クリエイティブディレクターとして、山梨・河口湖に佇むカーサミア河口湖のリニューアルプロジェクトや表参道Palazzo Molteni Tokyoの移転オープン時にテーブルウェアのコーディネートを手掛けてきた保科和賀子さん。

アルフレックスジャパン代表取締役社長・保科 卓さんの妻でもあり、以前は二拠点での暮らしについてインタビューにお答えいただきました。

「二拠点生活で考え方がもっと自由に」W Style主宰 保科和賀子さん

今回は、2026年3月にローンチしたテーブルウェアブランド「HOSHINA Tableware」への想いをお伺いしました。

若い世代へ届けたい、器のある暮らしの魅力

――ブランドを手掛けるきっかけを教えてください。

私自身、器を扱う家に生まれ育ちました。父の代の頃、アルフレックスが「オレンジハウス」という雑貨部門を持っていて、先代のファウンダー保科 正さんから「無地のお茶碗を作ってほしい」と依頼があったそうです。無地が売れないと言われていた時代でしたが、父はあえて挑戦し、そこからご縁が続いていきました。

そんな環境で育った私は、器もインテリアもいつも身近にありました。作家の器を試したり、土鍋の使い心地を確かめたり、インテリアについてお酒を飲みながら語り合ったり。それが日常で、その空気がとても好きでした。そうした時間の中で、食卓は器と家具が出会い、暮らしの風景が生まれる場所だと感じるようになりました。

さらに、アルフレックスがキッチンブランド〈ダーダ〉を扱うようになった際のイベントでテーブルセッティングを任せてもらうことに。そこから、また違う角度で器と関わるようになりました。
そうした積み重ねの中で、これから家を持つ若い人たちにも“家で食べるご飯っていいよね”と感じてもらえるテーブルウェアを提案したいという思いが芽生え、ブランド立ち上げへとつながっていきました。

――改めてブランドコンセプトについてお話いただけますか。

私たちのブランドコンセプトは「自然と伝統に基づく、現代的なコスモポリタニズム」です。まず大切にしたのは“自然の美しさ”。自然に触れたときに心がほどけるような感覚は誰にでもありますよね。そしてもうひとつが“伝統”。世界には土地ごとに受け継がれてきた多様な文化があり、時代の変化で姿を変えるものもありますが、本当に大切なものは残り続けています。

そうした自然や伝統に敬意を払いながら、現代の暮らしに合う形で新しく解釈し、日常を少し楽しく、豊かにするテーブルウェアを提案したい──そんな想いを込めています。

“コスモポリタニズム”という言葉は少し耳慣れないかもしれませんが、民族や国境を超えて、人類全体をひとつの共同体として捉える考え方です。

私自身、2005年から2008年まで家族とロンドンで暮らしていました。ロンドンは本当に多様な文化が共存していて、肌の色も言語も違う人たちが当たり前のように暮らしている。背景が違っても互いを尊重し合う姿に、地球はひとつなんだなと実感する瞬間がたくさんありました。

テーブルの上は、そんな自由さを一番楽しめる場所。海外で出会った器と日本の作家の器を並べてみたり、まったく違う作家同士の作品を組み合わせてみたり。その対比から新しい空気が生まれることもあります。そういう小さな発見が、暮らしをもっと豊かにしてくれると思うんです。

――新しいことを始める時、インスピレーションの源泉はどこにあるのでしょうか。

私の場合は日常の中にあります。自宅は家具やインテリアが常に入れ替わる“実験場”のような場所で、新しい家具が来たり、アートを掛け替えたり、器を置き換えたりするんです。そこに光が差し込んだ瞬間や、人の気配が重なった時に「美しい」と感じる瞬間があるんですよね。

朝のコーヒーをお気に入りのカップで飲むだけでも、トーストを好きなお皿にのせるだけでも、忙しい日常の中で自分を元気にしてくれるかけがえのない時間になる。 そういう瞬間を伝えたいという思いが、自然と形になっていきます。

――ブランドを始めて感じていることはありますか。

できる範囲で地球に優しい形を選びたいと思っていて、ソファを作るときに出る端切れを分けてもらい、それをタグにしてラッピングに使うなど、無駄を出さず循環させる工夫を続けてきました。ありがたいことに、お客様もその思いを受け取ってくださってそのタグをネックレスにして使ってくださる方までいるんです。ものを大切にしながら育てていく感覚が、ちゃんと伝わっているんだなと感じます。

器も同じで、欠けたり割れたりしても金継ぎを施すことで、より自分らしい一品に育てていくことができます。だから今後は、金継ぎのワークショップも開いていきたいと思っています。

作家との対話を重ねて生まれた器たち

――今回、協働された作家について教えてください。

中里健太さんは歴史ある唐津焼のファミリーで生まれ育ち、お料理やワインもお好きな、30代の若い作家です。工房には三つの蹴ろくろがあって、お祖父様・お父様・健太さんが並んで作業している姿は圧巻です。何度も窯に伺っては、次の世代が器とどう向き合うのかを語り合いながら、一緒に形にしていきました。

健太さんの三島模様は唐津の黒土を使い、スタンプのように模様を入れ、その上から白い化粧土を塗り、表面だけを削いで模様を浮かび上がらせる。さらにもう一度焼くという、とても手間のかかる技法です。

彼自身も「この技術を次の世代に繋ぎたい」という強い思いを持っています。

刷毛目のものも面白く、これは藁を使った技法で、藁粉と白い化粧土を器にくるくると回しながら重ねていくんです。ただ、この淡いピンク色は狙って出せるものではなくて、窯の中の酸素の状態によって偶然生まれる色なんです。まさに一期一会の表情ですね。

Keicondoさんは独特な黄色の釉薬を使う作家さんです。この黄色は、彼がJICAの青年海外協力隊としてボリビアに派遣されていた時に出会った自然の色から着想を得て作られたものなんです。当時、アフリカの方々に陶芸技術を教え、自立を支援する活動をしていたそうで、その土地で見た色彩がこの黄色の源になっています。

実はこの黄色、昔は「失敗作」と言われることも多かった色なんです。カジュアルに見えるからと、割ってしまう作家もいたほど。でもKeiさんは「食べ物が乗るとすごく良い雰囲気になる」と信じていて、私たちもその考えにとても共感しました。Keiさんの黄色は温かさがあって、形のセンスも抜群。まるで木のような風合いもとても魅力的です。

――リネンについても教えてください。どのように作られているのでしょうか。

リネンは山梨県富士吉田市で80年の歴史を持つリネン専門ファクトリーTENJIN Factoryにお願いしました。
先に糸を染め、その藍染めの糸を縦糸に、横糸には生成りのリネンを使って織ります。そうすると、縦と横の色が混ざり合って“シャンブレー”と呼ばれる独特の表情の生地になります。古いシャトル織機で織るので、端に“セルビッジ(耳)”が生まれるんですね。ジーンズの耳付きのようにヴィンテージ感のある特徴的な部分で、あえてその耳を残して仕立てています。触れると本当に気持ちよくて、「これでパジャマを作りたい」と思うほどです。

食卓のコーディネートをもっと楽しく豊かに

――みなさんにブランドのアイテムをどのように使ってほしいですか。

今回協働した作家同士の作品の組み合わせはとても素敵です。でもこのコレクションだけを使ってください、というものではありません。今持っている器と合わせて、新しい発見を楽しんでほしいんです。それも特別な日ではなく、日々の食卓の中で自然に使っていただくことで、その魅力がより感じられるものだと思っています。

朝の簡単な食事や家族との夕食、友人を招いた食卓など、さまざまな場面の中で自由に使っていただいて日常の時間が楽しく豊かなものにることを願っています。

――ブランドとして今後の展望を教えてください。

HOSHINA Tablewareは、少しずつ丁寧に育てていきたいと思っています。今回ご一緒した作家との対話を続けながら、必要なものを増やしたり、逆に減らしたり。また、新しい作家たちの作品も増やしていきたいと考えています。

若い作家を海外に紹介することも夢のひとつ。ミラノやパリ、ロンドンで小さなポップアップを開いて、響く人に届けたいと思っています。器だけではなく、食卓を囲む時間や空間の豊かさも含めて、HOSHINA Tablewareならではのライフスタイルを提案していきたいですね。

保科和賀子さん

HOSHINA Tablewareクリエイティブディレクター。アルフレックスジャパン代表取締役社長・保科 卓さんの妻であり、アルフレックスカーサミア河口湖のリニューアルプロジェクトなどのテーブルウェアのコーディネートを手掛ける。

Instagram:@wakasw19

HOSHINA Tableware HP:https://www.hoshinatableware.com/

読者プレゼント

HOSHINA Tablewareの以下の商品をセットにし、抽選で1名様にプレゼントします。ぜひ、ご応募ください。

応募フォーム▶https://sumau.com/base-form

・中里健太:22cm 刷毛目皿

・Keicondo:スモールボウル

・TENJIN-Factory:藍染めプレースマット

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