ウィーンで暮らし、音楽と文化に日々触れているソプラノ歌手・田中彩子さん。 そんな田中さんと共に、東京都内でウィーンを感じる場所へ出かけました。
訪れたのは、ウィーンの老舗カフェ「CAFE LANDTMANN」唯一の海外支店「カフェ ラントマン 青山店」、そして歴史の中で磨かれてきた職人の手仕事を伝えるクリスタルブランド「ロブマイヤー・サロン」。 東京にいながら、ウィーンの気配と美意識に触れられる時間が広がります。
ゆったりと時間が流れる「カフェ ラントマン 青山店」

カフェが生活に溶け込む街
ウィーンでは、カフェは日常の延長にある存在です。ひとりでゆっくりしたいときも、打ち合わせの場としても、友人と会うときも、自然と足が向く。家とは違うけれど家の続きのようにくつろげる。そんな空気がウィーンのカフェにはあります。

街中にカフェがあって、ウィーンの人たちは「じゃあ今日は〇〇で会おうね」というふうに、カフェの名前をそのまま待ち合わせ場所として使うんです。 私は「そのカフェどこ?」と調べるんですけど、現地の人は名前を聞けばすぐ場所がわかる。それくらい、カフェが生活に染みついているんだなと感じます。

中でも「CAFE LANDTMANN」は、誰もが知っている老舗のひとつ。身近な存在でありながら、どこかエレガントな立ち位置で、少し大事な打ち合わせにも、今日は優雅に過ごしたいなという日にも選びたくなる場所です。市庁舎の向かい、公園の緑が広がるウィーンらしいロケーションも魅力です。
近くには演劇で有名なブルク劇場もあり、俳優や演劇関係者の姿もよく見かけます。場所柄、芸術家から官僚まで、さまざまな人が集うカフェです。
青山のこの店舗は、東京のモダンな景色と、ウィーンのトラディショナルな食べ物が自然に融合していて、そのバランスがとても面白いなと思います。

コーヒー文化が映すウィーンの感性
マリレンパラチンケンは、あんずジャムをたっぷり塗って巻いたクレープです。
前回、ご紹介したカイザーシュマーレンともつながるんですが、伝説的に言われているのが、もともとはこのパラチンケンをエリザベート皇后のために作ろうとして、失敗して崩れたものがカイザーシュマーレンになった、という説。裏付けが残っているわけではないですが、よく語られるエピソードです。そんな逸話があるほど時代を超えて愛され続けているウィーンの定番スイーツです。

ウィーンのコーヒーは種類が多くて、特にこのラントマンはとてもメニューが豊富です。ブラックはもちろん、ミルクたっぷりのものや、生クリームがのったものまでさまざま。バリエーションが多く、毎日行っても飽きません。

今日はアイシュペンナーを選びました。ウィーンの生クリームは砂糖が入っていないので、好みで甘さを調整できるのも魅力です。

そして、夏にウィーンっ子がみんな頼むのがアイスコーヒーにアイスクリームがのった「ヴィナーアイスカフェ」です。基本的には、冷たいコーヒーがないので、冷たいものを飲みたい時は、これを頼むことが多いですね。ウィーンでは、アイスクリームの上にさらに生クリームがのっていたりします。

ウィーンのカフェには、あの“混んでいるから早く出なきゃ”という空気がまったくありません。どこへ行っても、一人でのんびり過ごしている人がたくさんいて、静かにコーヒーを楽しむ時間が自然と受け入れられている。この青山店でも、そんな空気を感じられました。
カフェ ラントマン 青山店
「CAFE LANDTMANN」 は1873年10月にFranz Landtmann氏によって“ウィーンで最もエレガントなカフェ”として誕生。ウィーンの中心部から少し離れたリング通りに位置しており、創業以来、多くの著名人や社交界・政界の要人たちに愛される歴史ある名門カフェハウス。 1976年には現オーナーQuerfeld家に引き継がれ、今なお街の人々や観光客に憩いの場として親しまれる。 その唯一の海外支店である青山店では、ウィーン本店を忠実に再現した優雅な空間で伝統あるウィーン料理を提供。
住所:東京都港区北青山3-11-7 AOビル4F
TEL:03-3498-2061
時間:[月~金] 11:30~22:00、 [土・日・祝] 11:00~22:00
定休日:不定(施設に準ずる)
HP:https://www.giraud.co.jp/landtmann
空間を彩るシャンデリアの世界を堪能するロブマイヤー・サロン

ウィーンの街を照らしてきたシャンデリア
1823年、オーストリア・ウィーンで創業したロブマイヤーは、ハプスブルク家御用達として知られ、その歴史から以前のエッセイでも書いたウィーン分離派やモダン・デザインとも深い関わりをもつクリスタルブランドです。レストランで使われるグラスや、数々の建物を彩るシャンデリアなど、ウィーンではとても身近な存在でもあります。

ウィーンでは、ロブマイヤーのシャンデリアを本当によく見かけます。ムジークフェライン(楽友協会)やオペラ座など、ありとあらゆる重要な建物のシャンデリアはロブマイヤーのものなんです。
そうした文化が根付いているせいか、ウィーンでは大豪邸というわけではなくても、マンションのお部屋にシャンデリアが飾られていることが多くあります。

日本だとシャンデリアは少し特別なものに感じるかもしれませんが、意外と普段の生活になじむと思うんです。部屋にひとつメインであるだけで、空間がぐっと幸せな雰囲気になります。もちろん「どうぞお家に」と簡単に言えるものではないけれど、憧れながら過ごすというのも、とても素敵なことだと思います。

私もシャンデリアに憧れる一人。もし、私の家のリビングにシャンデリアがあったら。きっと嫌なことがあっても「私にはシャンデリアがある」と、勇気づけられるくらい、この美しさには力があると思うんです。
手仕事が支える、普遍の美

こちらのテーブルランプも、周囲のガラスのかざりがゆらゆら揺れるのも、見ていて飽きません。夜になるともっと陰影が綺麗でしょうね。普遍的なのにモダンで、どの時代にもマッチするデザインの最高峰だと感じます。
長いウィーンの歴史を見てきたものと考えると感慨深いものがあります。


日本でも、グラスは有名だと思いますが、ウィーンでは名前が知られすぎているために、ロゴを入れていなかったそうです。そして、教えていただいたのは、これだけ薄く繊細に見えるのに、多少の衝撃では割れないという丈夫さも魅力です。

このグラスの柄、本当に細かい部分まで描かれていて、感動します。
ウィーンでもお店を訪ねたことがありましたが、改めてこうしたクラフトマンシップの素晴らしさに触れて、ぜひ、工房を覗いてみたいと感じました。

ロブマイヤー・サロン
創業与200年以上もの間、受け継がれる伝統を守りながらも、新たな技術を取り入れ、ガラス工芸の魅力を現代へと伝え続けている。テオフィル・ハンセン、ヨーゼフ・ホフマン、アドルフ・ロースといった名だたる芸術家が手がけた名作の数々は、ウィーンのMAK(応用美術館)やニューヨーク近代美術館のデザイン・コレクションなど、世界の主要美術館に収蔵。
青山のロブマイヤー・サロンは日本の総代理店。さまざまなグラスがそろうほか、「室内空間のアート」をコンセプトにしたシャンデリアは、部屋の大きさや天井高などからプロがアドバイス。自由にデザインを選んで、受注生産が可能。
住所:東京都港区南青山4-11-14
TEL:03-3423-4552
営業時間:12:00~18:00
休業日:月・火・日・祝日
Instagram:@lobmeyrjapan

田中 彩子さん
18 歳で単身ウィーンに留学。 22 歳でスイスベルン州立歌劇場にて同劇場日本人初、且つ最年少でのソリスト·デビューを飾る。
その後ウィーンをはじめロンドン、パリ、ブエノス・アイレス等世界で活躍の場を広げている。
ソプラノの中でもさらに高い音域のコロラトゥーラは透き通るような歌声が特徴 で「天使の声」と称され、その歌声を操る数少ない一人。
2019 年 Newsweek 誌 「世界が尊敬する日本人 100」 に選出。アルゼンチン最優秀初演賞受賞。イギリス BBC ミュージック・マガジンにて 5 つ星を受賞。
ブエノス・アイレスのムジカ・クラシカマガジンの表紙を飾る。
《彼女の声は素晴らしいアジリティと本物の叙情的な美しさを持っている》
– イギリス ミュージックウェブ・インターナショナル
《田中は華麗なる鋭敏さと透明さを誇る声だ》
– アメリカン・レコードガイド
広島 AICJ 中学・高等学校理事長。
ウィーン・東京在住。
オフィシャル HP:https://www.ayakotanakaofficial.com/
【公演情報】
公演日:2026年5月22日(金)
開場 18:30 / 開演 19:00
会場:浜離宮朝日ホール(東京都)
公演タイトル:AYAKO TANAKA ≪MANIAC≫ Vol. 2













