友人が訪ねて来たら連れて行きたいお気に入りの店が誰にでもひとつはあります。街の人々に愛される店こそ、胸をはって紹介したい“わが街の味”。この連載では、そんな街で人気のお店を紹介しています。今月は 神楽坂の人気スパニッシュ『エスタシオン』のシェフが手がける『オリ』。神楽坂に新しい風を吹き込むワインバーです。


紹介する街●神楽坂

【ワインバー】 


裏坂の人気店シェフがてがけるワインとお惣菜が楽しい


神楽坂の中でも小栗横丁はたくさんの飲食店が連なるメインストリートの1つ。時代と共に神楽坂の新陳代謝は少しずつ進んでいるが、この細い路地は懐かしい神楽坂の情景をいまだ色濃く残している。中ほどには通りを象徴する宮造りの銭湯『熱海湯』があり、その並びにワインバー『オリ』がある。



和風な街にひょっこり現れるキュートな外観。


店名の『オリ』はワインの澱のこと。うまみがそっと瓶の底に降り積もった澱は、ワインの1番おいしいところというわけだ。


築70年という古民家を改装した店舗は、年代物の梁が露出した高い天井が印象的。中央に置かれたカウンターは大きなテーブルを囲むような役目を果たしている。木造の空間で、テーブルを囲んで和気あいあいと飲む雰囲気は独特でとてもフレンドリーだ。



カウンターを兼ねた大きなテーブル。左はキッチンになっている。


「若い人が気軽にワインを楽しめる店を作りたかった」というのは店主の野堀貴則さん。『オリ』からも歩いてすぐの芸者小道に『エスタシオン』を構えるスペイン料理のシェフでもある。


「神楽坂は第二の故郷みたいなもの」という野堀シェフは、本田横丁の人気店『エル・プルポ』のオープニングを手掛け、姉妹店『エル・ブエイ』でもシェフを勤めた。神楽坂で過ごすうちに、下町のように親しみやすい人情と、都会的な洗練がほどよく混ざり合ったこの街を気に入って、自身の店『エスタシオン』を開いたという。



                                                                      

『オリ』のおつまみも野堀さんが手がけているが、「スペイン料理というよりもおそうざい」というだけに、シンプルな料理が主流。とはいえ、『ごぼうのきんんぴら』を赤ワインとバルサミコで味付けしたり、スパイスが効いた『なすのケチャップ煮』があったり、センスとひねりがきいた料理は何が飛び出すか分からない楽しさ満載。



おそうざい盛り合わせ 2100円(2名分)
ごぼうのきんぴら、ゴーヤチャンプルー、ポテトサラダ、徳島の味付けのりなど。



鯛の酒盗とブラータ 700円
意外な組み合わせだがこれが絶妙にマッチング。オレンジワインにおすすめ。


地元の『パン・デ・フィロゾフ 』に特注で焼いてもらうという大きなカンパーニュもテーブルの上で存在感を放っていた。「近所に豆腐屋さんがあるので、そこの商品を使った料理もなるべく作りたいなと思っています」とご近所との繋がりが深い神楽坂らしい気遣いも。個性的だが、どこかほっとする「おそうざい盛り合わせ」はワインがスイスイすすんでしまう。



山梨・ボーペイサージュの「ア・ウン」、ボルドーでナチュラルワインを造るシャトー・ド・ベルなどレアなワインも色々。


ワインはナチュラルワインを中心に、スペインに限らず日本を含めた世界中のものが揃う。基本はグラスで、スパークリング、白、ロゼ、赤など常時15種類程度が開いている。さらにガラス張りのウォークインセラーもあり、気に入ったボトルがあれば頼むことも可能。この他に、クラフトジンや日本酒、サッポロの赤星、レモンサワーなどなんでもあるのも気取りがない。



大きなウォークインセラーにワインがたっぷり眠っている。


早い時間から開店するので、夕方早めのアペリティフにもよし、ディナー前のウェイティングバーとして使ったり、飲み足りない時の2軒目使いにしたり、と自在に使えるのも人気の理由だ。支払いはキャッシュレスなのも、パッと一杯ひっかけて帰るにはうってつけ。


21時過ぎには、『エスタシオン』から野堀シェフも合流し、遅い時間は地元住民の常連が次々と現れてますます盛り上がる。コンパクトで温かい神楽坂コミュニティーを感じさせる憩いのワインバーなのである。



ORI

オリ

住所:東京都新宿区神楽坂3-4 河村荘1F

電話:03-5579-8979

営業時間:16:00~23:00

定休日: 月曜、日曜 ※キャッシュレス


※掲載価格は税別価格です(2023年6月現在)

取材&文/岡本ジュン 写真/マツナガナオコ



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