友人が訪ねて来たら連れて行きたいお気に入りの店が誰にでもひとつはあります。街の人々に愛される店こそ、胸をはって紹介したい“わが街の味”。この連載では、そんな街で人気のお店を紹介しています。今月の街は世田谷区・三軒茶屋。美味しいレストランと楽しい飲み屋が混在する街で約10年続く信頼のビストロです。
紹介する街●三軒茶屋
【ビストロ】
賑やかな街の一角でほっと肩の力が抜ける、風通しのいいビストロ
ビストロというスタイルではあるけれど、もっと自由に、もっと気軽に訪れてほしい。
そんな願いを込めて、ソムリエの高橋さんとシェフの小野さんの二人が開いたのが『アンビリカル』だ。高校時代の同級生でもある二人は岩手県の出身。故郷から届く魚や野菜を軸に、ここでしか出せない料理で人気を呼んでいる。

店があるのは、三軒茶屋の「三角地帯」と呼ばれるディープな飲み屋街の一角。
雑多でにぎやかな通りに現れる、ターコイズブルーの陽気な外観は、「こんなところにビストロが?」と道行く人の目を引く。その意外性こそが、『アンビリカル』のもうひとつの魅力でもある。
高橋さんと小野さんに三軒茶屋という街の印象を尋ねてみると、
「多様性があるのが魅力ですね。幅広い世代の人たちがいて、個性的な街です」と口をそろえる。
そんな街に寄り添うように、この店にも多様性を持たせたいと思ったのだという。

しっかりと食事を味わいたい時には、旬の食材を盛り込んだ季節のコースがおすすめだ。早い時間に訪れて、静かな店内でゆったり過ごすのは実に心地よい。12月20日~25日には、クリスマスコース(11,000円・要予約)も登場し、特別な日を豊かに彩ってくれる。
一方で、ワイン片手にあれこれつまみたいなら、ア・ラ・カルトが心強い味方。8~10種ほど開いているグラスワインと共に、きままに飲んで食べる時間は無性に楽しい。遅めの時間なら、グラス一杯だけでもふらっと寄れる気さくさもいい。
「カウンターでのおしゃべりを楽しみに来てくれる常連さんも多いんですよ。サードプレイスのように思っていただけたらうれしいですね」と高橋さん。

名物のブイヤベース。その日に入荷した魚介と野菜がたっぷり。この日は黒ソイを中心に、蛤やあさり、海老など。
名物は、岩手県・大船渡漁港から届く魚介を中心にした『本日鮮魚のブイヤベース』。
南部鉄器の鍋ごと運ばれてくる姿はフォトジェニックで、思わずテーブルのテンションも盛り上がるのだ。魚介の旨みが濃厚に溶け込んだスープは、滋味深い味わい。希望すれば最後はリゾットに仕立ててくれるので、最後の一滴まで旨みを逃さず味わえる。
このブイヤベース、実は野菜もたっぷり入っているので食べ応え満点。
料理に使う野菜は、小野さんの実家で育てたものも多く、ビーツのような西洋野菜をお願いして作ってもらうこともあるのだとか。

アミューズとして登場するのは、自家製マカロンにフォアグラのムースとルバーブのジャムをはさんだシグネチャー。軽い白ワインとよく合う。
ワインは、気負わず楽しめるナチュラルワインが中心。
「かしこまって飲むんじゃなくて、地酒みたいに、もっとワインを身近に感じてほしいんです」と高橋さん。ボトルワインも幅広いラインナップで、毎日更新されるワインリストのほか、リスト外に約70本も控えているというから、好みの一本を相談するのもお楽しみだ。

三軒茶屋の三角地帯で、美味しいワインと魚と野菜が迎えてくれる『アンビリカル』は、オープンからまもなく10年。これからも街のサードプレイスとして、活躍してくれるに違いない。

umbilical
アンビリカル
住所:東京都世田谷区三軒茶屋2-15-3 寺尾ビル101
電話:03-3413-3478
営業時間:18:00~24:00(23:00LO)、土曜・祝日17:00~24:00(23:00LO)
定休日:日曜、不定休
掲載価格は税込価格です(2025年12月現在)










