何かしら新しいことを始めてみよう。そうなると、真っ先に頭に浮かぶのはチャレンジごと。心の平静を保つために写経を始めようか。スペイン語を学ぶのも良いかもしれない。もしくは思い切って陶芸教室にでも通ってみようかな。


けれども昨年の3月から私が始めたのは2ヶ月に一度の全国津々浦々、名宿巡りの旅でした。ふたりの娘も高校生になり、それぞれに学校行事や友だちとの交友に多忙な様子。そんな最中、私の暮らしに確実に増えていったのが自由時間でした。もともと暇を持て余すのが苦手な性分で、これまでは必要以上に仕事で予定を埋めてきましたが、こんなご時世。家事や育児や仕事と同じくらい、積極的に怠けること、楽しむことを暮らしに取り入れることを決意したのです。


旅の一番の目的は“のんびり”すること。これまでは“のんびり”するというのがどうも苦手でしたが、こればかりは歳なのかもしれません。日々の暮らしの中でオンとオフの切り替えをあやふやにしていると、とてつもなく疲弊してしまいます。だから旅では極力何もしない。宿だけ決めたらその他はノープラン。贅沢に徒然なるままにを楽しむのです。


料理や建築を目的に宿を決め、限られた贅沢な空間で緩やかな時間を満喫する。長野県北佐久郡にオープンしたばかりだったオーベルジュ「THE HIRAMATSU軽井沢 御代田」を皮切りに、河口湖と富士山という雄大な景色を望む「FUFU KAWAGUCHIKO」、三重県伊勢志摩の起伏に富んだ英虞湾の海岸線に佇む「AMANEMU」、美術館とホテルが一体化した直島の「Benesse Art Site Naoshima」などに泊まりました。

直近で訪れたのは栃木県那須郡の宿泊施設「art biotop」。コロナ禍直前の2020年10月にオープンした建築科・坂茂さんによる15棟のヴィラ。直線的ながらも柔らかく、地場素材を存分に取り入れた開放感あふれるヴィラを目的に、降り積もった雪に注意をはらいつつ、急ぐこともなかろうと、都心からゆっくり車で向かいました。


ドライブは子どもの頃から大好きで、深夜の父親とのドライブは今でも良い思い出です。車も大好きで、クラシックカーからスポーツカーまで、街中で美しい車に出くわすと振り返ってまで見つめてしまいます。ですが、私は車を一切運転しません。その代わりと言ってはなんですが、助手席のプロを自負しています。完璧なナビゲーションと最高のミュージックリストで、運転手と同乗者に快適な車中時間をお届けします。高速道路に乗ると、特にサービスエリアの美味しい食事で満たされたあとなんかは一気に眠気が襲ってくるようで、そんな時こそ私のサポート力は発揮されます。


都内から那須高原までのドライブで好評だった歌える90年代ヒット曲。眠気を吹き飛ばすには大合唱が一番です。B’z、GLAY、Spitz、小田和正、井上陽水などなど。Spotifyにドライブに最適なミュージックリストを一般公開しているので、是非、週末ドライブやゴールデンデンウィークの遠出にお役立てください。


“歌える90年代ヒット曲ドライブソング“ on Spotify
https://open.spotify.com/playlist/7i3xTXpw9U7d1JWfDPtdAW?si=HW-0yQRpSnydIXgHiZ4WGQ


クリス‐ウェブ佳⼦(モデル・コラムニスト)

1979 年10 ⽉、島根⽣まれ、⼤阪育ち。4 年半にわたるニューヨーク⽣活や国際結婚により、インターナショナルな交友関係を持つ。バイヤー、PR など幅広い職業経験で培われた独⾃のセンスが話題となり、2011 年より雑誌「VERY」専属モデルに。ストレートな物⾔いと広い⾒識で、トークショーやイベント、空間、商品プロデュースの分野でも才覚を発揮する。2017 年にはエッセイ集「考える⼥」(光⽂社刊)、2018 年にはトラベル本「TRIP with KIDS―こありっぷ―」(講談社刊)を発⾏。

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