モロッコと言えば…

2016年11月、アフリカ大陸初上陸!訪れたのは北アフリカ北西端に位置するモロッコ王国。モロッコと言えば、伝統的な履物のバブーシュやエキゾチックな銀食器、羊毛織りの絨毯ベニワレンといったインテリア雑貨、また料理ではタジン鍋やクスクス、ミントティーを思い浮かべる人も多いかもしれません。


アガディールという街に到着


映画の舞台としても有名で、俳優ジャン・レノの生まれ故郷でもある商業都市カサブランカ。巨大迷路のような旧市街が広がる文化の中心地フェズ。ヨーロッパ、アフリカ、アラブの交差点として多様性に富んだ歴史を持ち、限りなく青い風景が続くシャウエン。ベルベル語で「神の国」という意味をもつモロッコ最大の観光都市マラケシュ。そして、在モロッコ日本国大使館のある首都ラバド。これら5都市がモロッコでは有名ですが、私が訪れたのはカサブランカから飛行機で約1時間ほどの場所にあるアガディールという港街でした。

モロッコで泊まるならやっぱりリヤド!


宿泊したのはアガディールの中心街から少し離れた場所にある<Riad Villa Balance>という高級リヤド。リヤドとはアラビア語で「木のある庭」や「中庭のある邸宅」を意味するモロッコならではの小規模な宿泊施設のこと、その多くは「古くて暮らしにくい」からと地元モロッコ人から見捨てられつつあった建物をヨーロッパ人がプチホテルとして改装したものになります。部屋はモロッコ様式の落ち着いた配色のインテリアで、部屋の扉を開けるとモザイクタイルが敷かれた回廊がオリーブの木々や大小様々な噴水、数々のキャンドルが左右対称に配された美しい中庭をぐるりと囲んでいて、異国情緒溢れる雰囲気にすっぽりと包まれ、ずいぶん遠くまで来たもんだ…と再確認せずにはいられませんでした。

木に登るヤギに出会う


翌朝、リヤドを出発。アガディール中心街から沿岸線を車で走ること85キロ。バナナプランテーションを抜け、ヤギの大群とアルガンの木が生い茂る砂漠地帯を横目に、アサッカという小さな町に到着しました・旅の目的、2004年にベルベル人の女性2人が、女性の社会的・経済的自立を目的に立ち上げたアルガンオイル搾油工場協同組合を見学するために。

女性の社会的・経済的自立を目指して


アルガンオイルを搾油する女性だけの協同組合がモロッコに発足し始めたのは90年代半ばのこと。当初は女性の社会的自立を快く思わない男性たちの同意を得ることが難かったそうです。しかし今では女性たちが利益や雇用を創出するのみならず、地域全体の活性化にも繋がる働き手として認められ、地元男性からも積極的に協力を得られるようになりました。工場には10代後半〜80代後半のベルベル人女性およそ100人が働いていて、私も一緒になってアルガンの気から落下した実を拾ったり、堅果から種子を取り除く作業を手伝いました。

働けることの喜び


自分たちの働く場所、働く姿に誇りを持っている彼女たちは、私の訪問を心から歓迎してくれました。手拍子とともに喜びの歌を歌ってくれただけでなく、とある女性は自宅にまで招いてくれ、手作りのケーキとミントティーをご馳走してくれました。「自分で収入を得ることで、子どもの教育だけでなく、大好きなインテリアにもお金が使えるの」と笑顔で話しながら、彼女は家の中を隅々まで案内してくれました。

仕事があるから趣味も広がる


そんな彼女はインテリアと同じくらい食器にも夢中だそうで、お金を貯めては少しずつ、街で見つけた素敵な食器を買い集めていると教えてくれました。自分で働いたお金で自分の好きなモノを買う。女性の社会進出が確立していなかった頃は、そんな当たり前のことすらも心に思い描かなかったそうです。彼女の話に触発され、私がモロッコのお土産に買ったのは銀食器。気泡の入った小さなガラスコップと銀のティーポットで、我が家にやって来る友人をもてなすことが大好きです。彼女に教えてもらった“本当に美味しいミントティーの淹れ方”を友人に伝授しながら。仕事のこと、子育てのこと、恋愛のこと、次に旅したい場所についてなど。いつも話は尽きません!

クリス‐ウェブ佳子(モデル・コラムニスト)

1979年10月、島根生まれ、大阪育ち。4年半にわたるニューヨーク生活や国際結婚により、インターナショナルな交友関係を持つ。バイヤー、PRなど幅広い職業経験で培われた独自のセンスが話題となり、2011年より雑誌「VERY」専属モデルに。ストレートな物言いと広い見識で、トークショーやイベント、空間、商品プロデュースの分野でも才覚を発揮する。2017年にはエッセイ集「考える女」(光文社刊)、2018年にはトラベル本「TRIP with KIDS―こありっぷ―」(講談社刊)を発行。interFM897にてラジオDJとしても活動中。

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