こんにちは、なんとか確定申告を終えて一息ついている菅原草子です。毎度「来年こそは早めに準備するぞ!」と、息も絶え絶え思うのに、どうして毎年、締切直前に白目になりながら処理することになるのか。なかなか成長できないものです。でも何回だって言います、来年こそは…!
さて、確定申告然り、年度末の3月は何かと数字に直面することも多いのではないでしょうか。そこで今回のテーマは、数字、そうお金。人には言いにくいお金の悩み、新年度にスッキリさせませんか?
物を買ったらお金を払いましょう、お金を借りたら返しましょう。一般的には当たり前のルールだと思うのですが、悲しいことにそれが通用しない世界線があるわけで。
取引先からの支払いがない、知人に貸したお金が返してもらえない、賃料が支払われず滞納が続いている…、(賃料については保証会社がつくことが多くなったので賃貸人が直接取り立てる必要は少なくなっているかもしれませんね。)等、世の中お金にまつわるトラブルは尽きません。催促してみたら突然相手が音信不通になることもしばしば。疲れてしまい、もういいやなんて泣き寝入りされる方もいるかもしれません。
そんなお金のストレスから解放されるよう、弁護士に相談した場合にはどんな手段があるのか、知っているようで知らなかった基本情報をお伝えします。
1 支払いを催促する
まず考えるのは、支払いを求めて相手に連絡をすることです。自分で電話やメールで連絡をしてみても、だんだん相手も慣れてしまって効果が薄れてくることも(腹立たしいですが…!)。そんなとき弁護士から相手に通知文を送り、交渉をすることで、すぐに支払われるケースも。すぐに支払いまではなくても、相手から連絡があれば、そこで交渉して返金の約束を取り付けることもあります。
ここで、返金の約束が取り付けられた場合には、公証役場において公正証書の形にできると良いでしょう。公正証書は、債権の存在を認めるもので、相手の財産を差し押さえる等の強制執行の手続きを可能にしてくれます。このような効果のある公的な文書を「債務名義」といいます。
なお、契約上、連帯保証人が付いているような場合には、保証人に対して請求することも可能です。
2 支払督促
催促をしてもだんまりを決め込んでいる相手の場合、任意で支払ってもらえることを期待するのは難しいかもしれません。そこで、裁判所による「支払督促」という手続きがあります。
「支払督促」とは、債権者からの申立てに基づいて、裁判所が債務者に金銭の支払いを命じる制度です。訴訟手続よりも簡易的で、かつ裁判所の手数料を半分に抑えることができます。例えば、100万円の支払いを求める場合、裁判所に納める手数料は、民事訴訟では10,000円ですが、支払督促では半分の5,000円になります。
申し立てをして、その内容が認められると、裁判所から相手方に督促状が送られます。それに対し、相手方に不服がある場合には、異議を申し立てることができます。
相手方が期限内に異議を申し立てなかった場合に、仮執行宣言を発付してもらうことができます。この仮執行宣言付の支払督促も、「債務名義」の一つであるため、先ほどの公正証書と同様、これがあることで強制執行の申立てをすることができるようになります。
一方で、相手方が異議を申し立てた場合には、手続きが民事訴訟に移行することになります。
そのため、相手方が不服として異議を申し立ててきそうな場合には、支払督促を経由する分の費用と時間がかかってしまうため、支払督促の手続きは利用せずに、最初から訴訟を提起することを検討してもいいかもしれません。
3 民事訴訟
訴訟を提起する、すなわち裁判を起こすことも方法の一つです。裁判を起こすときに大事になるのが証拠。自分の請求が認められるための裏付けになるような証拠を準備することが必須となります。たとえば、契約書や請求書、相手方とのメール等は、重要な資料です。トラブルを予想することは難しいですが、自分がお金を支払ってもらう側になる場合には、関係資料は保管しておくこと、メールやLINEはスクショしておくことを心がけてもらえればと思います。
裁判が進行し、裁判所により自分の主張が認められる勝訴判決が出た場合には判決調書を、または裁判における話し合いの中で双方の合意が形成でき和解が成立した場合には和解調書を取得することができます。これらも「債務名義」となります。
ただし、裁判は始まるまでに時間を要し、始まってからも月に1回程度のペースで裁判所における手続きが進行することになるため、一般的には1~2年ほどかかることも覚悟しないといけないというデメリットもありますので、請求する額によっては、そのお金を回収することと、自分の大事な人生の時間を使うことの、どちらが自分にとって重要なことなのか一度考えてみることも大事かもしれません。
<裁判手続を利用する方へ(裁判所ウェブサイト)>
https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/index.html
4 強制執行
上述の手続きによって、相手から支払があればいいのですが、それでも支払われない場合、いくつか登場してきた「債務名義」を用いて、強制執行の手続き、すなわち財産の差押えをすることができます。これも裁判所に申し立てることが必要です。主な対象財産は、不動産、車、預金、給料など。相手の所有財産については、弁護士による調査が可能な場合もありますが、その調査のヒントになるために、どんな財産を持っているか、どこの銀行に口座があるか等の情報は知っておくと役に立つことがあります。
<強制執行の概要(裁判所ウェブサイト)>
https://www.courts.go.jp/sendai/saiban/tetuzuki/kyoseisikko/index.html
とまあ、メンタル強めの我知らずの相手だった場合や、本当にお金がなくて払えない相手の場合には、強制執行の手続きをとることでようやくお金が回収できることがあります。長い道のりですね…。だけど、これだけ味方になってくれる制度があるということでもあります。私たち弁護士に相談していただくことで、解決ルートを考えることはもちろん、精神的ストレスを緩和していただき、困っている方々の助けになることができればいいなと思います。
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弁護士 菅原草子(スガワラソウコ)
仙台市出身。都内法律事務所所属。個人から企業の相談まで分野を問わず依頼をうけている。
大学院農学研究科で食品成分の研究をしていた異色の経歴から、食品関係企業の取締役も務める。
趣味は、ビールと美味しいごはんと海外旅行。
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