こんにちは、趣味は美術館・アート展巡りの菅原草子です。先日、「デザインフェスタ」というイベントに行ってきました。1万人以上のアーティストがオリジナルアートや雑貨等の作品を販売、実演するイベントなのですが、東京ビックサイトの広い会場中に並べられた作品たちと会場の熱気にわくわくが止まらず、気付けばあれやこれやと爆買いでした。

最近は、ハンドメイド作品をECサイトで簡単に販売、購入できるようになり、様々な才能に触れることができて嬉しい反面、見かけた作品を模倣し販売してしまう人がいるという問題が増えているようです。先日、ハンドメイド関係の書籍を出版している出版社がSNS上で、“書籍に掲載された作品をコピーした商品をフリマアプリ等で販売することは著作権法違反に該当する”という旨の注意喚起をしたことで物議を醸しました。そこで今回は、そんなハンドメイド作品のコピー、いわゆるパクリの商品は、ただちに違法になるのかという疑問について解説していきます。

著作権とはどのような権利?

SNSでの多様な発信が日常になっている今、「著作権」は誰もが身近なワードかもしれませんが、改めてきちんと整理をしましょう。

「著作権」とは、知的財産権と呼ばれる権利のグループのうちの1つで、同じグループには、特許権、商標権、意匠権、実用新案権といったものが含まれます。知的財産権は、人間の知的活動によって生み出された創作物を創作した人の財産として保護するための権利です。その中でとくに「著作権」は、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」と定義される「著作物」に関する権利になります。端的にいうと、自分が生み出したオリジナルの芸術作品に関する権利です。

 著作権法では、具体的に作品の使用方法に関する権利を定めており、他人が勝手に作品を複製したり改変したりすることは原則違法です。ただし、どのような使用方法でも違法になってしまうと、社会活動において支障が生じることがあるため、たとえば、自分自身で使用するために音楽を録音して聴くことや、著名な美術作品を美術の授業で紹介するためにコピーを使用すること等は、例外パターンとして違法にならないと定められています。

著作権はいつ誰に生まれる?

この著作権、他の知的財産権である特許権や商標権と異なり、作者自身が申請や登録をする必要はありません。作品が誕生したときから自動的に発生し、基本的には作者本人が権利を有することになります。ちなみに、上記のように自動的に発生する著作権ですが、永遠に保護されるのでしょうか? これについては保護期間が定められており、作者の死後70年を経過するまで、とされています。有名画家の絵画を使用したグッズ等が販売されているのを目にしたことがあるかもしれませんが、これはその画家の死後70年が経過したために権利が消滅し、誰もが自由に使用できるようになったために許されているケースがあります。

国外ではありますが、2024年のはじめ、これに関連したニュースがありました。あのミッキーマウスの初代版が、2023年をもってアメリカの著作権保護期間である“公開から95年”を満了したために、誰もが自由に使用できる公共の財産になった、というものです。アメリカ国内の話ですので、そのまま日本でも適用できるかは要検討ですし、初代版ではない現在のミッキーマウスはもちろんディズニーが権利を有していることには注意が必要ですが、このように著作権には期限があります。一度誕生した著作権が永遠に認められるとすると、後世の人間たちの創作活動が制限されてしまいますからね。

著作権が侵害されたら?

著作権法に定められた著作権侵害にあたる使用行為があった場合、著作権者から侵害した人に対し、①使用の差止め、②損害賠償、③名誉回復の措置、等を請求することができます。また著作権侵害は犯罪として、罰則も設けられており、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科されます。

では、すべてのハンドメイド作品は著作権によって守られている?

先ほど記載したように、著作権が発生するのは、その作品が思想感情を表した芸術的で創作的なものであることが必要となります。そして基本的に量産されているような実用品は著作物とはならないとされます(別途、意匠権で保護されることがあります)。

ここから考えられるように、ハンドメイド作品のすべてについて当然に著作権が発生するわけではなく、どのような作品か、によることになります。ハンドメイドである以上すべて一点物ですからオリジナルだ!と考えがちかもしれませんが、手作りであっても、独創的ではなくみんなが思いつくような一般的なデザインや、量産された実用品である場合には、残念ながら著作権が発生する著作物には該当しません。より芸術的で美術鑑賞用ともいえるような作品に近づくほど、著作物として著作権が認められやすいことになります。

自分の作品が模倣されたときの対処は?

 このように著作権で保護されるかどうかは作品次第ですが、著作権で保護されるケースの場合には、前述したように、相手に対し、販売の差止め、損害賠償等を求めることができます。とはいっても、自ら又は弁護士に頼んでそのような対応をしていくのはハードルが高いかもしれません。もし作品の模倣を見つけた場合には、まずは相手本人に直接問い合わせをしてみる、あるいは販売サイトの運営元に連絡をして対応を求めてみるといいかもしれません。相手もトラブルを避けたい場合には販売を止める等の対応を取る可能性があります。一方それでも違法な販売が続くような場合には、弁護士等に相談し、法的措置をとることも検討するのがよろしいかと思います。

ハンドメイド作品を作るときの注意点は?

 自分でハンドメイドをする際であっても、他社の作品のうち著作権で保護されていないものなら真似してもいいのでは、と考えるべきではありません。他の作者の作品を参考にして作った商品を販売した場合に、その作者から責任を追及されたり、パクリ商品であるとSNSで拡散をされたりといったトラブルに発展することがあります。販売サイトによってはアカウント停止になることもあるでしょう。また、手芸本などハンドメイドの参考にする書籍には、無断で複製販売をすることを禁止する記載が書いてある場合もありますので、たとえ法的に著作権違反とはならないとしても、トラブルを回避するために注意事項はよく確認すべきです。

 なお、著作権ではありませんが、ハンドメイド作品を販売するときには、⑴著名なブランドのロゴやキャラクターを無断使用することによる商標権の問題、⑵アイドル等の写真を使用することによる肖像権の問題、等にあたる可能性もありますので、その点も注意しないといけません。

 以上のように、ハンドメイド作品については注意すべき点もありますが、販売はせずに個人で使用するためや、数名の友人にプレゼントするためだけであれば、他の作者の作品を参考にしてハンドメイドしてみることは、基本的には違法になることはありません。自由にハンドメイドを楽しんでいただきたいです。

ハンドメイドを含め、著作権侵害等の問題を考える必要もないような、オリジナリティ溢れる作品が、世の中にたくさん生まれていったら素敵ですね。

(参考サイト)

・文化庁 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/

・公益社団法人著作権情報センター https://www.cric.or.jp/qa/hajime/index.html

・日本デザインプランナ―協会 https://www.designshikaku.net/handmade/craft/handemadeshikaku5/

この記事に関する質問や、記事で取り上げてほしい相談を受け付けております。

掲載記事については、モリモトSUMAUのInstagramにDMをお願いできたらと思います。

弁護士 菅原草子(スガワラソウコ)

仙台市出身。都内法律事務所所属。個人から企業の相談まで分野を問わず依頼をうけている。

大学院農学研究科で食品成分の研究をしていた異色の経歴から、食品関係企業の取締役も務める。

趣味は、ビールと美味しいごはんと海外旅行。

instagram:@sooco_s328

記事で取り上げてほしい草子先生へのお悩みや法律の疑問を募集します

例えば最近ニュースでよく聞くこの法律について詳しく教えてほしい!など…

記事で取り上げてほしいことなら、小さなことでも大丈夫です。

SUMAUのインスタグラムからDMで気軽にメッセージをお送りください。

SUMAU公式インスタグラム@morimoto_sumau

Share

LINK