寄付(ドネーション)とは、金銭や品物を贈ることを指します。

師走に話題にあがる『ふるさと納税』や、昨今盛り上がりを見せる『クラウドファンディング』も寄付にあたります。

今回は、主に非営利団体や公共団体といった社会問題の解決のために活動する組織や団体に「お金を贈ること」と税金の関係について、なかなか知ることのないその中身をご紹介していきたいと思います。

日本では「寄付」にあまり馴染みがない方も多いかもしれません。

アメリカなど、寄付の文化の根付いている国の映画やドラマを観ていると、美術館や文化施設に大口寄付をした富豪の名前が記された棟やビルがあったり、公園に寄付者の名前が刻印されたベンチがあったり、チャリティといった言葉もよく耳にします。

しかし、日本でも江戸時代にまで遡ると独自の寄付文化がありました。当時の庶民はお金を出し合って暮らしの基盤を作っていたそうです。大阪・堺市には商人たちの寄付で建設された石橋が今でも多く残っているといいます。

その後は、内政が整い、世の中の課題解決は国に任せておけばいいだろう、という意識が広がったのだと思います。

近年ではクラウドファンディングなどの新たな寄付のスタイルが確立し、寄付白書によると若い世代の意識が高まり、個人寄付総額が年々増えてきているようです。

ところで、日本で一番多く資金が集まったクラウドファンディングのプロジェクトはご存知でしょうか?

未だ猛威を振るう新型コロナウイルス感染症の拡大防止活動基金で、金額は8億7077万2000円(2020年12月22日時点)。

クラウドファンディングプラットフォーム「READYFOR」で立ち上がったこのプロジェクトは当初7月2日までの予定でしたが、特設ページで支援を延長し、現在も日本のクラウドファンディング史上最高額を更新し続けています。

クラウドファンディングに支援をした場合の税金

個人でクラウドファンディングに寄付をした場合にも控除が受けられる場合があることをご存じでしょうか?

クラウドファンディングには大きく分けて、下記のタイプがあり、それぞれ控除の内容が異なります。

①寄付型

リターンが特に設定されていないもので、通常の寄付と同様のものです。災害への支援などのプロジェクトが多く、上記「READYFOR」のプロジェクトもこちらにあたります。クラウドファンディングでは基本的にこのタイプについて、『所得控除』や『税額控除』の税制上の優遇措置があります。

②購入型

寄付額に応じた一定のリターンが設定されているものになります。クラウドファンディングとしては、このタイプが最も馴染みがあるかもしれません。内容としては、通常の購入と変わらないため、税法上の優遇等はありません。

③投資型

リターンとして、利息や株式が該当するタイプのものです。その中で利息がリターンとなるものはソーシャルレンディングとも呼ばれており、その収入は所得税法上、雑所得に区分され、一定額以上となる場合は確定申告をする必要があります。

また、リターンが株式に該当するもので、クラウドファンディング事業者が優遇税制の認定を受けている場合は、その投資時点で『所得控除』を受けることができるプロジェクトもあります。

この制度はエンジェル税制と呼ばれ、その投資額を『所得控除』するか、株式売却益から控除するかの選択適用となります。

寄付金控除の内容

個人が寄付型クラウドファンディングを行った場合、その寄付先が国や地方公共団体、認定NPOなどであれば、『所得控除』か『税額控除』のいずれかの適用を受けることができます。寄付金控除の対象となる支払先は限定されているため、当該制度の対象となるかどうかはクラウドファンディング事業者や内閣府認定NPOホームページなどで確認ができます。控除額の計算方法については次のとおりです。

■所得控除(寄付金控除)

寄付額の合計-2,000円=寄付金控除額(その年の所得金額の40%が上限)

■税額控除(寄付金特別控除)

(寄付額の合計-2,000円)×40%=寄付金特別控除額(その年の所得税額の25%が上限)

所得控除は、医療費控除や生命保険料控除などのように所得から控除をする制度です。

給与所得者であれば、給与収入から給与所得控除を控除した「給与所得」から「所得控除」を引いた「所得金額」に税率を乗じて所得税額を計算します。ちなみに、ふるさと納税もこの寄付金控除のひとつです。

一方、税額控除は、住宅ローン控除のように所得税額から控除をする制度です。

ご自身の所得に応じてどちらが有利な方式となるかは異なってきますので、事前に試算をしてみることをお勧めします。

申告時の手続(所得控除・税額控除共通)

上記の所得控除又は税額控除の適用を受ける場合には、所得税の確定申告が必要となります。

寄付金控除のひとつである、ふるさと納税の利用のみであれば、確定申告をしなくてもその適用を受けることができる制度(ワンストップ特例)がありますが、寄付型クラウドファンディングをしたことによる寄付金控除を受ける場合には、
確定申告がその条件となっています。

申告にあたり、その適用を受ける旨の記載をし、寄付金の明細、寄付金の受領証を申告書に添付しなければいけません。

なお、e-taxにより申告する場合は一定の書類を作成することで、証明書の添付は不要になりますが、原本の保存が必要となっています。

ちなみに投資型クラウドファンディングにおけるエンジェル税制の適用を受ける場合には、そのほかに都道府県知事が発行した一定の書面等、別途書類の添付が必要となります。

亡くなった後の寄付

ここまでクラウドファンディングを通した寄付とその優遇措置をご紹介してきました。これはいわば生前の寄付になりますが、寄付は亡くなった後に行うものもあります。

日本ではまだ一般的ではありませんが、個人が亡くなったときに遺言によって遺産を寄付する遺贈寄付は世界で広がりつつある寄付のひとつです。

亡くなった後の寄付については、遺言による寄付(遺贈寄付)とその財産を取得した相続人がする寄付(相続財産の寄付)があります。

遺贈寄付

亡くなった方に所得がある場合、その死後4か月以内に所得税の準確定申告を行う必要があります。

その準確定申告の際、認定NPO法人のような特定の非営利団体への遺贈寄付がある場合は、生前寄付と同様に寄付金控除の対象となります。

また、亡くなった方に一定の財産がある場合、その相続人は相続税を納める必要があります。

その相続税が課される財産の計算対象に、法人に対して寄付した分は含まれません。よって、相続税は非課税となります。

このように課税を避けつつ、社会貢献が可能であるため、財産がある方は考慮に入れて頂きたい寄付の方法です。

ただし、ご自身の法人に寄付したような場合は、原則としてその法人に法人税がかかります。さらに相続税を免れる行為とみなされたときは、相続税がかかることになります。また現金以外の不動産を寄付するような場合は、その寄付が譲渡とみなされ、原則として譲渡所得税が課されるなど注意点があります。

相続財産の寄付

相続人が相続財産を取得した後に寄付をするといった場合もやはりその寄付先が重要になります。

遺贈寄付と同様に認定NPO法人等の特定の非営利団体への寄付であれば、所得税の寄付金控除の対象となります。この場合の控除は、寄付をした相続人の所得税での適用となります。

相続税においては、遺贈寄付と異なり、相続税の申告書上の手続が必要となります。

相続税の申告はその財産が相続税の基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に必要となりますが、相続財産の寄付は相続税の申告が条件となっているため、基礎控除以下である場合も相続税の確定申告を行わなければなりません。

なお、その寄付を不動産で行う場合は原則として譲渡所得税が課されることになる点は遺贈寄付と同様です。ただし一定の要件を満たす場合はその譲渡所得税が非課税となる制度もあります。

このように亡くなった後の寄付については税制面での留意点が少なくないため、検討される場合には注意して頂ければと思います。


ブランコンサルティング株式会社CEO

佐原 由起

新卒で会計事務所に就職後、税理士と共に2013年にブランコンサルティング株式会社、及び会計事務所Blanc Tax Spaceを設立。

起業を目指す方や若手経営者に対してお金や税金のアドバイス、マネープランニングを行っている。税務・会計業務以外にも、ブランディングやPRコンサル業務も得意とし、双方をニーズに合わせて提供している。

HP:https://www.blanc-con.com/

Instagram:@yuukisahara

(記事監修:Blanc Tax Space代表税理士 宍戸 智之)

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