2014年12月22日、‘開業10周年’を華々しく迎えた「アマン東京」。すでに10年以上の時が過ぎても、運命の扉が開かれた日のことは昨日のことのように覚えています。というのも「あのアマンが東京に…!」と、私自身も含め、世界中のアマンジャンキーが驚きの目を向けた1日でした。「アマンはついにハイダウェイを飛び出したのか?」と、大都会に誕生した「アマン東京」のスタート時、ファンは不安や歓びと共に様々な思いを抱いていました。それでも当然のごとく、開業後にはジェットセッターやアマンジャンキーたちが、世界中からこぞって「アマン東京」を訪れたのです。

アマンはその時まで‘アマンリゾート’として、常に手つかずの自然を慈しむように大自然に寄り添い、時には僻地に、時には小さな島に、そして時には聖地やジャングルにと、1988年の創設以来掲げていたアマンの伝説的なコンセプトを覆すことなく、世界で最もゴージャスな隠れ家リゾートとして突出した存在でした。そして突然現れた大都会のアマンでしたから様々な意味で驚きと感動のデビューだったのです。

さて、アマン史上初の都会型となった「アマン東京」は、ホテルの入る大手町タワーの上層階33~38階までの6フロアを占め、マンモス都市東京のパノラマを満喫し、東京を囲む印象的なスカイラインや、好天に姿を見せる富士山まで望める絶景が自慢のひとつでもあります。たとえば滞在の翌日、もし雲ひとつない朝に恵まれたら、カーテンを上げて群青色から朝焼けのオレンジやピンクに染まる空の変化を楽しむといいでしょう。これまでの秘密めいたアマンとは一味も二味も違う東京生まれのアマンは、開業時からラグジュアリーの新たな定義を確立したとも言えそうです。同時に、‘自然と共に’というアマンのこれまでの変わらぬ想いは、東京という大都会でも貫かれていました。

大手町タワーの全貌。下に見える緑の木々は‘大手町の森’の一部でビルの一面に寄り添う都会のオアシス。
森に包まれるように佇むのは「ザ・カフェ by アマン」。当初は移植された森の木々も未だ若々しく低木もあったが、10年以上が過ぎた今は建物を包み込むように生長。ランチコース、ディナーコース、スイーツやシャンパンなども。

常に自然に寄り添うというアマンの定義は東京でも!

実は「アマン東京」の入る大手町タワーの麓には3,600㎡の森が広がっています。東京都心では稀有な本物の森であり、‘大手町の森’と呼ばれ、自然の生態系を有し野性を併せ持っているのです。資料によれば、この森はホテル造りの3年前から森の一部(1,300㎡)を千葉県君津市の山林で土壌や植物、適切な管理方法などを検証しながら育成・改良を重ね、大手町に移植したという‘プレフォレスト手法’でできた森なのです。夏になればセミが鳴き、様々な鳥や昆虫が生息…紅葉までも楽しめる四季を持つ森です。今では木々も当時より随分と育ち、暑い都会の夏でも、涼風の通る木陰が快適な憩いの場として親しまれています。

ホテル館内のデザインは、アマン哲学を知り尽くし、他のアマンも手掛けてきたオーストラリア人建築家、ケリー・ヒル氏(2018年8月26日没)。また、氏はザ・チェディ チェンマイ、台南のザ・ラルー、バリ島のアリラ・ウブドなど、アジアンリゾートの礎を築いた名建築家としても知られ、私自身はブータンの「アマンコラ・パロ」で偶然氏に出会い、思い出深いロングインタビューに成功しました。氏は日本のことも研究し尽くしており、その後は日本の美しい自然と真珠の海を臨み温泉のある志摩の「アマネム」、約24,000㎡の森に客室26室という奇跡のような贅を尽くした「アマン京都」も自身の作品として残り、今ではレガシーとなっています。

「アマン東京」33階の広大なガーデンレセプションには、和紙に覆われた高い吹き抜けの天井(30m)が創られ、全体的に四季を感じさせる日本庭園を彷彿とさせる水場が配され、季節ごとに変る樹木が中央に飾られる空間は圧巻です。館内全体の研ぎ澄まされたシンプルな意匠や極上の素材、現代風に昇華された日本文化や伝統の見せ方も洗練の極みであります。今となっては有名となりましたが、デザインの礎となった6つのエレメント‘日本の伝統家屋、自然、空間、照明、縁側、素材’が見事に融合され、日本が誇る芸術家や、一途な技ありの職人作業が加わり、よりスタイリッシュでユニーク、伝統美を表現したストーリー性のあるインテリアが際立ちます。特にガーデンレセプションの中心となる季節ならではの生け花、1階、33階、34階に飾られた左官アーティスト挾土秀平作の三部作は植物をテーマに季節を表現するなど自然との繋がりが随所に見られます。

静謐な空気感と日本文化を感じる都会のサンクチュアリ

都会のサンクチュアリと言われる客室は全部で84室。室内に入る時には靴を脱ぎ、日本家屋の建築様式を基にデザインされた温かな印象の室内には、私たち日本人の先人たちから築かれた叡智が隅々まで表現され、‘縁側’‘床の間’‘肩まで浸かる深い木製の湯船’など、ケリー・ヒル氏の豊かな感性で日本文化が細やかに表現されています。デラックススイート(71㎡)に始まり、アマンスイート(157㎡)、2フロアに渡る2,500㎡を誇るウェルネス施設、30mの天空のプールなど、どこをとっても開放感あふれる贅沢な造りにシティリゾートとしてのロングステイもお勧めです。私自身も、泊まって改めて感じる贅沢さと居心地の良さに、押し付けではない快適な滞在が体感できるのだと納得しました。もともとアマンを支えてきた共通の合言葉は創設以来「Humble」(謙虚)ですから、それに呼応する何かが感じられるのです。

ホテル館内には、世界中のアマンのエグゼクティブシェフが自慢の腕を披露する同名のイタリアンレストラン「アルヴァ」があります。また東京には気合の入った極上の江戸前鮨店「武蔵 by アマン」もあり、1階には森に包まれるように「ザ・カフェ by アマン」が佇み、ビルの地下にあるペストリーショップ「ラ・パティスリー by アマン東京」が好評です。これほど贅極まる都会のホテルですから、滞在中は一歩も外に出ることなく、ホテル内で寛ぎ、ホテル内で楽しみ、ホテルのダイニングで食す…「アマン東京」では、そんなホテルに浸る滞在が夢ではありません。

ガーデンラウンジは縦40m、横11m、高さ30mの吹き抜けが話題。和紙で覆われたガーデンラウンジの行灯(吹き抜けの壁)は圧巻。自然光と間接照明の違いが美しく融合され、温かな光がゲストを包みこむ。
すっきりと余計なもののない客室、デラックススイート(71㎡)。アマンでは広さやそれによりインテリアの少しの違いはあるが、ほぼ統一された空間造り。和紙の壁には書をアートとして掲げ、左のガラス窓に沿うように‘縁側’も。
東側に位置するトウキョウスイート(77㎡)、晴れた日には部屋から美しい朝焼けが望める。深さのある日本式の湯船、手前には縁側が。
ウェルネスエリアにある30mの温水スイミングプール。エリアはピラティスやヨガの専用スタジオなどを含む2,500㎡。スパには鍼灸施術室を含む8室のトリートメントルームが。
イタリアンレストラン「アルヴァ」(ラテン語で「収穫」を意味)の内観。イタリアの伝統的な調理法を敬いながら、日本各地の旬の食材やイタリアの上質な食材を用いてクリエイティブな味わいを提供。
朝食は「和朝食」「アメリカンブレックファスト」の2種。また、豊富なアラカルトメニューからお好みのものを選ぶことも可能。写真は主菜(魚)と数々の小鉢、釜の炊きたて御飯が並ぶ「和朝食」のルームサービス。

取材・文/せきねきょうこ

Photo: アマン東京

せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数。

http://www.kyokosekine.com

Instagram: @ksekine_official

DATA

アマン東京

〒100-0004 千代田区大手町1-5-6、大手町タワー

📞 03-5224-3333

https://www.aman.com/ja-jp/hotels/aman-tokyo

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