紹介する街●辻堂
【ワインバー】
友人が訪ねて来たら連れて行きたいお気に入りの店が誰にでもひとつはあります。街の人々に愛される店こそ、胸をはって紹介したい“わが街の味”。この連載では、そんな街で人気のお店を紹介しています。今月は湘南の街・辻堂の人気店。週末のプチトリップにもぴったりな寛ぎの場所です。
美味しい料理といいお酒、音楽が揃う場
夏の終わりに、最後の小さな旅行気分で湘南を訪ねてみるのはどうでしょう。都心から電車で1時間、海も近い神奈川県藤沢市辻堂は、大きなショッピングモールもできて「住みたい街」として人気がある。
そんな辻堂の駅から3分ほど歩くと、ナチュラルワインやクラフトビールが飲めるワインバー『MONK』がある。白い外観は、ワイン樽をテーブルにしたテラス席がおしゃれな雰囲気。でもドアを開けると目に飛び込んでくるのは、鏡張りの壁や赤いベルベットのソファというギャップが面白い。実はここ、元はスナックだったという。
「内装の話になったとき、この赤いソファーがすごくきれいに残っていたので、これをそのまま使おうというのがこの内装のアイデアの源泉になっています」と笑うのは店主の玉井大さん。
元スナックという逆境(?)を逆手にとり、アイデアでそれをうまく生かすという発想が、この店にどこにもない個性を与えている。
ちなみにカラオケのステージは、可憐な小部屋に変身させていて、インスタ映え(?)も最高。一方のカウンター側はナチュラルなテイストで、この二つの世界観がうまく共存している。
「あ、ここ楽しそう!」。ファーストインプレッションにそんなワクワク感があるワインバーってそうはないかもしれない。
カフェで働きながらDJをしていたという玉井さんは音楽で食べていく道を模索していたとか。でも28歳の時に自分の店を持とうと決心し、それからマネージメントや新店の立ち上げなどを学ぶために会社に入った。その経験があったからこそ、大胆な店造りができたともいえる。
出身もこのあたりとあって、最初は鎌倉エリアで店をやりたいと考えていた。シェフの石井優克さんとも鎌倉で働いていた時に出会って意気投合したという。
カウンターで黙々と料理を作る石井さんは、イタリアンをベースにワインやクラフトビールによりそう料理を生み出している。「季節を感じられる料理を出したい」と、メニューはそのときの食材によってゆるやかに変わっていく。それだけでなく、どこか親しみやすい要素を加えているのも石井さんの料理の持ち味。
例えば、今回のピーマンの肉詰めのように、ネーミングを聞いただけでパッとイメージがわき、食べたい気持ちに拍車がかかるのだ。実際には中に詰める肉をラムにしたり、スパイスをきかせたりと、軽やかに想像を裏切ってくれるのもお楽しみだ。
もうひとつ、この店のキーワードで重要なのは“人との繋がり”。ワインもクラフトビールも、なにより造り手やそれを扱う人の人柄で選ぶことが多く、気になる食材があれば実際に会いに行くこともためらわない。
「生産者さんと出会うことがあれば、そうしたご縁を大切にしたいと考えています。ワインでも食材でも、その背景とか、思い、人となりなどを伝えていければ」と玉井さん。
「音楽もワインも自分で作ったものではないけれど、例えば音楽なら、それをかけるシチュエーションや順番で印象はぜんぜん変わります。ワインも同じだと思うんです」。
というのはDJの経験がある玉井さんらしい言葉だ。
30代の頃は様々な国を旅したという玉井さん。スペインバスク・サンセバスチャンでは昼飲みの楽しさをバルで発見し、アメリカ・ポートランドでは生産者を支える店をたくさん見たという。そんな旅から学んだたくさんの経験もギュッと詰め込まれた『MONK』。これからも街に育てられ、ますます魅力的な店になっていくのだろう。
MONK
モンク
住所:神奈川県藤沢市辻堂2-8-18
電話:0466-66-6409
営業時間:日曜〜水曜13:00〜22:00、金曜18:00〜24:00、土曜15:00〜24:00
定休日: 木曜、不定休あり
Instagram:@monk_tsujido
※営業について詳しくはInstagramで確認を
※掲載価格は税込み価格です(2023年8月現在)