2016年3月の開業以来、伊勢志摩国立公園内に静かに佇むリゾート「アマネム」は、アマンらしいロケーションのハイダウェイとして、アマンを愛するファンはもとより、世界のトラベラーにも、変わらぬ存在感を示してます。そのアマネムは、歴史的な逸話の残る伊勢志摩の景勝地、大崎半島の海を見晴らす断崖の上に建っています。
この地域はかつて食の豊かな「御食つ国」(みけつくに)と呼ばれていました。遠く万葉の時代より、リアス式の複雑な海域が育む豊富な海産物や穀物などを、神事に使う貴重な食材として天皇に献上してきた歴史が残り、今尚、食の遺産を継ぐ地域でもあるのです。先に述べた通り、アマネムは世界的に知られる真珠の海 ‘英虞湾’ に面した大崎半島にあり、その背景には、伊勢神宮まで続く深い緑に覆われたなだらかな山が連なっています。なだらかな山の向こうに鎮座する伊勢神宮と近いことから、気の流れの良さを感じるのは当然かもしれません。アマネムには、サンクチュアリと言われる理由が幾つも揃っています。
アマネムと言う名は、アマンが常に願う「平和なる」を意味するサンスクリット語「アマン」と、日本語で「歓びを分かち合う」という意味の合歓(ネム)から名づけられた美しい名前です。
アマネムを訪れるのは初めてではありませんが、知れば知るほど、知らない魅力に気づかされ、今では語り尽くせません。目覚めた時から爽快だと体感する気持ちの良さや、思わず絶句した2000㎡もの森の中のウェルネス施設「アマン・スパ」の存在、客室であるスイートやヴィラの、潔いほどのシンプルさに隠された日本への深い造詣が、このリゾートに何度でも足を運びたくなる理由であり、そして愛おしさでもあります。
客室や建物内を飾る匠の技も静かに主張されています。釘を使わない組子細工は、家族の繁栄や商売繁盛を願う七宝文様で、文具入れやブックスタンドに使われています。目立つことなく意匠として溶け込むことで、宿としての格式をグンと高くしています。すべてに一流の職人技や芸術家の作品が選ばれ、隙のない完成された客室が造られているのです。
左下:2000㎡のウェルネス施設「アマン・スパ」のテーマは「水」。ミネラル分豊富な天然温泉を利用したサーマルスプリング(写真)、プライベート温泉パビリオン、4つのトリートメント スイート、フィットネス センター完備。
右下:「アマン・スパ」のトリートメント室内。
99㎡もの広い客室、それぞれに備わる天然温泉、客室はシンプルながらとても贅沢な設えです。ガラス窓を大きく開け放せば、穏やかな海風が優しく部屋包み込んでくれます。敷地内の庭につては、ランドスケープの専門家の熱い思いで作られました。いずれ、5年先、10年先、また遠い未来に向かい、手が入れられずに壊れかけた地域に原風景を戻したいと、木々や草木などすべての植栽にも自然への畏敬の念が込められたのです。
アマネムが特別に、ゲストに用意しているプログラム「アマネムジャーニー」(有料)も地域の造詣を深めるには面白そうです。「伊勢神宮と御食つ国を巡る食文化体験」、「伊勢志摩伝統の海女漁エクスペリエンス」、「サイクリングで駆け抜ける志摩の丘と海」、英虞湾で体験する真珠養殖「マイパール」など、地域の伝統や歴史の一端に触れるジャーニーです。自分だけのオリジナルのパールを育てる「マイパール」は、アコヤ真珠発祥の地で養殖体験が可能。核入れしたアコヤ貝を養殖場に預け、冬に取り出す真珠を自宅まで配送してくれる、楽しみなアクティビティです。
自然に触れ、日本の歴史を想う。心も体もゆったりと癒されながら、日常を忘れて過ごすアマン流の贅沢。思い出深いNIPPON旅の提案です。
左下:古式「手火山製法」の貴重な鰹節づくり体験ができる現役の老舗鰹節「いぶし小屋」。
右下:「いぶし小屋」では一番出汁の試飲が可能。同時に土鍋の炊きたてでおかかご飯の試食も。香りと旨味は最高。
Photo: AMANEMU
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数、現在、新刊出版を準備中。
http://www.kyokosekine.com
三重県志摩市浜島町迫子2165
☎︎:(代表)0559 52 5000
amanemu.com
客室数:全24室(スイート&ヴィラ)
料金:(室料)110.000円~