仕事が早く終わった日、急に予定が空いた夜はひとりで気ままに過ごすにはいいタイミング。カウンターがあるレストラン、ワインや日本酒の注目店など、今やひとりで行っても十分に楽しいお店は増える一方です。ここでは“ひとりでも妥協なし、きちんと美味しいもの”をテーマに、ひとりごはん&お酒の良質な空間を紹介します。
研ぎ澄まされたスープから始まる
10皿のストーリー
三日月のようなフカヒレが丸ごと黄金色に染まっている。その皿が運ばれてくると、目がパッチリと開いた。オリエンタルな香りが立ち上り、フレンチでも、中華でもない、優雅な姿に引き付けられる。
これは、この7月から“和漢洋才”をコンセプトに新しく生まれ変わった『CROSS TOKYO』のコース料理。契約農家や自社農園の野菜をたっぷり使い、旬の野菜の魅力を引き出すナチュラルなフレンチを提供してきた赤坂『CROSS TOKYO』がさらに目指したのは、体も心も健やかになる料理だ。
シェフの増山明弘さんは中国皇帝の食事に取り入れられた「医食」や日本の「医食同源」といった考え方を真摯に受け止め、フレンチをベースにさまざま技法を取り入れている。エピソード1から10まで、それぞれ漢字一文字で展開されるコースは、物語を描くように進行するのだ。
「源(みなもと)」と名付けられたスタートのひと皿は、オリエンタルな香りをふりまく琥珀色のブイヨン。ヘルシーなたんぱく質として注目される駝鳥を使ったラビオリが浮かんでいる。澄んだ味わいの中にじんわりと滋味が湧きあがり、舌と胃袋に食事をする準備を調えてくれる。
「ブイヨン・ド・レギューム」は『CROSS TOKYO』のシグネチャーだ。12種類の野菜を始め、35種以上の生薬、スパイスなどを独自に組み合わせて丸鶏や豚足を加え、濁らないように静かに炊いてうまみを抽出している。このブイヨンはお取り寄せで人気の薬膳鍋「食労寿(くろす)鍋」や「デトックスカレー」にも使われているそう。10皿という品数はけっしてボリュームが少なくないが、食べた後も体が軽いのは増山シェフのテクニックのたまものだ。
増山シェフは、千葉のハーブファームで料理長を務めていた経験もあり、ハーブやスパイスのエキスパート。フレンチで培った繊細な感性を武器に調和のとれた味わいを表現している。さらに“旅するシェフ”として、自ら国内の生産者の元を訪れて、自身の料理に生かすべく食材との出会いを常に探しているのだ。
料理とのペアリングが楽しめるドリンクも個性的だ。アルコールペアリングでは、ソムリエが選ぶナチュラルなワインが中心。ノンアルコールペアリングのほか、薬膳茶なども用意されている。
『CROSS TOKYO』があるのは大きな窓からの眺望がいいビルの10階。青い空を望むランチは気持ちが晴れやかに、夜景を見下ろす夜は一転してドラマチックなムードが味わえる。
なかなか遠出ができないこの夏、自分へのご褒美として、思い切って美食レストランへ出かけてみれば新鮮な気分になれそうだ。コース+ペアリングなら一人でも気兼ねなく食事ができる。さらに、シグネチャーの「ブイヨン・ド・レギューム」を使った、お取り寄せもあるので、自宅にいながらにして、体に健やかなメニューを味わってみるのもよさそうだ。
CROSS TOKYO
クロストーキョー
住所:東京都港区赤坂5-4-7 ヘキサゴンビル10F
電話:03-5545-5408
営業時間:11:30~15:00(LO14:00)/18:00~23:00(LO22:00)
※営業時間は変更になる場合があります。
定休日:不定休
ランチコース2800円(税込)~、ディナコース6000円~
※掲載価格は税別価格です(2020年8月現在)
(取材&文・岡本ジュン)