今回のテーマは「メガネとサングラス」。これ、実は前回の帽子もそうだったんですが、本サイトのディレクター女史からのリクエストなんですね。で、思うんですが、メガネ、サングラス選びにナーバスというかセンシティブというか、迷いが生じがちな人は女性に多い気がします。やっぱり、メガネ・サングラスの類=アイウェアって、顔の印象と直結するので、どうしても女性の方が敏感になるのでしょう。もっとも、アイウェアが「顔の印象と直結する」のは男性だって同じことではあるのですが。
というわけで、アイウェア選びで失敗しないコツみたいなものが何かあるかと言えば、僕は「ある」と思います。しかも、馬鹿みたいに簡単。それは何かと言えば「普通のメガネを選ぶ」、これに尽きると思うのです。「じゃあ、普通ってなによ?」って話になるわけですが、要は “ウェエリントン型”と呼ばれる台形を逆さまにしたようなの、ありますよね? アレのバリエーションから選ぶ。もうこれに尽きると思うのです。
とはいえ、“ウェリントン”と一口に言っても色々種類があるわけですが、まずフレームはセルフレーム=プラスチック製のものにして、色は黒、ベッコウ模様あたりのクラシックな印象のものをチョイス。さらにカジュアルなファッションとも馴染んでオシャレっぽい雰囲気が出るのは、ウェリントンの中でもフォルムに丸みを持った、 “ボストン型”(昔で言う“アラレちゃんメガネ”)に分類されてもおかしくないくらいのものが、絶対に間違いがないと思います。なので、メガネのタイプとしては「ボストンに近いウェリントン」で決定。むしろ問題なのは、「フレームの太さと大きさ」、これです。これで印象が決まるのです。
よく「丸顔の人に似合うメガネはスクエアタイプ〜」といった記事が雑誌等にありますが、僕はそうは思いません。仮に丸顔の女性がシャープな印象を求めるのなら、前述の「ボストン寄りのウェリントン」で「気持ち細めのセルフレーム」の方がその意に適うと思います。逆に骨ばった顔まで筋肉質(?)な男性が柔和な印象にしたいなら、太めのフレームでレンズサイズが小さめの、やはり「ボストン寄りのウェリントン」が良いと思います。なので、繰り返しますが、メガネ選びのコツは形のタイプより「太さと大きさ」、ホント、これなんです。これは、サングラスも一緒。というより、サングラス=レンズに色の付いたメガネと割り切った方が良い。つまり、サングラスだからといって、凝ったデザインのものであるとか、完全なラウンド型(丸メガネ)であるとか、顔半分隠れそうな大きいレンズのものとか、はたまた「今年こそ、ティアドロップに挑戦!」とかは、あまりオススメできない、いや、したくない、というのが僕の意見。フレーム自体は先ほども言ったように「普通」に見えるものが、こなれた感じがして逆にファッションっぽく思います。ただ、トレンド感を少し強調するならから、透明、もしくは半透明のフレームも今は良いですね。
ただ、そうは言っても街で見かける多くの人たちがウェリントンをかけているのも事実で、ちょっと人とは違うメガネをしたいな、というときは、今ならメタルフレームの小ぶりなボストンが良いと思います。これもサングラスも一緒です。フレームの色はレンズがクリアな一般的なメガネならシルバー、サングラスだったらゴールドもアリですね。
また、メガネが苦手という人からよく聞く意見に「鼻が低いので」「顔が平らだから」というのがあるんですが、これ、結局アジア人の特徴なわけです。なので、その辺りの不便さというか違和感というかを改善すべく、海外ブランドからも“エイジアンフィット”なるものが近年リリースされていますが、基本的に全てのメガネが、メガネの鼻に当たる部分の調整することで、“エイジアンフィット”よろしく、違和感のない掛け心地を手に入れられるはずです。金属の支えが付いたいわゆる鼻パッドはもちろん、セルフレームによくあるフレームと一体となった“鼻盛り”も、眼鏡専門店なら(限界はありますが)高さを調整してもらえます。実際、そのメガネが似合うかどうかの割と大きなポイントに「顔とメガネの距離」ってあると思うんです。不自然にならないレベルで、なるべく顔から離したほうが、そして、同じく自然な印象から外れない程度にフレームを眉毛の高さに近づけると、メガネが似合って見えるはずです。この辺のことって意外と盲点になっている気がしますが、結構重要だと思います。
というわけで、「失敗しないアイウェア選び」をまとめると
- 形はセルフレームのボストンに近いウェリントン、次にメタルフレーム小ぶりなボストン。
- 個性は装飾的なデザインではなく、フレームの太さとレンズの大きさで表現。
- レンズがなるべく顔から離れるように、フレームはなるべく眉毛の高さに近づけるようにと調整すると似合って見える。
以上3点が、僕が実践するアイウェア選びのポイントです。
初めに書いた通り、アイウェアは「顔の印象に直結」します。逆に言えば、インパクトの強いメガネは、本来の顔の印象を変えてしまい、そのままその人のアイデンティティになってしまう。それをもって、果たして「似合う」と言えるのかと僕は疑問に思うのです。その人がもともと持つムードや印象を不自然に変えてしまうのではなく、それをより魅力的にするものが、アイウェアに限らず「似合う」と言うことであり、その「その人がもともと持つムードや印象」こそが「個性」と呼ぶべきものなのではないかと思うのです。
……と、思いの外早く結論が出てしまったので、ここで僕の個人的なアイウェアに関するエピソードを少々。
まず、僕が「メガネってオシャレかも」と初めて思ったきっかけがこの人、ニック・ヘイワードさん。80年代のUKで人気のあったヘアカット100の元フロントマンと言えば、わかってくれる人もいるでしょう。このMVでニック氏が着用しているボストンタイプのメガネに、80年代に起きたトラッドリバイバルの雰囲気が凝縮されているようで、当時中学生だった僕には、なんとも洒落て見えたのでした。
そして、個人的エピソードをもう一つ。
実は僕、もう7、8年前かな、サングラスのデザインというか企画をして発売したこともあるんですよ。それが、こちらの映画『勝手にしやがれ』でジャン・ポール・ベルモントさんが掛けていたサングラスの完コピ。仲間内では好評だったんですけれど、構造的にレンズ交換ができないので、現代のニーズには合ってなかったと言わざるを得ないシロモノではあるのです。50年代のヴィンテージから型を起こしてもらったのですが、なんでも、50年代当時は安価なメガネに用いられたフォルム・デザインだったらしく、この種のメガネは使い捨て感覚だったみたいですね。
僕がかけるとジャン・ポール・ベルモントと言うより、「本牧のアメ車ディーラー」のようですが、それはそれで、気に入っているのです。
鈴木哲也 Tetsuya Suzuki
編集者/プロデューサー
株式会社アップリンク、株式会社宝島社を経て、2005年に株式会社ハニカムを設立し、同社の運営するwebメディア『honeyee.com』の編集長に就任(2011年からは同社の代表取締役も兼任)。2017年、株式会社ハニカム代表取締役並びにwebメディア『honeyee.com』編集長を退任。
現在は執筆、各種コンテンツ制作のほか、企業・ブランド・書籍・メディア等のプロデュース/ディレクションを行う。
著書に『2D(Double Decade of pop life in tokyo)僕が見た「90年代」のポップカルチャー』(mo’des book)