今月来月に公開される劇場作品の中から年末年始におすすめしたい劇場公開作品を紹介します。




ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY




世界中に衝撃を与えた突然の死から10年の月日が経ちました。今でも街を歩けば、テレビを付ければ、彼女の歌を耳にすることが幾度だってあります。

この冬、私たちはそんなホイットニー・ヒューストンの名曲誕生の瞬間についに立ち会えるんです。

グラミー賞を6回受賞し、アルバムやシングルのトータル・セールスは2億枚以上。音楽史にその名を刻む数々の偉業を成し遂げたホイットニー・ヒューストン。

ホイットニーが初主演した映画『ボディガード』の主題歌「I Will Always Love You」。

全米シングル・チャートで 14 週連続 No.1を記録し自身最大のヒット曲となったこの曲を圧巻のパフォーマンスで歌い上げる伝説のライヴシーンもスクリーンに蘇ります。




ほかにも誰もが知る名曲や、スーパーボウルでのアメリカ国歌独唱など、彼女を語る上で欠かせない数々の 名シーンが「ボヘミアン・ラプソディ」で知られる脚本家アンソニー・マッカーテンのもと、壮大にドラマティックに描かれます。

アーティストとして、俳優として、娘として、母として。

伝説の歌姫である彼女のいくつもの顔を描きながら、彼女の人生に肉薄していきます。




物語というのは夢を掴むまでにフォーカスすることが多くあります。

もちろん成功するのは大変ですが、仕事は成功した後のほうが大変だということ、またトップの立場になると頼る人がいなくなるということ…。名曲の裏に隠された彼女の人生に触れると、その曲の歌詞の意味の捉え方が変わるはず。




高品質の音響で味わえる映画館に足を運び、臨場感たっぷりに名曲の数々を全身で体感してほしい!


12 ⽉23 ⽇(⾦)よりTOHO シネマズ ⽇⽐⾕ほか全国の映画館にて公開




離ればなれになっても




「あのとき、ついていっていれば」「あのとき、言い合いにならなければ」「あのとき、あの人の痛みに気付けていたら」―。人生は「あの時、ああしていれば」をいつだって繰り返す。

今過ごしている時間がどれだけ貴重であるか、気づけない。失う時には、わかるというのに。

儚くて、だからこそ、尊くかかげえのない時間。それこそが人生だ。私たちはそのことを定期的に思い出さなければいけない。




イタリアで3週連続1位を記録した『離ればなれになっても』。

ジェンマという宝石の意味を持つ名の女性ジェンマと、彼女にそれぞれことなるかたちで愛を捧げる3人の男たち。4人の男女が16歳で出会った1982年から2022年の40年間という期間の男女の友情の軌跡を追う物語が、とにかく忘れられない作品となりました。

メガホンをとったガブリエル・ムッチーノ監督自身も「この作品のメインエンジンは時間」と話しているように、長期の時間軸を通して、変わりゆくものと変わらないものを描きながら、自分の人生には何が残るか考えるきっかけをくれる映画。作品内で時計がきちんと進んでいくことにリアリティがあります。




鑑賞後というより、鑑賞をすすめていくうちに自分自身が”いま”との向き合い方を模索する。

エンドロールのあとには、自分が大切にすべきものについて、それぞれの答えが生まれている映画です。

また40年間という期間には、イタリア近代史が語られながら進行され、ベルリンの壁崩壊や9・11同時多発テロなど人間の気持ちだけではどうにでもならない歴史や抗えないものがいかに人々を隔てているかについても考えさせられます。




すべての選択に、光と影が存在する。どの道を選んでも良いことだけの道はなく、どの道にも酸いも甘いも生まれていく。善きことと苦難を交互に繰り返すからこそ、喜びも悲しみもわかちあえる仲間がいることが、いかに大切か。


人間関係は、一時でも決別してしまうと、もうその友人とは関係が、縁が、途切れてしまったと感じさせる瞬間が無きにしもあらずだけれど、人はまた時間という糸を紡いで、出会い直す。関係というものは結び直すことができること教えてくれます。

今日のサヨナラは、未来の再会のためにあるのかもしれないと、優しい毛布にくるまれたような気分になれる映画です。

数十年後もう一度、彼らと同い年になった時、この映画との再会を願いたくなるはず。


12月30日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開

配給:ギャガ

© 2020 Lotus Production s.r.l. – 3 Marys Entertainment




非常宣言




飛行機内でバイオテロが発生! 地上と上空で愛する人のために奮闘する人々の姿を描いたフライトパニック映画ですが、2時間半が本当にあっという間です。年始の公開なので、新年が引き締まるようです。


娘とハワイ行きの飛行機に乗ったジェヒョク。離陸後間もなく、次々と乗客が原因不明で死亡し、機内は恐怖とパニックに陥ります。飛行機へのバイオテロの犯行予告動画が公開され、警察や政府が奮闘するものの、ついに機体は操縦不能に。




地上から飛行機テロを解決しようと奔走するベテラン刑事をソン・ガンホ、娘の治療のため飛行機に乗り合わせた乗客をイ・ビョンホンが演じ、韓国映画を代表する俳優の豪華共演は贅沢の極みです。

同時にフライトパニックというストーリーとそこに映画館の非日常感をかけ合わせることで生まれる高揚。

そして、この映画が面白いのが物語前半で「おそらく、こうなるであろう…」と想像できる展開は全て通過してしまうということ。

それでは残りの時間どうするんだろうとなるわけですが、ここが見せどころ。まさに乱気流とも言える未知の領域を迎える展開が待っているんです。




本作の撮影期間は2020年5月30日から2020年10月24日。

パンデミックを実体験として経験した私たちだからこそ、より沁みるストーリーともなっていて、観客にも答えを委ねる演出が映画「ダークナイト」を彷彿とさせます。パニック映画でありながら人間の善悪の本質を問う、真に迫った作品となっています。




飛行機のセットは「新感染 ファイナル・エクスプレス」の美術監督が担当し、直径7M・長さ12Mというサイズで制作され、360度回転可能という韓国映画初の試み。このセットは60日間かけて制作されたそう。

その他にも実際の旅客機の機体や構成部分も使用され、リアリティが追求されて説得力のあるフライト体験ができます。ぜひ、スクリーンで恐怖を乗り越え、この飛行機に乗降してみてください。


2023年1月6日(金) 全国公開

配給:クロックワークス

© 2022 SHOWBOX AND MAGNUM9 ALL RIGHTS RESERVED.




モリコーネ 映画が恋した音楽家




『夕陽のガンマン』『アンタッチャブル』『ミッション』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』『ニュー・シネマ・パラダイス』『ヘイトフル・エイト』―。

とその数はなんと1961年の活動以降、500曲以上。


映画に愛された作曲家・映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネを5年以上かけて密着取材したドキュメンタリー映画『モリコーネ 映画が恋した音楽家』が、素晴らしい。

クエンティン・タランティーノ、クリント・イーストウッド、ウォン・カーウァイ、ダリオ・アルジェントといった錚々たるメンバーのインタビューを通して、モリコーネがどのようにして映画音楽の世界で偉業を成し遂げたのかに、インタビュー形式で迫ります。




どれだけ聴いても飽きることなく、むしろまた別の楽曲を聴いてみたくなる。聴けば聴くほど映画が恋しくなるエンニオの楽曲で埋め尽くされる2時間半。映画の歴史をなぞるように名シーンが続々と登場する。

心を震わせるような旋律からダイナミックに響き渡る楽曲まで、鑑賞後には自分の体内にもメロディが流れているような音楽に満ち足りた時間をくれます。




映画好きにとって、エンニオ・モリコーネという名は神のように崇めたくなる存在ですが、映画音楽が芸術地位としては低く、評価されない不遇の時代があり、それ故、度重なる屈辱を味わってきた瞬間があったこともこの映画で描かれます。否定的な意見をする音楽家がいた時期もあったというのです。そして、これだけ成功をおさめていても彼は何度も何度も引退を仄めかし、映画音楽から離れようとしていたという事実にも驚愕しました。

「彼が映画業界から去ろうとしても、映画が彼を追いかけるのだ」(本編インタビュー映像より)




どこか「やめること」や「無理しないこと」に寛容になりすぎているとも言えるこの時代に、引退を仄めかしながらも必要とされている場所に手を差し伸べ続けたモリコーネ。仕事と相思相愛になれるヒントをこの映画から垣間見た気がします。


2020年7月に91歳で逝去した天才作曲家エンニオ・モリコーネ。結果として本作が、私たちが生前の姿をみることのできる最後の作品になったけれど、この映画では彼が今も生きているようでどこにも不在を感じさせない。

そしてなによりも彼は、映画とともに、永遠に生きつづけるのだと、音楽と人生の余韻に浸る時間を与えてくれます。


2023年1月13日(金)TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

©2021 Piano b produzioni, gaga, potemkino, terras


映画ソムリエ東紗友美(ひがし・さゆみ)

1986年6月1日生まれ。2013年3月に4年間在籍した広告代理店を退職し、映画ソムリエとして活動。レギュラー番組にラジオ日本『モーニングクリップ』メインMC、映画専門チャンネル ザ・シネマ『プラチナシネマトーク』MC解説者など。

HP:http://higashisayumi.net/
Instagram:@higashisayumi
Blog:http://ameblo.jp/higashi-sayumi/



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