いまや利用したことのない人なんていないんじゃないかというくらい、いつの間にか我々の生活の一部になっているネットショッピング。最近はEC専門のアパレルブランドがあったり、Uber Eatsなどのオンライン出前サービスやお取り寄せグルメが普及したりと、ますますネットで注文・購入して配達してもらう機会が増えてきたのではないでしょうか。(個人的には、ストレス発散で夜中に服や化粧品をポチっとすることがあって、届いたときに、あれ、これ結局買ったんだっけ…なんて思うことがしばしばあるので、なんとかしたい)

国土交通省によれば、令和4年度の宅配便取扱個数は、なんと50 億588 万個! 前年度と比較すると5,265 万個・約1.1%増加したとのこと。
(出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001625914.pdf


年々増加する宅配便の数、再配達による宅配業者の負担は、深刻な社会問題と言われています。本当に宅配業者さんには頭が上がらない。便利で手軽な世界になっているのですが、そんな世の中だからこそ、宅配関係のトラブルや宅配を利用した悪質な商法も出てきています。今回は、SUMAU読者の方から「見知らぬ商品が届いて支払の請求があったときにはどうしたらいいのか」と質問が届きましたので、宅配トラブルに関してお答えします。


Q1 誤配送によって受け取った荷物を開封してしまったとき、請求が来たら支払う必要がある?

配送トラブルでいちばん考えられるケースが、誤配送。
玄関口で、自分宛てのものではないと気付けば受け取らないこともできますが、届いたときに宛先を丁寧に確認しないことも多く、宅配ボックスに入っていたらどうしようもないですよね。また自分で何を頼んだか忘れていて、開封してしまってから、「これ何⁉」ってなることもありそうです。

このとき、宅配会社のミスが原因で、誤って別の宛先のものが届いてしまった場合には、基本的に責任を問われることはないと考えられます。たとえば開封して食べてしまった、使用してしまった場合、予期せぬ利益を得ているため、その分を支払ったり返したりしないといけないようにも思えます。民法上は、不当利得に関する定めがあり、理由なき利益があった場合、その利益が「現存」する場合(自分のもとに残っている場合)には、返還する必要があるとされます。これは一方で、「消費」してしまった利益は返還の義務を負わないことを意味します。

ただし、誤配送と気付いたにもかかわらず、あえて開封して使用してしまうとNG。民事的には返還や損害賠償を請求されることや、刑事的には逸失物横領罪や器物損罪等の犯罪に該当してしまう可能性があります。誤配送だと気付いた場合には、各宅配業者に問い合わせたり、ホームページ等の説明に従って返送等の対応をしたりすることでトラブルを回避しましょう。

なお、送り主としては、予定していた送り先に届けられなかった場合には、宅配会社に責任を問うことが考えられます。大手宅配会社などでは約款を設けており、たとえば荷物の紛失・破損については、送り方の種類によって、1梱包につき数千円から数十万円といった補償額が定められていることがあります。


Q2 送り付け商法(ネガティブ・オプション)に遭ってしまった場合の対処法は?

送り付け商法とは、注文していない商品を、勝手に送り付け、その人が断らなければ買ったものとみなして、代金を一方的に請求する商法です。そもそも「売買契約」とは、売主と買主の合意があって初めて成立するものなので、一方的に送り付けられたような場合には契約は成立しませんので、代金を支払う義務も負わないことになります。しかし、請求書などが同封されていると、自分が間違って注文してしまったのかもしれない、届いた以上買うしかないのかもしれないと、不安や焦りから、冷静に考えれば支払わなかったであろう代金の支払いをしてしまうかもしれません。そこで、以下のポイントを覚えておきましょう。

この送り付け商法については、上述のとおり売買契約によらずに送付された商品ですので、

・送り主の事業者から金銭を請求されても、支払う必要はありません。商品を開封したり処分したりしてしまっても、支払いは不要です。

・誤って代金を支払ってしまったときは、代金の返還を請求することができます。

また、令和3年に特定商取引法が改正されたことにより、

・商品を受け取ったときは、保管や返還する必要なく、直ちにその商品を処分することができるようになりました。


これらの対応は、送り主が日本の業者でも海外の業者でも同様です。
しかし、このように悪徳な商法を行っている業者であれば、返金を求めたとしても誠実な対応は期待できず、泣き寝入りになってしまうケースも多いため、家族にも注意喚起をして、支払う前に被害を防ぐようにしましょう。万が一トラブルに巻き込まれてしまったら、警視庁や消費者庁の相談窓口や、弁護士に相談することでサポートを受けることができます。

<警視庁>

https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/higai/shoho/okuritsuke.html

<消費者庁>

https://www.caa.go.jp/notice/entry/028983/


Q3 置き配で盗難にあったら…?

コロナ禍では、ネットショッピング等による商品の受け取りに、置き配サービスの利用も普及しました。人との接触を回避してくれる点はもちろん、配達時間に不在が多い方にとっても便利な方法です。再配達の負担を軽減できるので宅配業者にも優しい。安心安全の日本ならではのサービスは、「さすが!」と思いますが、やはり盗難被害の声も聞こえます。


実際に自分が盗難に遭った場合は、誰が責任を負うことになるのでしょうか。


置き配サービスを利用する場合には、事前申し込みが必要な場合があります。注意事項をよく読むと、紛失について宅配業者が賠償責任を負わない旨の記載があることがあります。その上で申し込みをして置き配を利用した場合には、荷物が届いた後に盗難があっても基本的には自己責任と考えられます(宅配業者が置き配の指定場所ではないところに置いてしまった等、業者側に過失があった場合は、責任を問える可能性もあるでしょう)。

一方で、某大手ECサイトは、再送や返金対応をしてくれることを明記していますので、もし盗難に遭った場合には発送元にお問い合わせを。


このように、宅配業者やECサイトによって責任の有無や対応が異なりますので、事前に確認してサービスを利用する、1件につき数十円から申し込める運送保険をかける等も検討してみましょう。また前述のように、事後対応をしてもらえる場合もあるので、諦めず問い合わせてみてください。防犯としては、鍵付きの宅配ボックスを設置するのも一つの方法です。

なお、もちろん、盗んだ犯人に対しては、民事上・刑事上の責任を追及することができます。ただし、犯人がなかなか捕まらない場合や、捕まった場合でもお金がなく窃盗を行った場合などには、残念ながら確実に賠償を受けられるとは限りませんが、警察や弁護士に相談してみてください。

便利でありがたい宅配サービスには、今回の質問のようにトラブルに巻き込まれるケースもありますが、今回お伝えした内容で、少しでも皆さんの不安が解消されればいいなと思います。一緒に快適なおうち時間をつくっていきましょう!

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弁護士 菅原草子(スガワラソウコ)

仙台市出身。都内法律事務所所属。個人から企業の相談まで分野を問わず依頼をうけている。

大学院農学研究科で食品成分の研究をしていた異色の経歴から、食品関係企業の取締役も務める。

趣味は、ビールと美味しいごはんと海外旅行。

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