昨年に続き、2021年も、京都を筆頭に日本中にホテルのオープンが相次ぐ予定の宿泊業界。そんな中、昨年11月3日には、日本のホテル業界に於いて‘ラグジュアリー’の概念を変えてしまいそうな、最高級ホテル「HOTEL THE MITSUI KYOTO」が誕生しました。テーマに掲げられたのは現代に蘇る「時の記憶」と、未来に向かう「継承と新生」でした。

ホテルの建つ場所は京都‘元離宮二条城’の真正面。ロケーションも最高ですが、オーナーである三井不動産が自ら‘ホテル界最高峰ブランド’と放つこのホテルは、ホテルとしては稀に見る勇壮な‘梶井宮門’を正門とし、堂々たる開業となりました。

門をくぐりレセプションへと向かうアプローチ。竹林の前にある竹の四角い囲いは、実は、1000mを掘り湧出した源泉場が隠されている。

「HOTEL THE MITSUI KYOTO」は、その名「MITSUI」にある通り、三井不動産と三井不動産リゾートマネジメントが開発を手掛けました。そしてこのホテルには、江戸時代から豪商として知られた三井家に関わるストーリーが星の数ほど隠されていたのです。この地は、17世紀末、三井総領家が居を構え邸宅としいていた場所。「MITSUI」の名を冠にドアを開けたホテルには、当時からの三井総領家の貯蔵品や、国宝級の美術品など、時には本物が、時にはレプリカとして館内に飾られています。そして、三井家の歴史香と融合するように現代アートが加わり、新旧融合の設えが輝くホテル館内はまるで美術館のようです。

高い天井と広々としたレセプションとラウンジ。奥には水盤が広がり、好天ならば写真のようにガラス戸を開け放ち庭園との一体感が楽しめる。

レセプションからイタリア料理レストラン「FORNI」と続くコリドール(回廊)の一部。回廊なので、庭園を見ながら一周すればBARやガストロノミー鉄板「TOKI」を通りまたレセプションエリアへと戻る。

ホテルの顔でもある梶井宮門は1703年に創建、柱間4.5m、高さ7.4mもの迫力のある大門です。300年以上もの時を経て蘇ったこの門は、細部にまで分けて解体され、技術の粋を施すべく、福井の宮大工集団に運ばれたと言います。改修、腐った木の交換など改修が緻密に行われ、京都に再建されました。

隠れた歴史あり、斬新なモダニズムありと、すべてが驚きに満ちたホテルには、もう一つ、訪れた人を歓喜の渦に巻き込むような地下の施設がありました。「サーマルスプリングSPA」と呼ぶウェルネスエリアです。ここに造られたゴージャスで神秘的なプールには、敷地内から湧出する天然温泉で満たされ、水着か湯浴みを着用して入る男女共有のプールです。5つのテーマ「時、音、光、香、水」が織り成すほの暗い空間にいると、とても京都の街中にいるとは思えない、異空間へのジャーニーのように感じます。

「TOKI」で提供する豪華な松花堂弁当。上質な食材と彩豊かな季節感が美しい。

イタリアンレストラン「FORNI」の薪釜で焼かれたピッツァは人気メニューのひとつ。

 一方、客室は全161室。デザインや設えの異なる贅沢な空間が揃っています。客室デザインは、香港在住のデザイナーであり建築家であるアンドレ・フー氏が選ばれました。国際的に活躍中のアンドレ・フー氏は、モダニズムとクラシックをデザインに融合させ、品格を持ち合わせたラグジュアリーなホテルに仕上げました。客室タイプはスィートルーム22室を含む11タイプで、いずれの客室も平均50㎡を超えています。家具や調度品、アメニティは特注で揃えたものがほとんどであり、他には、旧蔵する美術品をモチーフにしたアートが幾つも飾られ高級感に華を添えています。

特に話題の客室は、二条城を望める客室「ニジョウスィート」「ニジョウルーム」からの景色です。まさか至近距離で、こんな世界遺産の歴史的建造物が一望できるなんて…と、唯一無二の客室に驚きの声が挙がります。また、100㎡の広さがある「Onsenスィート」が地下に2室揃い、どちらにもプライベートに露天温泉風呂が設置されています。地下とはいえ自然光も入り、贅沢な設えの客室では‘京都での温泉三昧’が可能なのです。

二条城を展望する2~4階の「ニジョウスィート」(112㎡)、ベッドルームの他、リビングルームも。

最上階の4階に造られた「プレジデンシャル・スィ―ト」(213㎡)、広いリビングルームからは二条城が目の前に。

敷地の中央には水盤が広がり、庭園の半分以上がこの水場でできています。三井家では、古くから庭と邸宅を「池泉回遊式邸宅」としたといい、中央のロビーエリアを通して目前には中庭の水盤が望め、水盤を囲むように、一方にイタリア料理「FORNI(フォルニ)」、反対側にはガストロノミー鉄板「都季―TOKI」が向かい合い、両レストラン共に、料理長こだわりの斬新な料理が提供されています。

まさに、掲げられたテーマ通り、「時の記憶」と「継承と新生」のホテル。ドレスコードは、着物でも、デニムでも、‘品格’でしょうか。

地下の「サーマルスプリングSPA」に向かう通路。ホテル敷地の地下から汲み上げる温泉で満たされるサーマルスプリングはゴージャスそのもの。

取材・文/せきねきょうこ

Photo: ホテル・ザ・三井

せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数、現在、新刊出版を準備中。

http://www.kyokosekine.com

DATA

HOTEL THE MITSUI KYOTO

京都府京都市中京区油小路通二条下る二条油小路町284

☎: 075-468-3155(予約専用電話)

https://www.hotelthemitsui.com

客室数:161室

施設:レストラン(ガストロノミー鉄板、イタリア料理)、庭園、離れ「四季の間」、茶居、ライブラリー、スパ、天然温泉、他
室料:要問合わせ

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