東京青山で、長い間ファッションを先導してきたビルが解体され、このベストな跡地に何ができるのだろうと心待ちにしていました。そして、時が経ち、工事が始まり、誕生したのはとびきりお洒落なホテルでした。

ホテルの建つ場所は、ファッションのメッカ、カルチャーの発信地として知られる通称‛青山通り’の国道246号と、通称‘キラー通り’の外苑西通りが交差する青山2丁目の交差点です。昔からこのエリアを知る人であれば、東京のファッション複合ビルの先駆けとなった「旧青山ベルコモンズ」(1976年開業)を知らないはずはなく、「ベルコモ1階で待ち合わせ…」などは、お洒落な人の常とう句のようでもありました。そして2020年8月5日、ホテル「THE AOYMA GRAND HOTEL 」がいよいよドアを開けたのです。

三菱地所の複合商業施設として青山の新ランドマーク「the ARGYLE aoyama(ジ アーガイル アオヤマ)」が少し前の7月1日に開業し、ホテルはその施設内にオープンとなりました。地下鉄の外苑前からは徒歩3分という、アクセスの良さも嬉しい限りです。

パリやNYなど、海外のブティックホテルで見かけるレストランとの一体型レセプション。チェックイン・デスクも併設。

「The BELCOMO」のクラシカルな内観。オールデイダイニングで、宿泊ゲストはここで朝食(和食、洋食)も。1日中賑わう人気のレストラン。

新型コロナ感染症蔓延の中、オリンピック・パラリンピックの延期など、今年は東京に限らず世界中で予想外のことが起き、地球上のあらゆる予定が狂ってしまったと言っても過言ではないでしょう。このホテルも同様に、当初の予定より少し遅れての開業だったといいますが、いざ開業したホテルは、想像以上のハイセンスな趣と、丁度いい規模の大きさの洒落たブティックとして、オープン以来すぐに人が集まるホテルとなりました。さらに、部屋数が42室と小さいながら、レストランが4か所も入り、その充実とクオリティの高さでゲストをリピートさせています。

スタンダードクィーン(51㎡)、シティビューの客室。他に、ガーデンビューもあり。どの客室もアメニティや家具調度品は高品質で快適。

コーナーシティビュータイプの246スィート(61㎡)・エントランスホール、ミッドセンチュリーをイメージさせるインテリア、大理石のバスルームなど開放感。246通り沿いの246スイートツイン、表参道を望むAOYAMAスイートキングが揃う。

中庭に植えられている竹の林。ガーデンビューの客室はこの竹林に面している。

ホテルはビル内の7フロアを占めています。運営は、レストランやホテル運営で高い定評のあるPlan・Do・See。東京初のホテル出店として、地域性や、感度の高い人々がいるエネルギーに溢れたホテルを目指したと言います。

コンセプトは‘ミッドセンチュリー’です。館内も、客室も70年代のビンテージマンションのような造りが、現代にはかえって新鮮に見えます。客室内には上質で快適な家具アルフレックスが置かれ、竹製のベッドフレームが美しい「岩田寝具社」マットレス/”KAGUYA KOKOCHI”を使用するなど、懐かしさと新しさの入り混じったアパルトマンのような印象が、「家に帰った」と思わせる安堵感に繋がっているのではないでしょうか。


トラットリア「ANDREA ROSSI」で提供される肉料理と旬の野菜料理、アスパラガス。四季折々の旬の旨味を新しい形のイタリアンに。

もともと日本中に多彩なレストランを運営するPlan・Do・Seeだけに、館内に揃う数々のレストランは、前述の通り、それぞれが美味しいのです。もとのベルコモンズというビル名に因んだ「The BELCOMO」は、世界中の料理を昇華させたオールデイダイニング、そして最上階にはイタリアンダイニングのトラットリア「ANDREA ROSSI」、カウンター和食「SHIKAKU」、さらに1店舗だけはテナント「青山 鮨かねさか」が江戸前寿司を提供しています。

ルーフトップのイタリアンレストランにはラウンジバー、「The Top.」が併設されており、都心の青山地区を一望できる大人の空間が造られています。ホテルは、未来に向けて「街と共に盛り上げていきたい」と語っています。間違いなくそうなってくれるでしょう、すでに、多くのお洒落な人々の集まるラウンジバーとなり始めました。

イタリアンレストランに隣り合うルーフトップバー「The Top.」。都心の夜景を見ながら、エレガントな大人の時間をテラスで。

取材・文/せきねきょうこ

Photo: THE AOYAMA GRAND HOTEL

せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数、現在、新刊出版を準備中。
http://www.kyokosekine.com

DATA

THE AOYAMA GRAND HOTEL

東京都港区北青山2丁目14-4
https://aoyamagrand.com/

☎(03)-6271-5430

客室数:全42室 室料:客室料金:60,000 円~120,000 円 (税込)
要問合せ宿泊プラン有

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