これまで、お金にまつわる身近な情報を扱ってきた連載『いま知りたいお金のこと』を、リニューアル。今回からは女性のための金融学びコミュニティ「きんゆう女子。」が、お伝えしていきます。
今回のテーマは、素敵な返礼品をもらえると話題のふるさと納税。
制度を毎年利用している方、これから始めてみようかと気になっている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、返礼品に注目が集まりがちなふるさと納税について、きんゆう女子。の視点から、「節税効果とお金の流れ」そして、「心理的価値」に焦点を当ててご紹介します。
自由で等身大に生きる、きんゆう女子。とは
きんゆう女子。は20~30代を中心とした金融ワカラナイ女子による、ワカラナイ女子のためのコミュニティ。2016年3月3日に世界の三大金融街、東京 日本橋 兜町・茅場町で誕生しました。
家計管理から世界経済、FinTech、ライフスタイルまで幅広い“きんゆう”をテーマにした女子会を開き、ゆる~く、楽しく、でもちょっと真面目に、情報や気づきを得ています。
ライフイベント前後の女性たちが、ライフスタイル、バックグラウンドや年代などの枠を超えて、人生を心豊かに、自由に生きていこうと集まり、語り合います。
ここ最近の活動では、2024年からはじまった新しいNISAや、令和時代を生きるために必要な金融・経済教育について岸田総理と語る車座対談に参加したり、街の賑わい創出に貢献するべく、6年ぶりに再開された山王祭に参加したりしています。
最初は1名ではじまった活動が、今はコンセプトに共感する方が3,300名を超えました。
自らが学ぶだけでなく、金融教育の大切さや経験を通して学んだことを伝え社会に貢献したいと考えるメンバーが増えてきています。
今回は、きんゆう女子。から代表してわたくし「入船みみ」が、ふるさと納税の見えにくいけれど大切なポイントである「節税効果とお金の流れ」そして、「心理的価値」に焦点を当てお伝えします。
お金の流れ①自己負担額2,000円の意味
ふるさと納税について、「自己負担額2,000円で返礼品がもらえる」という表現をよく目にします。
では、具体的に自己負担額2,000円とはどのような仕組みなのでしょうか。
基本的にふるさと納税をした金額は、自分が支払う所得税・住民税から控除されます。しかし、ふるさと納税の全額が税金から控除されるわけではない点、これが自己負担額2,000円と関係しています。
30,000円のふるさと納税をした場合には、そこから自己負担額2,000円を差し引いた、28,000円分が所得税・住民税から控除される仕組みなのです。
ふるさと納税の合計額から2,000円が差し引かれるため、ふるさと納税を行う先の自治体が複数であっても自己負担額は変わりません。
安心して複数の自治体を選べますが、手続きが簡単なワンストップ特例制度が使えるのは5つの自治体まで。確定申告をしない方は、自治体の数には気をつけましょう。
お金の流れ②節税効果は?納税したお金は、どのように戻ってくる?
ふるさと納税した金額は所得税・住民税からの控除と言われますが、いつ、どのように税金が減っているのか、少しわかりにくいかもしれません。
そこで、多くの人が利用するワンストップ特例制度の場合をご紹介します。
ふるさと納税を行うと、翌年の住民税について、本来払うべきだった金額から「ふるさと納税全額ー2,000円」が減額されます。
減額は毎月の住民税に少しずつ反映されるため、税金が減っている実感は少ないかもしれません。
わかりやすいよう簡略化して、数字を当てはめてみましょう。
- 2023年は14,000円のふるさと納税を行った
- 自己負担額2,000円を差し引き、12,000円が住民税から控除される
- 2024年、本来は年間120,000円(毎月10,000円)の住民税を払う必要があった
- ふるさと納税分が控除され、年間108,000円(毎月9,000円)の住民税を払うことが決定
このようなお金の流れから、ふるさと納税は「税金の前払い」とも言われます。
では、「節税効果」ともいわれる、税金からの控除額はどれくらいになるのでしょうか。4人家族(共働き夫婦に大学生と高校生の子ども)の場合をご紹介します。
例えば、年収800万円の人は、107,000円を上限にふるさと納税として控除ができ、年収1,000万円の人は153,000円が控除の上限となります。年収が上がるにつれ、ふるさと納税をできる枠がどんどん大きくなっていくため、年収が多い人こそ、上手に活用したい制度です。
心理的価値①選べる“税金の使われ方”
お金についてのメリットを見た後は、心を豊かにするメリットについて焦点を当てていきましょう。
制度の名前にもあるとおり自分にとってゆかりのある「ふるさと(自治体)」に納税できるという心理的メリットはもちろん、税金の使われ方を選択できる点こそ、ふるさと納税における心理的価値の大きなポイントではないでしょうか。
私たちが所得税や住民税、消費税を支払うとき、「こんなことに使ってほしい」と具体的に選択し、希望を伝えることはできません。
一方、ふるさと納税は、まちづくり・子育て・緑を増やすなど、自治体が設けた選択肢から私たちが主体的にお金の使い道を選べる制度です。
実際に、書籍「幸せをお金で買う」5つの授業 ―HAPPY MONEY (エリザベス・ダン (著), マイケル・ノートン (著))の中で紹介されているように、ふるさと納税のように、社会や誰かにお金の使い、後からメリットを享受する方法は、心理的に幸福度を増すという研究結果に当てはまっています。
何も気にかけなければ、ただの納める税金、払わないといけないものというネガティブな印象の存在にもなりうる税金ですが、少し視点を変えることで見えてくる地域と私たちのつながり、そして税金を納める意味。
今後どのようなまちになってほしいか、そのまちに関わる人へ前向きな影響を与えられるか、自分たちの想いをのせてふるさと納税をしてみるのもよいのではないでしょうか。
心理的価値②クラウドファンディング型ふるさと納税
自治体による地域おこしの取り組みやプロジェクトを、クラウドファンディングという形で支援するふるさと納税をご存じでしょうか。
クラウドファンディングとは、「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語で、「インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する」こと。
アメリカで2000年生まれた仕組みで、借入や出資を受けるなどの資金調達の代わりに手軽に多くの方から必要な資金を集めることができます。
その仕組みを活用し、「地域おこし協力隊クラウドファンディング」と呼ばれるもがあり、プロジェクトに必要な資金援助を行い地域活性化に貢献できるスタイルのふるさと納税の方法もあります。
通常のふるさと納税と同様、返礼品も複数から選択できます。
クラウドファンディング型は、ふるさと納税として寄付したお金の活用状況や事業の進捗状況が報告されるため、自分ゴト化できるところが魅力です。
総務省の公開している「ふるさと納税活用事例集」資料・データによると、60にものぼる具体的な活用事例が紹介されています。
クラウドファンディング型のふるさと納税を活用した事例で印象的な事例は、沖縄県 宜野湾市の市内中学生の国際交流を支援するプロジェクト。夏休み期間中にふるさと納税の仕組みのおかげでアメリカ留学を経験することのできた生徒さんからの報告レポートだけでなく、お礼メッセージがお礼として届くという素敵な企画です。
ゆかりのある自治体や関心のある取り組みから探してみると、これまでとは違った形でふるさと納税を楽しめるかもしれません。
ふるさと納税は大人の社会見学
ふるさと納税について、少しわかりにくいお金の流れと節税効果、返礼品だけではない心理的価値についてご紹介しました。グルメなどの返礼品はもちろん嬉しいですが、税金の仕組みや使われ方まで考えるきっかけになるふるさと納税。大人の社会見学のようにも感じます。
私個人としては、生まれ故郷である北海道の自治体を選ぶことが多く、これまでに返礼品として、帆立やジンギスカン、お米の定期便(北海道米ゆめぴりか)をいただきました。もちもちとしたゆめぴりかに、しっかり味のついたジンギスカンは最高の組み合わせです。
よく選ぶ税金の使われ方は「まちづくり事業への活用」。勤務先でまちづくり分野の仕事をしていることもあり、持続的なまちの成長を応援しています。
ふるさと納税や税金の知識も、ゆかりのあるまちへの想いも、そして返礼品も、自分自身にとって本当に価値があると思うものを手にとってみてはいかがでしょうか。
出典
総務省「ふるさと納税ポータルサイト」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/080430_2_kojin.html
総務省「ふるさと納税の仕組み」
移住・交流推進機構「地域おこし協力隊クラウドファンディングとは」
https://www.iju-join.jp/chiikiokoshi/projects_about.html
ライター/入船みみ
女性のための金融の学びコミュニティ「きんゆう女子」編集部メンバー。綺麗に賢く年を重ねたいアラサーOLです。複業で金融・キャリアをテーマにライターのお仕事をしています。興味のあることを学んで、経験して、記事としてアウトプット。読者の方の心に響き、行動したい!と感じてもらえると嬉しいです。