おもてなし料理の連載が始まって、はや8年目。できるだけ色々な種類の器を取り上げたいと思いつつ、好きなものだけに囲まれる生活をしようと、つい似たような食器ばかり集めてしまう。そんなわけでご紹介する器にも偏りがあるのだが、今回は初めて民藝のやきものを取り上げることにした。民藝とは柳宗悦が提唱した民衆的工芸の略称。柳宗悦は明治生まれの美術評論家で、名もなき民衆の作った工芸品の魅力を伝えた人物だ。ようは、飾って眺めてうっとりするような観賞用の美術品ではなく、身近に置いて日々の生活で使うものに価値を見出した。


今回の器は、民藝としてよく知られている瀬戸麦藁手(むぎわらで)茶碗だ。江戸時代後期に瀬戸の品野や赤津で作られ、規則正しく縦縞が2色で交互に描かれており、その模様が麦の穂のように見えるから麦藁手と呼ばれるようになった。初めて麦藁手を知ったのは、白洲正子さんの手元にあった食器として、学生時代に写真を見たのがきっかけだった。それからなんとなく心の片隅にあって、古美術の即売会の際には意識して探すようになった。ただ民藝と言われるだけあって、ちょっと骨董臭いというか味が染みすぎているものも多く、同じ麦藁手でも骨董っぽすぎないものとの出会いを待ってようやく手に入れた。普段は古染付や青磁など、比較的線のきりっとした器を使うことが多いので、麦藁手は私の手持ちの器ではイレギュラーなものかもしれないが、温かみがあってこれから寒くなる季節に使いたくなる一碗だ。

盛り付けたのは、もずくの餡かけごはんだ。11月は収穫に感謝する新嘗祭があり、この季節は新米をいただくことが何よりの楽しみでもある。香りが良くて甘く、みずみずしく、おかずなどなくても、お米それだけでも充分である。とはいえ、様々なバリエーションでも新米を楽しみたいと思い、レシピを考えた。秋から年末年始にかけて、食材は美味しさを増す一方で、私たちの体の代謝は落ちて太りやすい時期でもある。そこで体に優しいものとして、もずくを温かい餡かけ仕立てにした。もずくはワカメや昆布と同じ褐藻類で、同じ海藻にくっついて育つことから藻着く(もずく)と呼ばれるようになった。現在は養殖が盛んで、全国シェアの9割以上は沖縄県で育てられているそうだ。今回は早摘みのものを使用した。これは一般的な収穫時期より早めに摘んだもので柔らかいことに特徴がある。もずくにはフコイダンというヌメリの成分が他の褐藻類よりも豊富に含まれており、炎症を軽減してくれたり、免疫力を上げてくれたりと健康に寄与することは間違いなさそうだ。更に抗菌作用の高い生姜をたっぷり使うことで、美味しいと同時に風邪に負けない体づくりにも期待したい。
もずくの餡かけごはん
-材料(3−4人分)

- もずく 150g
- 出汁(昆布と鰹節) 400ml
※→出汁の取り方はこちら https://sumau.com/2021-n/article/331 - 薄口醤油 3g
- 塩 4つまみ
- 片栗粉 大さじ1
- 新米 適宜
- 生姜 適宜
1、水は普段より少し少なめにして、新米を炊く。

2、もずくを水にさらす。
3、出汁をとり、薄口醤油と塩で調味する。
4、片栗粉を同量の水で溶いておく。

5、3の出汁に水切りしたもずくを入れて、4で少しずつとろみをつける。


6、生姜はスプーンを使って皮をこそげる。それから繊維に沿ってスライサーで薄くし、さらに繊維を断ち切るように細切りにする。

7、米にもずく餡を乗せて、上から生姜、さらにお好みでブロッコリースプラウトと茗荷を乗せる。

料理家 千 麻子
学習院大学文学部哲学科および経済学部経営学科を卒業し、史料館に勤めた。また美味しいもの好きが高じて美食の街、リヨンのポールボキューズ料理学校をはじめ、国内外問わず料理を学び、フランスではミシュラン3つ星のレストランの厨房でも研鑽を積む。
Instagram:@asako_sen










