仕事が早く終わった日、急に予定が空いた夜はひとりで気ままに過ごすにはいいタイミング。カウンターがあるレストラン、ワインや日本酒の注目店など、今やひとりで行っても十分に楽しいお店は増える一方です。ここでは“ひとりでも妥協なし、きちんと美味しいもの”をテーマに、ひとりごはん&お酒の良質な空間を紹介します。

お燗酒と羊のカルパッチョで、

新しい日本酒の魅力を発見しよう

西荻窪駅から歩くこと数分。ビルの2階の目立たない場所にあるのがここ『カントニクス』。ちょっと変わった名前の由来は、お燗と肉をかけたもの。店主の渡辺良子さんが肉好きであること、お燗好きであること、この二つがとても相性がいいことからお燗と肉をテーマにした日本酒居酒屋になったという。

日本酒がずらりと並んだL字のカウンター。手前に4人掛けのテーブル席も1つ。

 「日本酒に肉料理が合うの? 」と思うなかれ、日本酒には旨み成分のコハク酸やアミノ酸が含まれているので、実はワインと同じように、肉料理との相性がいい。さらにお燗をすることで、温かい酒が肉の脂をいい感じに溶かすので、ト―ストに乗せたバターのように香りも味わいも広がってくれる。

日本酒もワインもどちらも好きという渡辺さんは

「日本酒は料理を美味しくしてくれるお酒。反対にワインは、

料理がワインを引き立てるような関係だと思っています。

もともと美味しいものを食べることが好きなので、

料理を引き立ててくれる日本酒、とくにお燗酒に出会って、

すっかり惚れこんでしまいました」と笑う。

お燗は60℃ぐらいの熱めの温度でつけている。飲むうちに温度が下がり、味が変化していくのを楽しめる。

お店を始める前は、全く別の仕事をしていたという渡辺さん。

美味しいものがあると聞けば、どこにでも飛んでいく食いしん坊だったとか。そのかいあって、今まで食べてきた経験を生かしたメニューのセンスは抜群。

お燗酒をこよなく愛する店主の渡辺良子さん。日本酒に合う独創的なつまみを考えるのも上手だ。

例えば、レバノンなどで食べられるナスとゴマのペースト『ババガヌーシュ』があるかと思えば、『羊のカルパッチョ』があったり、時にはイタリアのもつ煮込み『ランプレドット」があったりと、その発想は国境を越えてどこまでも広がっていく。

こつまみ3点盛り 700円(ちょい盛り)
3品選べるこつまみ3種盛りは、お一人様用にちょい盛りでも提供してくれる。写真はちょい盛り。通常は1000円。ティラミソ、ババカヌーシュ、すじこの燻製。

山形の羊専門店から仕入れる美味しい羊肉を使った料理も多彩にあり、〆にはカレーやチャーハンもある、とメニューだけを見ているととても燗酒が主役の居酒屋とは思えない。それだけに、この料理がどんな風にお燗酒と合うのか、そんなことを考えてワクワクしながらオーダーする楽しみもいっそう大きい。

羊のカルパッチョ 1500円
たたき風にレアに仕上げた羊の薄切りに、オリーブオイル、塩、カリッと香ばしく炒ったクミンをちらして。肉の鉄分の風味に合う『睡龍』のお燗酒と合わせたい。

例えば、今回紹介したこつまみ3種盛りの1品『ティラミソ』は、マスカルポーネチーズに江戸甘みそやナッツを加えたオリジナルのおつまみ。これには、『独楽蔵 玄 円熟純米吟醸』のまろやかに熟成したカラメルのような風味がよく合うという。もちろんお燗してゆったりとお酒を開かせている。

「この日本酒はまろやかな熟成感があるので、

ワインで言えば軽い赤のような

イメージで合わせています」と渡辺さん。

日本酒は、燗上がりする酒が約20種類ほど。しっかりした骨格を持つ、肉に合う日本酒が揃っている。

自身がワイン好きでもあるだけに、ワインに例えて教えてもらうと、ワイン好きにもとっても親しみやすくなる。ちなみに、おひとり様には小ポーションで提供してくれる『こつまみ3種盛り』は、少しずついろいろ食べたいという時にはぴったりだ。

寒くなると定番のような燗酒も、がっつり肉料理と一緒に味わえば新しい世界が開けそうだ。料理はお好みで、日本酒のセレクトは渡辺さんに身をゆだねて、という楽しみ方もおすすめしたい。


カントニクス

住所:東京都杉並区西荻南3-17-1 リン西荻窪2F

電話:03-6454-2214

営業時間:17:00~24:00(LO23:00) 土曜14:00~24:00(LO23:00)

日曜・祝日14:00~23:00(LO22:00)

定休日:火曜・不定休あり

※営業時間は通常営業のものです。来店時は事前に店舗にご確認ください

※掲載価格は税別価格です(2021年1月現在)

(取材&文・岡本ジュン 撮影・マツナガナオコ)

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