ピエール・カルダン氏に関する耳寄り情報

7月2日で御歳98歳の誕生日を迎えたファッションデザイナーのピエール・カルダン氏。ロゴブームの火付け役で、世界で初めてメンズのファッションショーを開催し、誰よりも早くに国籍や肌の色に関係なく多様性に富んだモデルを起用し、ユニセックスのファッションを最初に提案した彼。現役ということにも驚きの彼の密着ドキュメンタリー映画『ライフ・イズ・カラフル!未来をデザインする男 ピエール・カルダン』が10月2日より全国公開となりました。が!、それよりもずっと気にな

る情報があるんです。

ピエール・カルダン

映画『ライフ・イズ・カラフル!未来をデザインする男 ピエール・カルダン』より

©House of Cardin – The Ebersole Hughes Company

欧州で最も高額な別荘!?

ライセンスによるブランドビジネスを最初に興したと言われているピエール・カルダン氏。1960年代からライセンスビジネスを始め、その後、ほとんどのブランドが彼に追随することとなるのですが、企業家として今も変わらず第一線で活躍するピエール・カルダン氏が、このほどフランスのリビエラ海岸沿いに所有する別荘、別名「バブル・パレス」を売り出し中なのです。

茶色がかったピンク色の外観にいくつもの円形窓。1989年に建てられた「バブル・パレス」はその名の通り、尖った形がなく、泡のような球体が連なった異形な物件です。カンヌからほど近く、180度以上のパノラマで地中海を見渡せる景観。8,500平米もの広大な敷地には池付きの庭園、インフィニティプールを含む3つのプール、500席を要する円形劇場が設けられています。床面積1,200平米・6階層構造の室内空間にはフルバスルーム付きのベッドルームが10部屋、キッチンとリビングルームが2部屋ずつ、さらにはスタジオルームを完備しています。

ピエール・カルダン氏がザインした円形のバスタブや楕円形のドア、エキセントリックな家具が贅沢に配されていて、未来的な雰囲気が漂います。話題性もデザイン性も高く、収容人数も多くを見込めることから、過去にはジェームズ・ボンド誕生40周年記念パーティーや5代目ジェームズ・ボンドを演じたピアーズ・ブロスナン氏の50歳のバースデーパーティーが開催されたり、Diorの2016年クルーズコレクションのショー会場として貸し出されたりもしています。

さて、この物件を販売するのは美術品などのオークションで250年以上の歴史を持つあのクリスティーズ・インター・ナショナルが運営する不動産会社「クリスティーズ・インターナショナル・リアル・エステート」。世界中の富裕層を相手に超ハイグレードな住宅及びラグジュアリーな物件を取り扱う不動産会社です。イギリスタブロイド紙によると、正式な価格は公表されていないものの、「バブル・パレス」の値段は約3億6,200万ユーロ(約433億7,200万円)にもなると推定されています。おそらく欧州で最も高額な別荘でしょう。

一度はオークションにかけられたものの

もともと、「バブル・パレス」には「マンション・ベルナード」という名前がつけられていました。というのも、自動車業界のフランス人実業家ピエール・ベルナード氏の依頼でハンガリー人建築家アンティ・ロヴァーグ氏が手がけることになった別荘プロジェクトだったのです。ところが建設途中に所有者であるベルナード氏が他界し、「マンション・ベルナード」は1992年にオークションにかけられることに。そして完成を夢見たベルナード氏の意思を引き継ぎ、当物件を購入したのがピエール・カルダン氏だったのです。

さすが、ブランドビジネス第一人者。「財を成した者が資産を守るために現金を不動産に変える」という定説をピエール・カルダン氏も実践したわけです。約433億7,200万円で販売中の「バブル・パレス」ですが、実は2015年に3億ポンド(約420億円)で売りに出された過去があります。その時は結局一人も買い手がつかなかったのですが、売り出し期間中は一日1,125ドル(約11万8,000円)で借りることができたのだそう。

不動産は資産を守る、夢を叶える

誰も買わない、欲しくない別荘として有名になってしまった「バブル・パレス」を諦めることなく売りに出し続けるピエール・カルダン氏。現金を持っていても仕方がない!、と98歳のビジネスマンは昔も今も不動産ビジネスに余念がありません。

1772年に建設された古い建物を買い取り、多くの芸術家や役者たちを育てるための劇場として「エスパス・ピエール・カルダン」をオープンさせたり(52年間所有したのち、現在はパリ市が所有)、マルキ・ド・サドがフランス南東部に所有していた「ラコスト城」を購入して、サマーフェスティバルを開催したりと、プロ顔負けな土地転がしです。

「墓に入ってから一番の金持ちであっても何の役にも立ちません」というのがモットーなようで、最近もパリから車で40分、ウーダンという村に総面積1,000平米の物件を購入したピエール・カルダン氏。「これこそ夢の屋敷だ!」と廃墟のようなその物件にいたく感動していて、「改修工事は行わず、時代遅れな感じを残してもう一つの劇場を開きたい」とドキュメンタリー映画の末尾で語っています。またヴェネチアにも「光の塔 – Palace of Light」の建設を予定していて、とにかく「人生の終わりをただ待つのはごめんだね」というのが彼の生き方。「バブル・パレス」が売れようが売れまいが、不動産で彼は資産を守り、夢を叶え続けているのです。では、今日はここまで!

■参考URL

ライフ・イズ・カラフル!未来をデザインする男 ピエール・カルダンhttps://colorful-cardin.com/

バブル・パレス https://www.christiesrealestate.com/jpn/sales/detail/170-l-82238-f1803161847700350/close-to-cannes-the-bubble-palace-theoule-sur-mer-al-06590

クリスティーズ・インターナショナル・リアル・エステート https://www.christiesrealestate.com/jpn

サマーフェスティバル https://www.festivaldelacoste.com/le-festival-de-lacoste

Palace of Light https://www.dezeen.com/2013/07/11/pierre-cardin-cancels-palais-lumiere-skyscraper-venice/

クリス‐ウェブ佳⼦(モデル・コラムニスト)
1979 年10 ⽉、島根⽣まれ、⼤阪育ち。4 年半にわたるニューヨーク⽣活や国際結婚により、インターナショナルな交友関係を持つ。バイヤー、PR など幅広い職業経験で培われた独⾃のセンスが話題となり、2011 年より雑誌「VERY」専属モデルに。ストレートな物⾔いと広い⾒識で、トークショーやイベント、空間、商品プロデュースの分野でも才覚を発揮する。2017 年にはエッセイ集「考える⼥」(光⽂社刊)、2018 年にはトラベル本「TRIP with KIDS―こありっぷ―」(講談社刊)を発⾏。interFM897 にてラジオDJ としても活動中。

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