「東京ひとりごはん」は、“ひとりでも妥協なし、きちんと美味しいもの”をテーマに、ひとりごはん&お酒の良質な空間を紹介してきました。今月は番外編として、“お家で楽しむひとりの時間”をテーマにお届けします。

クラフトビールの量り売りで

家飲みデビュー

東京は今、ビールが恋しい季節。そしてタイムリーにも、クラフトビールの量り売りを始める店が増えている。つまり、驚くほど家飲みビールの選択肢が広がっているのだ。この絶好のチャンスを見逃す手はないでしょ、というわけで、ぜひクラフトビールをお持ち帰りしてみたい。

ナイトオウルのロゴ入りオリジナルグラウラー。ガラスのボトルは匂 いが付きにくいのが特徴。ステンレスのものは保冷効果がある。

ビールの量り売りという文化は、マイクロブリュワリーがあちこちに点在するアメリカ西海岸のポートランドなどでは当たり前なのだとか。そんな本場で使われているのがグラウラー(グロウラー)という容器。最近は日本でも人気が出始めていて、アイテム数も増えている。そこで恵比寿にあるナイトオウルの小菅一範さんに、グラウラーや量り売りについて教えてもらった。

「グラウラーはビールを持ち運ぶ耐圧の容器です。炭酸を入れるために作られているので、炭酸が抜けてビールの味を損なうことがなく、また炭酸のせいで容器が破裂するという心配もありません。保冷効果があるグラウラーを水筒として併用する方も多いですよ。繰り返し使えるのでエコの観点からも注目されています」と小菅さん。

ナイトオウルで扱っているグラウラーは、オリジナルを含めて30種類以上もあるそう。サーバーが付いた大容量のサイズから、数百ミリリットルまで様々な容量があるので、用途で選ぶのがおすすめという。 「家で飲むなら、水筒としても使える小さめのサイズが便利ですよ。最近は400mlくらいの飲み切りサイズがとくに人気です。サーバー付きの大きいサイズはピクニックなど、外に持ち出す時にいいですね」。

ビールを注ぐサーバーがついたグラウラーはアメリカ製。容量は約2リットルと大きいので、アウトドアやホームパーティなどで活躍してくれそうだ。

今までは店内でしか飲めなかった樽生のクラフトビールを、気軽に家に持ち帰れるのはなんとも楽しいこと。しかしまだスタートしたばかりのシステムとあって、提供する飲食店に向けていくつかの注意点もあげられている。参考までにこちらでも紹介しておこう。

まず、持ち込みのグラウラーは、ビールを注ぐ前に提供する店側で必ず洗浄することが基本になる。ペットボトルは使用済みのものは避け、店で用意した新品のみを使うこと。こうした配慮で雑菌によるビールの品質低下や汚染を防ぐことができるという。購入する側でも、こうしたルールを知っていればよりスマートに量り売りを利用できそうだ。

さてそれでは、次は東京でクラフトビールの量り売りができる個性的な3軒をご紹介したい。

東京でのクラフトビールの

量り売りはここから始まった


2014年オープンのこちらは、ひと足早くグラウラーを導入し、樽生ビールの量り売りをスタートさせた。いわば東京のクラフトビール量り売りの草分け的存在。店主の小菅さんの感性で絞り込んだマニアックなクラフトビールの他、ワインやシードルなどの量り売りがあるのもユニーク。販売する様々なサイズのグラウラーのほか、手持ちのグラウラーの持ち込みにも対応してくれる。その他、その場で缶に詰めるクラウラーやコーヒーのように気軽に利用できるプラカップのなどがあるのも便利。店内の量り売りの飲料はすべて有料試飲(500円~)可能だ。量り売りは180~550円(100ml)


プラカップはコーヒーのように気軽に持ち帰れる。 250ml、370ml、500mlの 3サイズある缶はプレゼントにも人気があるそう。長野で栽培する自家製ホップも収穫時期には販売される。

Liquor Shop NIGHT OWL

リカーショップ ナイトオウル

住所:東京都渋谷区恵比寿1-8-3-103

電話:03-6277-3743

営業時間:15:00~21:00 金15:00~22:00 土曜・日曜13:00~20:00

定休日:不定休


美味しいビールへの技を秘めた

スタイリッシュな量り売り専門店


店主の金井圭司さんは大のビール好き。本場ポートランドのようなスタイルを取り入れて、量り売り専門店を作りたかったという。でもそれだけじゃないのがここの面白いところ。必殺技はグラウラーへのビールの注ぎ方にある。カウンターに備えたロシア製の機器で、瓶内に圧を加えながらビールを注ぐ。これは瓶内の酸素を二酸化炭素と窒素の混合ガスに入れ替えるため、充填時の酸化を防ぐ優れものだ。さらにもうひとつ裏技的に面白いのが、ビールサーバーの二酸化酸素に窒素をブレンドできること。窒素をブレンドすると泡がクリーミーになるので、主に黒ビールにおすすめの方法とか。それぞれのビールの味わいによっても配合を変えるというのだからお楽しみは無限大。常時18種類のビールはテイスティング(有料)ができるので、まずは好みのビールを見つけることから。フィリング(量り売り)32オンス1650円~(容器別)


グラウラーにビールを詰めるロシア製の機器。SF映画に出てきそうなミステリアスなビジュアルだ。オリジナルのグラウラーはガラス製で2サイズを用意する。

TAP&GROWLER

タップアンドグロウラー

住所:東京都世田谷区北沢2-33-6 飯嶋ビル1F

電話:03-6416-8767

営業時間:15:00~24:00 

定休日:なし


フレンドリーな雰囲気の中で

ビールとフードで世界一周の旅


ビアバー出身のおたけさんと妻のケイさん。この二人が世界一周の旅から戻って開いたのが陽気なパブ。ここでは旅で学んだ様々な国の料理を紹介している。名前からは全く中身が想像できないトルコ料理「坊さんの気絶』なんてものから、みんな大好き「スリランカカレー」など、現地で食べて学んだ味を再現する。レギュラーメニューの他に日替わりもあり、行くたびに新しい国の料理に出会えるのも魅力。生ビールは4タップに加えて、瓶ビールなど世界のビールが約80種類。料理と合わせて、見知らぬ国の食カルチャーを体験するのも楽しそう。店内での飲食の他、ビールの量り売りは220円~250円(100ml)。グラウラーの販売やフードのテイクアウトは要問合せ。


店内で販売するグラウラー。プラカップや小瓶なども用意されている。テイクアウトのフードは世界のおつまみ3種セットなど、その日で内容が変わる。


Hitch×kakeru

ヒチカケ

住所:東京都台東区上野6-2-2 ライフビル2F

電話:070-1305-1254

営業時間:17:00~22:00(フードLO21:00、ドリンクLO21:30)

定休日:月曜


新型コロナウイルスの感染拡大を受けて始まった特例措置により、税務署へ申請することで飲食店でも最大6ヶ月間の期間限定で一般小売ができるようになった。クラフトビールの量り売りが増えているのもこのことがきっかけとなっている。またそもそも賞味期限が短い樽生のクラフトビールは、飲食店の休業に伴って一時は廃棄するしかないところへ追い詰められていた。そうしたビールを募ってジンを蒸留するというプロジェクトが始まったり、クラフトビールの量り売りができるようになったり、窮地にあったクラフトビールにも救いの手が伸びている。

そんなクラフトビールへの応援の気持ち込めて、この夏はクラフトビールの量り売りを楽しんでみては。


※営業時間は緊急宣言中のものです。来店時は事前に店舗にご確認ください。

※掲載価格は税別価格です(2020年6月現在)

(取材&文・岡本ジュン)

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