京都には次から次へと新規開業のホテルが誕生しています。今回、ここにご紹介するホテル「The Hotel Seiryu Kyoto Kiyomizu」の開業は、2020年3月22日。古き良き小学校の面影を残し、いずれ観光復活に於いて、海外からの観光客を魅了する京都ならではのカルチャーを感じるホテルとして、「かつての小学校の記憶を継承する上質なヘリテージホテル」が、京都の町を見晴らせる清水の一等地に開業しました。

昼のホテル外観、旧京都市立清水小学校の面影を残す建物。Photo:Kyoko Sekine

その優美な外観の姿に一瞥して魅せられたばかりか、館内でも、明治2年に下京第27番組小学校として開校したという建物は、昭和初期に現在の地に移転し新築されたと言います。今回のホテル開業に際して掲げたホテルのコンセプトには、「記憶を刻み、未来へつなぐ」ということ。特に一部に躯体の残された外観や、館内に残るすり減った階段の様子など、本当に、どこかからランドセルを背負う小学生たちの叫ぶ楽し気な声が聞こえそうな気がします。それにしても、なんと美しい建物でしょうか。明治、大正、昭和の時代、日本の匠たちが競い合うように造り上げた技の詰まった建築、卓越した感性をこうして今に残し、未来へと継ぐ歴史の一端を担うホテルは貴重です。ホテル内には、そうした歴史や文化が育まれたアンティークな部分と、斬新でモダンな現代のアートや構造的なテクニックが融合され、なんとも魅力的なヘリテージホテルとなっています。

レセプションから宿泊棟へ向かう通路際に保存された小学校時代のポスト。古びた様子も敢えてそのままに残され飾られた。Photo:Kyoko Sekine

エントランスは1階になり、すぐ目の前に迫る法観寺『八坂の塔』の眺望のお蔭で、京都清水の地に居ることが一瞥して心にも刻まれます。校庭だったという広場は、快適な緑の芝生が美しいガーデンとなり、ロビーから客室棟へと通じる通路脇には、歴史を感じさせる真っ赤な郵便ポストがそのままの姿で建っています。客室は全部で48室。ゲストとスタッフの顔が互いに見えるホテルの規模は、サービス面でも快適なサイズとなるはずです。

1100冊を超える書籍に囲まれた空間は軽食と喫茶のできるrestaurant library the hotel seiryu。朝食はここで7:00~10:30。「京の養生ブレックファスト」はスターターに始まり、メインを選ぶアメリカン・ブレックファスト。Photo:ザ・ホテル青龍 京都清水


ゲストラウンジは宿泊客の利用できる贅沢な空間。デイタイム(7:30-17:00、スナック、スイーツ)とカクテルタイム(17:00-22:00、オードブル、軽食など)。Photo:ザ・ホテル青龍 京都清水

キングサイズベッド、リビングダイニングルームも備えたスイートルーム。(136.3㎡)。八坂の塔が目の前に見える。Photo:ザ・ホテル青龍 京都清水

ダブルベッド2台のテラス付きツインベッドルーム。(60.8㎡)ソファーベッドを利用して3名迄の宿泊可能。Photo:ザ・ホテル青龍 京都清水

3m以上の高い天井が贅沢なプライベートバスは、”桜”、”山鳩”、”清水”と名付けられた全3室。(7:00~22:00、1室90分6000円)Photo:ザ・ホテル青龍 京都清水

コの字型になった建物は、既存客室棟(34室)と増築された客室棟(14室)が繋がり、増築棟のモダニズムに比べ、既存の客室棟ではクラシカルな落ち着きも感じられます。24時間のインルームダイニングの他、朝食は、restaurant library the hotel seiryuで、‘懐かしいが、新しい’とうたう「京の養生ブレックファスト」をいただきました。アメリカン・ブレックファストを基本に、スターターから始まり、メイン料理を選ぶリッチな朝食がサービスされます。特にメインはお粥が選べるのが朝の体には優しく、‘和洋’のようなバリエーションのある朝食に大満足で、ベテランスタッフのパフォーマンスにも気持ちのいい朝の始まりを感じさせてくれました。

スターターから始まるリッチな朝食はアメリカン・ブレックファストだが、メインが選択可能。洋食の卵料理か、または写真のしば漬け入りリゾット卵かけご飯風京の銘柄鶏のそぼろ味噌風味を選ぶ。Photo:ザ・ホテル青龍 京都清水

旧小学校の階段をそのまま残して美しくリニューアル。階段ステップの低さ、手すりのいたずら書きなどが時代を思わせる。騒ぎながら走り抜ける子供たちの声が聞こえそう。Photo:Kyoko Sekine

正面ゲートからは旧小学校の校庭だった部分を通して八坂の塔が聳える。Photo:Kyoko Sekine

ところでディナーをいただけるレストランは、世界各地でミシュランの星付きレストランを展開するデュカス・パリによる「ブノワ 京都」が別棟にあります。京都で味わうコンテンポラリーなビストロ料理は、ランチもディナーも提供し外来利用も受けています。

さらに、ホテル棟の屋上にはルーフトップバーが造られています。360度の眺望が楽しめるバーには法観寺『八坂の塔』がより迫り、一方の山懐には人気の国宝清水寺が望めます。そして目の前180度に広がる京都の町は、遠く京都タワーまで遠望できるパノラミックな大人の集いの場所でした。

本当にホテル内は美術館のようであり、アーカイブコーナーにはノスタルジックな小学校の写真や貴重な展示物を観ることができます。小学校を想い描き、改めて作られたアーティストの作品は随所に全280点。ステップの低い階段、その階段の手すりに残された彫刻刀のいたずら書き、アーチ型の窓枠、昔のままの姿で新築に融合している渡り廊下など、大き過ぎず、小さ過ぎないホテルのプライベート空間に居心地の良さを感じました。

取材・文/せきねきょうこ

せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数、現在、新刊出版を準備中。http://www.kyokosekine.com

ザ・ホテル青龍 京都清水

住所:京都府京都市東山区清水二丁目204-2 

Tel:075-532-1111

https://www.princehotels.co.jp/seiryu-kiyomizu/

客室数:48室

料金:一泊朝食付 69,286円〜(1室2名ご利用時)

施設:restaurant library the hotel seiryu、ルーフトップバー、ブノワ京都(離れ)、ゲストラウンジ、アーカイブコーナー、プライベートバス3室、他

アクセス:京都駅からタクシー約15分、京都駅からバス約20分「清水道」下車、徒歩5分

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