「東京ひとりごはん」は、“ひとりでも妥協なし、きちんと美味しいもの”をテーマに、ひとりごはん&お酒の良質な空間を紹介してきました。今月は番外編として、“お家で楽しむひとりの時間”をテーマにお届けします。

かゆいところに手が届く

テイクアウトの進化系!?

住宅街の中に忽然と現れる、アンティークのドアとローズピンクの壁。印象的な建物に、近所の人が一人、二人とひっきりなしに吸い込まれていく。一体何の店? と不思議に思って入ってみると、クラシックな木製のショーケースが目に飛び込んでくる。そこには、お弁当と焼きたてのパンという意外な組み合わせが並んでいた。

パリの街角にあるようなお店をイメージした内観。落ち着いてゆったりした雰囲気がいい。

『ティグレット』はナチュラルワインと料理の店としてオープンしたが、ステイホームの時期にテイクアウトを始めたところ、それがたちまち評判に。そこで8月1日からテイクアウト専門店として生まれ変わったという。

手がけているのは「bistroコンカ」のシェフで、「サルーズキッチンマーケット」など人気店を次々と生み出す望月雄一郎さん。パリの街角にありそうなシックな内装もさすがのセンスで、いわゆるテイクアウト店というイメージを一新するナチュラルな雰囲気。そんなところもおしゃれなこのエリアの住人に愛されている理由かもしれない。

ティグの内弁当1000円。基本は白米だが週末は炊き込みご飯のことも。煮物やしゃけ、ゆで卵などおかず豊富で栄養バランスも良い。

他とちょっと違うのは内装ばかりではない。『ティグレット』のシェフが仕掛ける幕の内ならぬティグの内弁当は思わず写真に撮りたくなるほどフォトジェニック。手にするとずっしりと重く、きんぴらごぼう、かぼちゃの煮物、ハンバーグなどおかずがいっぱい詰まっている。どれも奇をてらわずに素直においしいと思える味で、毎日食べても飽きがこないのがうれしい。

パンを焼いているのは、キュートなブーランジェの佐々木奈緒さんだ。コロンとしたフォルムのパンも本人同様とてもかわいらしく、ズラリと並んでいる姿にキュンとハートをつかまれる。

若きブーランジェの佐々木奈緒さん。美味しそうなパンを次々と焼き上げてくれる。

見た目もかわいいパンがいっぱい。左からカリーパン、発酵バターのクロワッサン各280円、クロワッサンダマンド380円など

「日本人に食べやすいパンをイメージして、

お総菜パンなどもいろいろ作っています」とにこにこと話す佐々木さん。

でもけっしてありきたりなパンではない。マスカルポーネを入れたクリームパンやシェフが作るカレーを詰めたカリーパンなど、惣菜パンも変化球が効いている。とくにクリームパンは、おもたせに買いこんでいく人が多いという人気商品。確かに、ホームパーティなどに持ち込めば、話題を提供してくれそうだ。

お菓子作りと売り場担当の川本亜季さん。温かな接客も居心地を良くしてくれる。

「お弁当を買いにいらして、

一緒に翌朝のパンを買って帰る方も多いんですよ」と教えてくれたのは

売り場を担当する川本さんだ。

きめの細かい食パン、コロンとしたフォルムのクロワッサン、カステラを生地に混ぜこんだトラパン、マルパンサンドなど、小さな空間には予想外にバリエーション豊富な商品が揃っている。“今日は何を買うおうかな”と迷うお楽しみもあり、近所にあったら毎日でも通ってしまいそうだ。

お惣菜の単品も販売。左から酸っぱキャベツちゃん380円、塩麹レモンのキャロットラペ350円など

つい食べたくなるとっておきのおやつも用意。たっぷりのカルピスバターを挟んだお塩バターサンド650円(2個)

最近は、川本さんが焼くバターサンドなどのおやつ類も少しずつ増えているとか。さらに、姉妹店の『サルーズキッチンマーケット』のルーローファンのルウ1350円や日替わり餃子1100円、『ビストロコンカ』の和牛筋のハヤシライス1350円など、冷凍のお持ち帰りメニューも充実している。

お弁当とパンとおやつという、ありそうでないトライアングルが魅力の『ティグレット』。このユニークな組み合わせ、実はかゆいところに手が届く的な便利さもあるので、テイクアウトの新しい形としても注目したい。

ティグレット

住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷4-21-5

電話:03-6434-9183

営業時間:11:00~20:00

定休日:日曜、月曜

※掲載価格は税込価格です(2020年9月現在)

(取材&文・岡本ジュン 撮影・マツナガ ナオコ)

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