素敵な映画と出逢うことは”人生に彩りがほしいとき”の絶対条件

ドウェイン・ジョンソン、ガル・ガドット、ライアン・レイノルズらの出演するアクション・コメディ映画『レッド・ノーティス』の世界94か国における合計視聴時間が配信開始から2週間以内でおよそ2億8000万時間に上り、Netflixサービス内で史上最高の人気を集め話題となりました。

主演クラスのA級スター3名が集まり、画面に映る全ての瞬間が華やか!

クリスマスシーズンからお正月に向けて時計の針が動き出す、このシーズンにぴったりの映画です。

物語を一言で言えば、FBI捜査官、詐欺師、大泥棒が貴重な美術品を巡って繰り広げる壮大な騙し合い。イタリアのローマとサルデーニャ島、インドネシアのバリ、ロシア、イギリスのロンドン、スペインのバレンシア、アルゼンチン、エジプトのカイロ、フランスのパリなど、まるで地球儀を回転させているかのようなロケーションで繰り広げられるアクションエンターテインメントで、ゴージャスな時間が流れます。



FBI捜査官と泥棒が手を組み、そこに謎のセクシー美女が加わってかつてないスペクタクルな強盗計画に挑むという設定はどこか『ルパン三世』を彷彿とさせます。このアニメ的なテンポを懐かしく感じるのは、日本人たる所以かもしれません。

そこに幻の美術品を探求するというインディージョーンズ的なアドベンチャーの要素、近年の『007』シリーズや『ワイルド・スピード』シリーズを彷彿とさせる世界中を駆け巡るワールドワイドさが加わりとにかく贅沢!

小洒落たレストランでコース料理を味わっているような高揚感と驚きの仕掛けが順番に訪れ、はなやいだ時間を約束してくれるはずです。



昨今、話題になる映画作品は2010年代後半からの混沌とした社会情勢の影響からか、大衆向けのエンタメ映画であっても、政治的かつ社会的なメッセージが込められるようになりつつあります。世界的に大ヒットしたアニメ作品は女性の強さを謳い、オスカーの賞レースに絡むのは多様性を表現した作品が常連となりました。

それはもちろん歓迎される素晴らしい流れではあるけれど、すべての映画に意味をもたせることが正義とされる風潮のあるこの時代に、久しぶりに王道エンターテインメントと出会った気がします。たとえネタバレしていたとしても楽しめる、お気に入りのお酒片手に、誰にでも愛されるだろう映画が与えてくれる心躍る時間は日常の憂いを見事に吹き飛ばしてくれました。


「凛」とした女の磨きかた

今回、凄腕の大泥棒を演じるガル・ガドットと言えばイスラエル出身で兵役を経験した俳優としても有名です。2年間イスラエル国防軍に入隊していた彼女は戦闘員のトレーナー役として過ごし、その後はGUCCIのフレグランスのイメージキャラクターに採用されるなどモデルとしての経験を積みながらも『ワイルド・スピード』シリーズのジゼル役でブレイクを果たし、女性主人公の活躍が目覚ましい近年のアメコミ作品においてその草分け的作品と言える『ワンダーウーマン』(2017)のヒロインに抜擢されました。

今年は3人目の子供も誕生し、映画以外の瞬間までもワンダーウーマンな女性と言えるガル。



劇中、彼女の息を呑むほどの美しさに、その美の正体を因数分解してしまいたくなります。

彼女の魅力とは、なんだろう。それは唯一無二とも言える「凛」とした存在感ではないでしょうか。

見た目の美しさ以上の磁力を放つ「凛」とは、なにか。優美で、上品で、気品があり、愛らしさというよりは高貴さを纏い、柳のように柔軟さを兼ねながらも周囲に左右されないブレない軸がある。

そんな女性をみていると”頼もしさ”にも色気が宿ることを教えられます。

凛とした女性とは、1本筋が通った人のことを言うのかもしれません。

正直、すぐに手に入れるのは難しい要素ばかりで気が遠くなるけれど…でも、この映画を観てほしい。その「凛」の正体のヒントが隠されているから。

それは至ってシンプルで、注目したいのはガル・ガドットの姿勢の良さ。どんな仕草も3割増しで、椅子にオフモードで腰掛けていようと、飲み物を飲むさり気ない仕草でさえも、姿勢の美しさが際立っているのです。言われてみれば確かに背中の丸くなった女性から「凛とした」という言葉は紐付きません。

試しに私も背中を正してみるとおのずと目線が前に。目線が上向きになることで悩みの濃度すらも薄くなっていく気がしました。無意識のうちにガルの美しさが瞳に焼き付く作品なので、そういった部分に関しては美容にも効きそうな予感もします。



撮影中断を経てようやく届いた物語

世界中を旅している感覚になれる作品なのでまさに今こそ観てほしい映画ですが、実際は新型コロナウイルスの影響下、何度も撮影中断となり、ロケ地の変更を余儀なくされながら完成を迎えた映画でもあります。

ちなみにタイトルにもなった『レッド・ノーティス』とは、インターポールが世界の最重要指名手配犯を逮捕するためにのみ発令する、特別な国際手配書を意味します。私はこの映画ではじめて知りました。

ちなみに今現在66,000のレッドノーティスが有効とされ、そのうち7,669のレッドノーティスは一般に公開されている情報とのことです。

未逮捕の最重要指名手配犯の数字に驚かざるをえませんが映画だからこそ味わえる『レッド・ノーティス』な人物たちの浮世離れした世界観を覗いてみてはいかがでしょうか?

軽妙な三者のやりとりに、頬が緩み、ストレスまでも地球の裏側に飛んでいくような気さえするはずです。



Netflix映画『レッド・ノーティス』独占配信中


映画ソムリエ東紗友美(ひがし・さゆみ)

1986年6月1日生まれ。2013年3月に4年間在籍した広告代理店を退職し、映画ソムリエとして活動。レギュラー番組にラジオ日本『モーニングクリップ』メインMC、映画専門チャンネル ザ・シネマ『プラチナシネマトーク』MC解説者など。

HP:http://higashisayumi.net/
Instagram:@higashisayumi
Blog:http://ameblo.jp/higashi-sayumi/

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