お引越しの多い新年度。物件自体の情報は、事前に調べて内覧に行って、と確認することができますが、運に任せざるを得ないのが、近隣住民の性格や生活状況ですよね。誰もが遭遇する可能性のある近隣トラブル、第1位と言われるのが、生活音・騒音問題。ここ数年、在宅ワークが日常化したことからお隣さんや上下階の部屋の足音や電化製品の音が気になったり、YouTube撮影や動画配信を行う人の増加により深夜の音楽や大きな声に悩んでいる方も多いようです。今回は、そんな近隣住民とのトラブルが生じた際の対応方法を解説します。


1 管理会社、管理組合に相談する

 心理的ハードルが低い方法として、まずは、マンションの管理会社や管理組合などに相談してみましょう。管理会社は居住者に平穏かつ安全な住環境を提供できるようマンションを管理する責任がありますので、

  • マンションの掲示板に注意文を掲示する
  • 本人に口頭や手紙で伝える

といった対応をしてもらえることが期待できます。


実は私も、隣りの部屋からのタバコの副流煙に悩まされたことがありました。(夜のベランダで一服。仕事後のビールと同じ至福の時間、と言われたらわからなくないけど、おやすみ前にタバコアロマに包まれなければならないこちらは辛い。)そこで管理会社に相談して、ポストに手紙を入れてもらいました。もちろん誰が苦情を言ったかは秘密で。しばらく攻防戦が続いたのですが、何度か連絡してもらったことで効果があったと思います。(なお、その後隣人はお引越しされたようで我が城に平和が戻りました。)管理会社によっても対応は異なると思いますので、適切な対応を取ってくれることを祈りたいところです。


マンションの区分所有者である方は、区分所有法に基づく請求も可能です。騒音を発する等の共同利益に反する行為については、管理組合の理事会や総会の決議を経ることで、たとえば、

  • 問題行為の停止や予防措置の請求
  • 専有部分の使用を相当期間禁止する請求

をすることができる場合があります。


2 直接伝える

 手紙や口頭などで直接苦情を伝えてみるのも一つの手段です。功を奏するかは、相手にもより、話がこじれたり互いにヒートアップしてしまうケースもありますので注意は必要です。言いがかりと反論されないような証拠を準備したり、他にも困っている住民たちと一緒に話合いをすると、説得力がありますし個人間でのトラブルが避けられるものと思います。


3 弁護士に相談する

相手がどんな人かわからないし自分で話すのは不安、管理会社も思うように対応してくれない…といった場合、騒音については弁護士にも相談できます。弁護士は、

  • 書面や対面により直接的に相手と交渉する
  • 調停や裁判などの法的手続きを用いて、環境調整や損害賠償請求をする

等の様々な手段がとることができ、相手への影響力も期待できると考えられます。直接自分で対応するストレスは計り知れないため、全面的に委任をして、自身の負担を軽減できるメリットも大きいのではないでしょうか。


ただし、自分が気になった生活音がどんな音であっても騒音として法的に問題にできる、というわけではありません。通常の生活音はどこでも発生するものですので、音量、時間帯、頻度、継続期間等から、社会生活上の受忍限度を超えるといえる場合に、違法な騒音となります。

判断基準のひとつとして、環境基準法において定められる「環境基準」や、自治体による基準があげられます。たとえば、住居用地域では、昼間は55デシベル以下、夜間は45デシベル以下、が環境基準とされているため、それを超える騒音は受忍限度を超えると考えられる要素となります。騒音測定のスマホアプリもありますので、気になる騒音がどの程度か測定してみるといいかもしれません。

なお、自分で相手に話をしてみる場合も、弁護士に相談する場合も、客観的な証拠は重要となりますので、騒音の録音・日時や騒音内容を記録したメモ・自分で相手に話をした履歴等、トラブルの実態を示すことのできる証拠を保存しておくようにしてください。


(参考)

環境省「騒音に係る環境基準について」

https://www.env.go.jp/kijun/oto1-1.html

環境相「生活騒音パンフレット」

https://www.env.go.jp/air/%E7%94%9F%E6%B4%BB%E9%A8%92%E9%9F%B3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%282019%E5%B9%B43%E6%9C%88%29.pdf


4 行政への相談

 各自治体には公害専用の相談窓口が設けられており、騒音や悪臭などについて相談することができます。また、とくに緊急時には警察に相談して解決に協力してもらうことも考えられます。


(参考)

総務省「公害苦情相談」

https://www.soumu.go.jp/kouchoi/knowledge/how/Pollution-complaint.html


5 体調に影響が出てしまったら病院の診断も

 騒音が酷いために、頭痛、めまいといった身体的被害や睡眠障害、ストレスによる精神障害等が生じてしまった場合は、病院で治療を受けるとともに、診断書をもらっておきましょう。

騒音の差止め請求や治療費・慰謝料の損害賠償請求といった民法上の請求が必要になった場合の証拠にもなりますし、また騒音行為が刑法上の傷害罪に該当すると判断される場合もあります。


まとめ

 ご近所付き合いは何年も何十年も続くことがあるので、学校や職場の関係よりも悩みが深い場合もあります。大きなトラブルにもしたくないけど、我慢も辛いなあ…と思われている方、我慢しなくていいんです。様々な解決手段がありますので、自分に、家族に、一番適した方法を選択し、動いてみることをおすすめします。せっかくの素敵なマンションでの暮らし、より良いものにしていきましょう。

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弁護士 菅原草子(スガワラソウコ)

仙台市出身。都内法律事務所所属。個人から企業の相談まで分野を問わず依頼をうけている。

大学院農学研究科で食品成分の研究をしていた異色の経歴から、食品関係企業の取締役も務める。

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