2020年10月下旬に日経HRと日本経済新聞社が行った調査によると、約6割が副業に「関心がある」と回答、転職希望者の約85%が副業をしていたり関心があったりと副業に前向きであることが分かりました。(2020年11月日経HRプレスリリースより)

インターネットで「副業 ばれない」と検索している方も散見されるように、従来は「副業=禁止されているもの」といったイメージがあり、あまり推奨されているような雰囲気はなかったように思います。

しかし、平成30年1月に厚生労働省が作成した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が存在することからも分かるように、国としても副業を推進し、より自由な働き方を認める方向に動いています。

そのような機運もあり、いくつもの企業が副業を解禁している中、知っておきたいのはやはり税金に関する知識ではないでしょうか?

今回は、会社員が副業を行う場合に必要になる基本的な税金についてお伝えしようと思います。


やっぱり確定申告はやらなきゃいけない?

☑ 副業の儲けが20万円を超えた場合は必要

☑ 20万以下でも住民税の確定申告は必要

☑ とりあえず所得税の確定申告をしておくことがお勧め

ご存じの方も多いと思いますが、会社員でも本業で得られる給与のほか、副業での儲け(収入から経費を引いた利益)が20万円を超える場合に確定申告が必要になります。

ただし、これは「所得税の確定申告」についてのお話で、儲けが20万円以下であったとしても「住民税の確定申告」は必要です。

20万円以下だからといって何もしていないと、ある日役所から住民税の申告が必要と呼び出しを受けた、なんていうことになりかねません。

所得税の確定申告を行えば、住民税の確定申告は不要になるため、20万円以下であっても所得税の確定申告を行っておくということも一案です。

冒頭の調査には一カ月の副業収入の調査もありました。

こちらを見ると、月1万円未満の方約18%、月1万円~3万円未満(年間12万円から36万円未満)の方約20%を除いたとしても、おおよそ6割の方は所得税の確定申告が必要となる可能性があることが分かります。

もちろんこれは収入であり、申告義務が生じるかどうかは経費次第ということになると思いますが、基本的には多くの方に所得税の確定申告義務がありそうです。


副業収入はバレない?

☑ 支払調書などで把握されます

このような考えをもっている方は一部にいるかもしれません。

ただ、残念ながら(?)申告しなくても税務署や役所は副業収入を把握できる仕組みになっています。

副業の種類にもよりますが、ほとんどの場合、副業を行う方に報酬を支払う事業者は「支払調書」という書面を年に一度税務署に提出することになっています。

所得税を扱う税務署はその支払調書と提出された申告書を照合します。また、住民税を扱う市役所・区役所等もその支払調書を基に申告漏れがないかを確認しています。

では、海外の企業からの報酬ではどうでしょうか。

海外企業は日本の税務署へ支払調書を提出する義務をもちません。

しかし、金融機関は日本と国外の間でのお金のやり取りをした場合、国外送金等調書というものを税務署に提出することになっています。

支払調書が発行されない収入があるのでは?国外送金も100万円以下であれば調書がでないのでは?などと制度的に100%把握することは難しい部分もあります。

ただし、例えば暗号資産であれば取引所からの情報提供を受ける、海外企業であれば租税条約等に基づく情報交換の制度により所在国当局からの情報提供を受けることも可能です。

以上のことから、必ずどこかで問題が起きることになり、そのストレスで副業どころではなくなるかもしれません。

いろいろと策をめぐらす時間があれば、ぜひ副業にまわしてもらえればと思います。


源泉徴収って何?

☑ ひとこと、確定申告時に支払う税金の前払です。

副業の収入の入金時に一定額を引かれて(源泉徴収されて)入金されることがあります。

副業の収入から源泉徴収をされると戸惑われる方も多くいらっしゃいます。

勤務先の会社から支給される毎月の給与からも源泉徴収はされているのですが、会社員の方が意外と分かりにくいのがこの源泉徴収かもしれません。

収入が給料のみであれば、会社が行う年末調整によって1年の税額が確定します。この場合は自分で確定申告を行う義務はありません。自分で申告を行う機会がなければ、あまり意識することがないのは当然ともいえます。

☑誤解1 源泉徴収をされると損をする?

源泉徴収はあくまで税金の「前払」です。そのため、副業収入から源泉徴収として所得税が引かれたとしても、その年の確定申告で精算することになり、損をするわけではありません。

①1月~12月の源泉徴収税額…月1万円で合計12万円

②その年の所得税…20万円

③その年に支払う所得税…②-①=8万円

なお、①が30万円であれば、30万-20万=10万円が還付されることになります。

②③の計算を行うことが所得税の確定申告の目的です。

よって、上記の例でいうと①がいくらになろうと②の所得税の負担額は20万円で変わらないため、源泉徴収によって損をすることはないといえます。

ただ、還付を受けられる場合、1月に源泉徴収をされた金額の還付は翌年となるため、その期間の投資効果は得られないといえるので、限定的ではありますが損をするといえなくもないです。

☑誤解2 源泉徴収の有無については収入をもらう側が選択できる?

源泉徴収は支払側の義務であるため、副業収入を受け取る側でその有無の選択はできません。

ただし、源泉徴収の義務は支払側が法人である場合、個人事業主でその従業員に給与を支払っている場合に限定されています。

そのため、従業員のいない個人事業主や事業を行っていない個人から受ける報酬については源泉徴収されません。

☑誤解3 確定申告する源泉徴収税額は支払調書がなければいけない?

前述の支払調書には、その年の収入の合計と源泉徴収された税額の合計が記載されます。この支払調書は毎年1月から2月頃に前年分を送付してくれる企業もあります。

支払調書を送付する企業は「慣例的に」その送付を行っていると思いますが、この支払調書を基に確定申告を作成「しなければならない」と考えている方も多いのですが、税法上確定申告において支払調書は必須にはされていません。

源泉徴収税額を少なく記載してしまうと、納付する所得税額が大きくなってしまうためその把握は重要です。

しかし、支払調書を頼りに確定申告を行おうとしても、報酬を支払う事業者からすると支払調書の支払先への送付は義務ではない(税務署への提出は義務)ため、不足分がある場合や、そもそも全く届かないといった事態も起こります。

結果として、請求額と入金額の差額を源泉徴収税額として把握するなど自身での日々の整理が最も損をしない方法といえます。


副業で赤字を出したら税金を返してもらえる?

ケースバイケースです。

所得税は「損益通算」という制度があり、給料(=給与所得)から事業所得や不動産所得の赤字を差し引くことができます。

そのため、副業収入が事業所得・不動産所得に該当した場合、その赤字は給与所得と相殺され、給料収入に対する所得税が減ることになります。そうなると、給与から引かれた税金が多かったということでその分税金が戻ってくることになります。

それなら、副業の収入はまだないけれど、準備のための経費があるから確定申告をすれば税金が戻ってくる?という考えも出てきます。

ただし、この考え方は非常にリスクがあります。

赤字を差し引くことができる「事業所得」であると考えるためには様々な条件があります。税務上で明確に定義づけがされているわけではないのですが、裁判などにおいて「事業所得」であるかないかの判断がなされています。

詳細は割愛しますが、ひとことでいうと「その収入のみで生活ができるかどうか」が基準となります。

税務署に開業届を提出すれば、事業所得に該当するといったような記事も見たことがありますが、一概に判断できるものではありません。

今後独立を考えているけど準備期間は赤字というような場合を除き、基本的に副業は事業所得には該当しないと考えます。

なお、事業所得に該当しない場合は「雑所得」に該当することになり、赤字の場合はその金額は切捨てとなります。

また、賃貸不動産を所有する副業であれば、その所得は不動産所得に該当し、雑所得に該当することはありません(民泊等の宿泊業は雑所得になります)ので損益通算は可能と考えます。

上記の取扱いは非常に複雑であるため、検討される場合には専門家にご相談ください。


まとめ

副業収入は現状の給与収入の補填、働きながら独立に向けた準備ができるなどのメリットがあります。

社会的に副業解禁の流れではあるものの、会社として認めていないといったところもまだまだあるかと思います。

少しでも興味がある方は勤務先の就業規則をよく確認の上で検討してみてください。その際は上記のような税金の知識についても頭の片隅に置いておくと安心です。


ブランコンサルティング株式会社CEO

佐原 由起

新卒で会計事務所に就職後、税理士と共に2013年にブランコンサルティング株式会社、及び会計事務所Blanc Tax Spaceを設立。

起業を目指す方や若手経営者に対してお金や税金のアドバイス、マネープランニングを行っている。税務・会計業務以外にも、ブランディングやPRコンサル業務も得意とし、双方をニーズに合わせて提供している。

HP:https://www.blanc-con.com/

Instagram:@yuukisahara

(記事監修:Blanc Tax Space代表税理士 宍戸 智之)

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