友人が訪ねて来たら連れて行きたいお気に入りの店が誰にでもひとつはあります。街の人々に愛される店こそ、胸をはって紹介したい“わが街の味”。この連載では、そんな街で人気のお店を紹介しています。今月の街は文京区・小石川。伝統ある高級住宅街にたたずむ唯一無二のタイ料理カフェです。
紹介する街●小石川
【カフェ・タイ料理】
都心のエアポケットのような
緑豊かな街にたたずむカフェ
ぽっかり抜けた空の向こうに、植物園のこんもりとした森が広がる小石川。この植物園は、徳川幕府が設けた『小石川御薬園』を前身とし、日本有数の歴史を持っている。本来は本郷にある東京大学の付属植物園であるが、通称小石川植物園として親しまれてきた。
小石川は江戸時代には大名屋敷や武家屋敷が居並び、学問所も多かったという文教の地。松平播磨守の上屋敷に由来する播磨坂さくら並木も有名で、その上がり口にあるのが、『アリッサラ カフェ アンド タイ レストラン』だ。
白いシェードが映えるニュアンスのあるブルーの外壁、テラスには木のテーブルとイス、とまるでかわいらしいパリのカフェそのもの。木製の扉を入ると一転、明るいブルーの壁一面をカラフルな絵画が占めている。壁にはたくさんの絵があるが、どれもアーティスト、maymay titiさんのもので、明るくファンタジックな作風は見る人をリラックスさせてくれる。
そんなアートにあふれた内装と同じく、メニューも少し個性的。店内で焼きあげるパンがあるかと思えば、料理は本格的なタイ料理という組み合わせ。カフェ・ラ・テ、エスプレッソ、ハーブティーにシンハービールとドリンクも幅広い。
パリが好きで何度も通っているというオーナーが、同じく大好きというタイのエッセンスを取り入れたハイブリッドと聞けばそれも納得だ。タイのオリエンタルホテルに泊まって、そのサービスに感銘を受けたという。そこでここもホテルの中にあるようなカフェをイメージしているという。
メニューは、カジュアルな屋台の料理ではなく、ホテルのコックが作る本格的なもの。本場から呼んだ初代のコックが考案したレシピで、現在もタイ人の料理人がキッチンで丁寧に作っている。こんがり焼けた『ガイヤーン』はカオニャオと呼ばれるもち米付き。タイと同じようにガティップカオ(竹かご)に入っているのが楽しい。
このほかお馴染みのひき肉のバジル炒め『ガパオ』やビーフン焼きそば『パッタイ』などもある。また曜日代わりで『グリーンカレー』、もち米と食べるひき肉のサラダ『ラープ・ムー』など、タイ料理好きの心を動かすメニューも登場する。
カウンターに並ぶショーケースには、クロワッサンやデニッシュが並び、店内にはバターと小麦の幸せな香りが漂っている。朝からパンを買いに来る人、朝食やモーニングコーヒー、ランチを楽しむ人など、ご近所さんの生活にも溶け込んでいるようだ。
テラスに座れば、のんびりとした古い街並みが眺められ、どこか旅先にいるような気分にさせてくれる。日常を忘れてゆったりお茶を楽しむのも、小石川という静かな住宅街のほかにはない魅力のひとつだ。
ARISSARA CAFE & THAI RESTAURANT
アリッサラ カフェ アンド タイ レストラン
住所:東京都文京区小石川4‐15‐13
電話:03-6240-0156
営業時間:10時~16時30分
定休日:月曜
※掲載価格は税別価格です(2024年4月現在)