友人が訪ねて来たら連れて行きたいお気に入りの店が誰にでもひとつはあります。街の人々に愛される店こそ、胸をはって紹介したい“わが街の味”。この連載では、そんな街で人気のお店を紹介しています。今月は、駅前がガラリと変貌遂げた街・下北沢。その一角に現れた、スパイスを使った料理とナチュラルワインが味わえる大人のワインバー『ベルプリ』をご紹介します。
紹介する街●下北沢
【ワインバー】
スパイス料理でつなぐユーラシア大陸横断の旅
駅前の再開発で目覚ましく変わった下北沢は、以前の若者優位の街というイメージから少しずつ脱却しつつある。そんな街のムードに乗って、大人が通いたくなるレストランがチラホラと登場し、街の生まれ変わりが進行中だ。
今回紹介するこちら『ベルプリ』は、２０２２年のオープンから話題を呼んだ注目店。雑多な南口エリアにあるが、細い袋小路の行き止まりという落ち着いた立地で、隠れ家的な要素も併せ持っている。ガラス張りの店内はシンプルなインテリアで、大人がひとりでふらりと入って寛げるような雰囲気なのだ。
「ワインはグラス1杯からでも、軽く食べたい2軒目使いでも、気軽に来て欲しいですね」と言うのは、ソムリエであり、料理人でもある店主の小師直樹さん。
実はここ、千歳船橋にあるインド料理の人気店『カルパシ』のスピンオフ的な存在でもあり、カルパシのオーナーと小師さんが意気投合したことをきかっけに生まれたのだという。同じくカルパシの兄弟店として人気のカレースタンド『カリースパイス ジェラテリア カルパシ』が隣にあるという立地なのだ。
『ベルプリ』という聞きなれない店名は、インドの軽食の名前。パフライスにじゃがいもや玉ねぎ、スパイス、タマリンドなどを混ぜた屋台の味は、実はお酒にもぴったり。単品がメニューにもあるが、『ベルプリ』では最近はお通しで出すことも多いという。
店名はインドだが、メニューはインド料理が主役というわけではない。東南アジア、インド、中東、はては地中海と幅広い地域のエッセンスを取り入れているという。小師さん自身もタイ料理店に長くいたことがあり、自身もエスニックが大好き。スパイスを使った料理を選んだのは、そんなことも理由だという。そもそもワインはスパイスのニュアンスを含んだものも少なくないので、こうしたスパイスをアクセントに使った料理との親和性は抜群だ。
中東のミックススパイス、デュカが添えられている。
「とくにナチュラルワインとの相性はいいと思っています。最近増えているオレンジワインもエスニックな味にはよく合いますよ」と小師さん。
全体としてはワインに寄せているため、辛さは少し控えめ。ところどころマニアックなメニューも忍ばせているが、おおむね食べやすくアレンジされている。
例えば、この日のフムスは、ビーツの風味をプラスしたもの。ひよこ豆をペーストにしたフムスは、ピタパンなどにつけて食べるイメージだが、パンだとすぐにお腹がいっぱいになってしまうので、野菜につけて食べるサラダ感覚に仕上げている。
辛いもの好きにおすすめのインド風唐揚げ。おひとり様ならハーフもオーダーできる。
ほかにも、タイ料理の『ラープムー』があるかと思えば、ギリシャ料理の『ムサカ』があったり、パスタも食べられたりと、ふり幅が広いのも頼もしい。
とくに、インドの唐揚げといわれる『チキン65』は、かなりホットな辛さで本格的。こちらはウェットスタイルと呼ばれる、スパイシーなソースを絡めた『カルパシ』と同じスタイルだという。
若者が多く、演劇や音楽などのカルチャー色も強い下北沢だが、周辺には高級住宅街が広がっているので、実は大人も多く住んでいる。そんなワイン好き、おいしいもの好きの大人達がこの店の噂を聞きつけて集まってきている。
「下北沢は大人の居場所がない街といわれていますが、この店がそういう大人にくつろいでもらえる場所になれたら」と小師さんは笑顔で話す。
大人も過ごせる街に進化中の下北沢はこれから注目だ。
BhelPuri
ベルプリ
住所：東京都世田谷区北沢2-12-2 サウスウェーブ下北沢1B
電話：080-9447-3004
営業時間：17:30～23:30(22:30LO)
定休日： 不定休 ※Instagram：@bhelpuri_shimokita参照
※掲載価格は税別価格です（2023年12月現在）
取材＆文・岡本ジュン 撮影・マツナガナオコ
