大きな話題になった「アマン京都」の開業から、あっという間の1年が過ぎました。1年の時を経た今年の「アマン京都」には、確かに一歩も、二歩も、大人になったような印象がありました。この1周年の記念祝宴は、静けさの中、密やかに、でも温かく少人数で開催されました。

2019年11月1日、アマン創業以来の悲願であった京都のアマン開業の日。20年以上も前に、建築家ケリー・ヒルとこの土地との出会いから、気の遠くなるような長い間に繰り広げられた様々なストーリーが、やっと完結した‘その日’でもありました。開業の日、祝宴に呼ばれた私は京都駅から随分と遠い場所であったことに驚き、同時に、アマン流を喜んだことも覚えています。そして威厳のある木造観音開きの大きな門が静かに開けられ、スタッフのこぼれんばかりの笑顔に出迎えられて、心が落ち着いたことも記憶にあり、すべてが、つい昨日のことのように蘇ってきます。

艶やかな色づきを魅せる「アマン京都」のメインの石畳。「今年の紅葉は色づきが早かった!」とスタッフ。

路が落ち葉色に。紅葉のトンネルはロマンチックな散策の道。

今年の紅葉は、昨年より「早く色づいてくれた」とホテルのスタッフ。今は亡きケリー・ヒルへオマージュを捧げながら包み込む木々とともに、赤や黄色の美しい彩を競っていました。特にアイコンであるイロハモミジの美しかったこと…!

「アマン京都」を形作る高度な精神性、ロケーションとその歴史から生まれたコンセプト、森の語り、バックに脈々と流れるアマンとしてのリゾート魂、それらすべてがメインのコンセプトとなる5つのエレメント「石、水、光、苔、森の庭」を造り上げました。今も尚、美しいアマンの礎となるこのエレメントは、京都に数ある名庭園や名旅館、古寺仏刹で見かける、作り込まれた余りに美しいエレメントとはまるで違っています。石は自然のままのように整備され、森の庭は手を入れ過ぎずに原風景を保ち、光は美しく木々を包む。そんなアマンの森の庭が、今ではしっかりと成長した苔を土台に、カラフルな秋の原風景を魅せてくれました。

日本料理「鷹庵」のスタイリッシュな店内。「二十四節気」という考えのもとに、旬な食材。季節感にこだわり、「走り」「盛り」「名残」など厳選素材で作る繊細な料理が自慢。総料理長おまかせのテイスティングメニューを提供。

西向きの蛍の部屋は、苔生した美しい庭や石垣、山に抱かれたもみじなどの樹々を眺め、裏手には紙屋川が流れる。

「鷲ヶ峯パビリオン」のリビングルーム。高台にあり、好天の日には遠くに比叡山を見晴らせる。

1周年記念を華やかに祝うよりも、親しい仲間や、良く知るメディア関係者数人と密やかな祝宴として、「鷹庵」の絶品の日本料理で「アマン京都の1周年」を祝いました。まだ1年、でももう1年。大きなリノベーションや変化は余りないと言いますが、12月に入り、森の庭に自然環境に邪魔にならない、穏やかなライトアップが始まっています。今年のホリデーシーズンのテーマは、アマン全体に「Light and Hope」と位置づけられて、京都の隠れ家「アマン京都」では森の庭も冬姿に衣替えをし、写真のように温もり溢れる光に包まれています。この森は殆どが自然森、葉が落ちた頃には雪化粧となるでしょう…そう思っていたら、すでに雪が降って少し積もっていると、美しい写真が届きました。ホテルのスタッフは、「森の庭に集い、1年の締めくくりにひと息ついて、希望に満ちた年明けをいただけるよう祈っております」と心の言葉を綴りました。

オールデイダイニング「ザ・リビング パビリオン by アマン」の内観。外にはテラス席、そしてケリーヒル ガーデンが広がる。

「ザ・リビング パビリオン by アマン」のシグネチャーディッシュのひとつ「アマン京都 フィッシュ アンド チップス」。驚きのスタイル、一押しの一皿。

海外のアマンでは、新年の行事や季節ごとの祭りごとにも参加した経験がありますが、2021年1月1日、まさに日本の京都で迎えるアマンには、新年元旦の日本流で、振る舞い酒や獅子舞、餅つきなども行われるといいます。また、1年の始まりに‘鷹庵特製のおせちコース仕立ての朝食’が振舞われるといいますから、飛んでいきたい気持ちを抑えるのに必死です。

未だ知らない人も多いようですが、「アマン京都」には天然温泉の施設、内風呂と露天風呂が用意されています。特に寒い時期になると思い出す温泉の温もり。アマンでは、温泉で体を温めてから、トリートメントを受けて相乗効果を上げると言う贅沢も可能です。プロダクツは、京都らしい季節の花々の香り、柚子、薄荷(ハッカ)、ヒノキ、玉露、桜、生姜、シソなどからから作られるシグネチャーオイルを使用します。またコールドプレスされる椿の純性オイルを使ったフルボディマッサージはなかなかの好評と言います。  隙の無い高級感が漂う客室は、シンプルでミニマル、泊ってみてこそ使い勝手の贅が分かります。温もりの溢れるオールデイダイニング「ザ・リビング パビリオン by アマン」で、お気に入りの料理をカジュアルにいただき、ケリーヒル ガーデンを散策しながら、静謐な時をしっとりと過ごしに、また京都洛北、左大文字の麓の隠れ家へと向かう機会を見つけましょう。

冬の装いとなった光が点される庭から、「ザ・リビング パビリオン by アマン」を望む。

美しかった紅葉の彩は終わり、早くも「アマン京都」は初冬の雪景色。まるで墨絵のように美しい。

取材・文/せきねきょうこ

Photo: アマン京都


せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数、現在、新刊出版を準備中。

http://www.kyokosekine.com

DATA

アマン京都

京都府京都市北区大北山鷲峯町1番

https://www.aman.com/ja-jp/resorts/aman-kyoto

☎075-496-1333 (アマン京都 代表)

予約:075-496-1334 (9am-7pm)

フリーダイヤル:0120-951-125(アマン リゾートご予約総合受付)
客室数:全26室

施設:レストラン(オールデイダイニング、日本料理)、庭園、スパ、天然温泉、他

室料:要問合せ

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