の生活の延長線のなかで、アートを体験できる気軽な空間です。

多くのアート作品に触れることで自分の好みが見えてくる
――自分の好みを理解するためにできることはありますか。
「好きだな」「なんとなく良いな」と思った作品を、素直に拾っていくことだと思います。スマホで見たらスクショを撮る、展示やお店で気になったら写真を撮る。そうやって気づいたときに記録しておくと、あとで並べて見返したときに、自分の好みが自然と浮かび上がってくるんです。
――たくさんの作品に触れるというのが大切になりそうですね。
それが一番だと思います。でも、そこで「アートだから」と難しく考える必要はまったくありません。服を買うときには、そこまで深く考えずにシルエットや色を自分なりに見比べて選びますよね。アートも良いと思ったものを見比べていくというプロセスは他のもの選びとほとんど変わらないんです。
一方でアートならではの面白さは、「なぜこれは好きじゃないんだろう」と考えてみることにもあります。特に現代アートであれば、同じ時代を生きるアーティストが、同じ文化や背景の中で、なぜこの表現になったんだろう、と思いを巡らせるきっかけにもなります。
今はアルゴリズムによって好きなものだけが流れてくる時代ですが、アートはその外側にある世界を見せてくれるんです。
もっとアートコレクションの世界を広げるために
――すでにアートを所有している人が、次の作品を選ぶときに持っておくと良い視点はありますか。
お持ちの作品を並べてみると好みが見える場合もあります。そのまま好みの作品を深堀りするのも良いですし、全く違う方向に広げるという選択肢もあります。
いずれにしても「買う」という点では、美術館で作品を鑑賞するのとはまったく違います。朝起きてから寝るまでずっと視界に入る存在になるわけですから、自分の家に置いたときに合うか、長い時間一緒に過ごせるかもしっかり考える必要があります。
その意味では、自分にとっての居心地の良さや、空間との調和を重視するのも良いと思います。

――現状のコレクションとは違った方向へ広げていくための良い方法を教えてください。
ご友人やアートコレクター仲間に相談するのも良いですし、私たちが提供しているようなコンサルティングサービスを活用するのも一つです。インテリアとして生活を彩りたいのか、資産性も視野に入れるのか……コレクションをどう深めていくのかを整理しながら、プロの提案を受けることで、新しい出会いが生まれることもあります。
自分の好きなものだけを追っていると視野が狭くなりがちですが、第三者のアドバイスが入ることで、思いがけない広がりが生まれることも多いですね。
――複数の作品を並べて飾る前提で買い足すときはどのように考えれば良いでしょうか。
作品は必ずしも同じ場所に飾る必要はなく、気分によって並べ替えることもできるので、意識しすぎなくて良いと思います。「この作品が欲しい」という気持ちを大切にしてください。実際に置いてみると、一見バラバラに見えてもテーマや形に共通点が見えてきたり、思いがけない親和性が生まれたりすることがあります。

――感覚と知識のバランスはどう考えれば良いでしょうか。
まず作品を「好き」という気持ちがないと、知識だけを得てもあまり意味がないことがあります。一方で、背景を知ることで作品がより魅力的に見えることもあるので、この時、感性と知識は相乗効果の関係にあると思います。
また、知識の必要性はどんな空間に置くかによっても変わります。誰も来ない寝室なら、自分の好きな気持ち100%で選んで良いんです。でも、リビングや会社のエントランスのように人の目に触れる場所では、アートはノンバーバルなメッセージを発信します。海外から来た人にも、日本に住んでいる人にも言語抜きで通じるわけです。
例えばSDGsに配慮した作品を置けば、「この会社はSDGsを大切にしているのかも」という印象を与えます。伝えたいことがある場合や、ブランディングとしてアートを使いたい場合には、やはり知識が必要になってきますね。
――アーティストの制作意図はどの程度参考にすべきでしょうか。
そこは本当に人それぞれで、作者の意図を知ることで作品への理解が深まって面白いと感じる人や共感できて嬉しいと感じる人もいれば、逆に全く予想外の意図を知ってより好きになるという人も。
どうしても理解できないものをあえて身近に置いて、自分に何か返ってくるものがあるかを問答し続けるという人もいます。
アーティストの意図したものと全く違う感じ方をしていても、観る人それぞれの解釈が成り立つ。アートの面白さですね。

――アート作品を迎えることで、暮らしや思考はどう変わっていくと思いますか?
ふと目に入ったときに気持ちを落ち着かせてくれる“癒し”の存在にもなりますし、日々新しい視点をもたらしてくれる“刺激”にもなり得ます。アートは、暮らしの中でさまざまな影響を与えてくれる存在だと思います。
昨日見た作品と、今日見た作品の印象が変わることに気づくこともあります。それは自分の気持ちや状態が変わったからかもしれません。
子どもの頃観た映画が、大人になり観直すと全くちがって観えることがありますよね。アートも同じで、長い時間をともにするほど、作品との関係性が少しずつ変化していきます。その日々変わっていく関係を楽しめるのが、アートを暮らしに迎える醍醐味なのだと思います。
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