仕事が早く終わった日、急に予定が空いた夜はひとりで気ままに過ごすにはいいタイミング。カウンターがあるレストラン、ワインや日本酒の注目店など、今やひとりで行っても十分に楽しいお店は増える一方です。ここでは“ひとりでも妥協なし、きちんと美味しいもの”をテーマに、ひとりごはん&お酒の良質な空間を紹介します。

並んででも食べたくなる
できたて豆乳と中華式パン


旅先で、朝早く起きてしっかり朝ごはんを食べると不思議と力が湧いてくる。そして「今日は何をする? 」と、新しいことにもどんどんチャレンジしたくなってくる。

そんな気分を味わうために、東京でも少し早く起きて、朝ごはんを食べに出かけてみたい。

そこで向かったのが話題の台湾の朝ご飯が食べられるという『東京豆漿(トウジャン)生活』。

店頭にずらりとならぶパン。オーダーすればスタッフが取り分けてくれる。

このお店、何が凄いかと言うと、搾ったばかりのできたての豆乳と焼きたての台湾風のパンが食べられること。台湾では当たり前かもしれないけれど、東京では、搾りたての豆乳を飲むこと自体が少ないので、それだけでとても贅沢な気分になれる。

手前がゴマパン。奥に小豆や大根など6種類の酥餅が並ぶ。

店主の田邊与志久さんによれば、台湾では朝ご飯は外で食べる習慣があるそう。だから、台湾の朝は早く、街角は朝ごはんを食べる人たちの活気であふれている。お店で食べるだけでなく、テイクアウトして会社で食べる人も少なくないとか。

台湾の朝ご飯で最もポピュラーなものは豆漿(トウジャン)と呼ばれる豆乳。それを台湾風のパンと一緒に食べるのが定番だとか。パンと言っても、ラードを使った中華風のもので、生地はパイのように層になっていてサクサクしている。酥餅(スーピン)といわれる丸いものは、ピーナッツや胡麻などの甘い餡や塩味の具が入ったお饅頭のような雰囲気だ。

初めてなのにどこか懐かしい
ふわふわの豆腐スープ


店主の田邊さんの奥様は台湾出身。そこで、台湾の朝ごはんの魅力を知り、東京でもゆったりと朝ごはんを食べてもらおうとこの店を始めたそう。開店はなんと朝8時。その時間に合わせてパンを焼き、豆乳を絞るためには夜から作業をスタートするというから、なかなかに大変な仕事である。

店内に併設した工房では開店直前に豆乳を絞る。

店内の工房で搾る豆乳には国産大豆を使用している。今までに多くの国産大豆を試したというが、その中で選んだのが宮城県産のミヤギシロメという大豆だった。

「最初の頃はいろいろ試してみましたが
最近はミヤギシロメに落ち着きました。
この大豆で造る豆乳は
ミルキーで優しい甘みが特徴です」と田邊さん。

お酢をベースにした自家製調味料の上から温かい豆乳を注ぐ。

鹹豆漿 450円 トロリとして、滑らかなくちどけのおぼろ豆腐のようなスープ。 程よい酸味とラー油の風味が絶妙に合う。

気になるメニュー一番人気は、『鹹豆漿(シェンドウジャン)』という豆乳スープ。

豆乳にお酢の入った調味料を加えることで、豆乳がおぼろ豆腐のようにふんわり固まっている。

上にはねぎと揚げパンをトッピングしラー油をタラリ。お好みのパンを添えて食べるという。

味わいはできたてふわふわの豆腐を飲むように優しく、これが朝の寝ぼけた体に染み渡る。台湾ではとてもポピュラーな料理で、有名店には行列もできるほどだ。

定番の豆乳もフレッシュでとても美味しい。プレーンを選ぶと自分で砂糖などを足して甘くすることもできる。ほかにオリジナルシロップを使ったゴマと黒糖の2種類もおすすめ。黒ごまがいっぱいの大きなパンはサンドイッチ用で葱蛋(ねぎたまご)と揚げパンを挟むのが本格的な台湾スタイルだという。

レトロな雰囲気が台湾らしい空間。

一軒家の店内は、自然光がたっぷり入る大きな窓があり、オープンキッチンと豆乳工房が造られている。そんな丁寧な仕事ぶりをうかがわせる空間も心が和む。

朝の陽ざしを浴びながら温かい豆乳スープを飲めば、寒さで硬くなった体がフッとゆるんでくれるはず。 寒い冬だからこそ、こんな台湾式の朝ごはんでスローに1日を始めてみたい。

東京豆漿生活

とうきょうとうじゃんせいかつ

住所:東京都品川区西五反田1-20-3 MKYビル 1F

電話:03-6417-0335

営業時間:8:00~14:00 ※売り切れ閉店

定休日:日曜

※掲載価格は税別価格です(2019年11月現在)

(取材&文・岡本ジュン 撮影・加藤武美)

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