前編に続いて、住宅購入を検討中の小松あやさんが、住宅購入にまつわる疑問をファイナンシャル・アドバイザーの鈴木千尋さんにぶつけます。特に、今回は一番気になるローンについて、リアルな質問も飛び出しました。


毎月どのくらいお金を

使っているのか把握しよう

小松「まず予算を考えることが重要というお話ですが、どのように予算を計算すればいいのでしょうか」

鈴木「自分のお金の状況って、なかなか考えられないですよね。まず自分たちの支出がどのくらいかをわかっていないといけないんです。小松さんは、毎月いくら保険料を払っているか即答できますか?」

小松「…大体の金額しかわからないです!」

鈴木「多くの人がそうなんです。月々、何にいくら支払いをしていて、いくら貯金に回せるのか。1、2年先のことなら予想もつくかもしれませんが、この先例えばお子さんが生まれて、学費にいくら必要か、生涯どういったことにお金がかかるのか、そういったことまで計算したうえで、予算を出さないといけないんです。これは自分で計算するのは難しいですよね」

小松「インターネットでは、シミュレーションで予算を算出できるサイトがよくありますよね?」

鈴木「あれは、年収から借りることのできる金額を単純計算しているだけですね。実際には、ライフスタイルによって住宅にかけられる金額は大きく違いますから、細かくヒアリングしないと本来、予算は出せないものなんですよ」

小松「では、まずはFPの方に相談するのがいいんですね。でも、お金のことを現実的に考えるのは少し怖いですね」

鈴木「例えば、これは私が架空の人物像で計算したんですが、年収1千万円の方が、退職後も生活レベルを下げずに暮らしていると、80歳でお金が底をついてしまいます。私はこれを『お金の寿命』と呼んでいます」

小松「『お金の寿命』!ますます怖いです(笑)。いま人生100年時代と言われていますから、この方はあと20年どのように暮らすのか…と心配になりますね」

鈴木「80歳になったときに『お金がない』となったら怖いですが、こうやって事前にお金の寿命を知っておけば、お金を長生きさせる方法を考えることができますよ」

小松「なるほど、家の購入ってお金について考える良いタイミングになりそうですね」

鈴木「ご夫婦でも全く同じ方向を見ていればいいんですが、お金の価値観は違うものなので、何にお金をかけていくかをこの機会に話し合った方がいいですね。知るまでは少し怖いかも知れませんが、将来のお金についてイメージでわかるだけでも、不安がなくなっていくものですよ」


フリーランスになった今

本当に住宅ローンを組める?

小松「ものすごく基本的なことかもしれないのですが、仮にローンを4500万円組めるとして、500万円の貯金があったら5000万円の家が買えるという考えでいいんでしょうか」

鈴木「4500万円の物件を買うとすると、ざっくりですが諸費用に200〜300万円くらい支払うことになります。貯金から諸費用を支払うとすると残りの200万円を物件購入にあてるなら、4700万円の家を購入となります。物件購入には諸費用もかかってくることを念頭に置いておかないといけないですね」

小松「私の場合、自分がローンを組めるのかということも気になっています。ブロガーとして収入が出始めたのが昨年あたりからなんですね。こんなに不安定なのに収入として認めてもらえるのかなって」

鈴木「確定申告をしていると所得を書く欄がありますよね。その部分は審査の際に加味してもらえますよ。夫婦の場合、いろんな借り方があります。どちらか一人が組むパターンのほかに、収入合算ローン、ペアローンがあります。それによっても審査が変わってきます」

小松「収入合算ローンとペアローンってどう違うんでしょうか?」

鈴木「収入合算ローンは、債務者は一人でも借り入れの際にお二人の収入を合算してみてもらうことができますので、借り入れられる額が増えます。さらに、連帯債務型のローンを使うことで住宅ローン控除をお互いが受けることができます。銀行は限られますが、お互いに団体信用保険に加入できる商品もありますよ。

ペアローンは小松さんとご主人がそれぞれ別にローンを組むものです。割合は自由で、4000万円のローンなら2000万円ずつにしてもいいし、3000万円と1000万円にわけても大丈夫。ただ、小松さんがフリーランスということなので、ペアローンよりも収入合算ローンのほうが借りやすいと思います」

小松「そう考えるとやっぱり会社員って強いですよね。主人は歯科医で、今は主人の父親が開業している歯科医院で働いているんです。だから主人は給料をもらっている側なんですね。今後、代替わりしたら、ローンを組むうえで不利になってしまうんでしょうか?」

鈴木「不利ということはないですね。いまフラット35も審査が厳しくなってきているので絶対とは言えませんが、一般的に歯科医師の方は借りやすい職種といえます。開業のための資金のローンをすでに組んでしまっている場合に、住宅ローンが組みにくくなることはありますが、お父さまが開業された医院ということなら、その心配もないですね。ただ、代表になった場合は、少なくとも3期分くらいの実績を出さないといけなくなるので書類は増えますし期間も必要になります」

小松「家を買うタイミングとしては代替わりする前にローンを組むか、代替わりしたら3年くらい待ってローンを組むか、ということになるんですね」

鈴木「でも、3年待っている間も賃貸だと家賃にお金が消えて行ってしまいますよ!」

小松「そうですよね! 歯科医院って町にたくさんあって、開業してもうまくいかないという話も聞くし、どうなのかなって不安で、踏み切れずにいました」

鈴木「心配なのはわかります。ローン審査が通るかどうかは銀行が決めるところなので、ローンの仮審査を一度通してみるというのもひとつの方法ですよ」

小松「仮の審査というのは、物件が見つかる前でもできるんですか?」

鈴木「仮審査だけならお金もかかりませんし、今はネットで事前審査をすることもできますよ。それに通ったからといって、必ずローンを組まないといけないわけでもありません」

小松「いくつも通していいんでしょうか?」

鈴木「いくつも審査に出して否認されている経歴を残しすぎるのは問題になります。銀行側も個人信用情報に審査結果を登録します。1つダメだったら次…という感じでやってしまうと、2つめ、3つめの銀行が個人信用情報を調べて勘繰られてしまう可能性があります。最大でも3行くらいにしたほうがいいですね。また仮審査に通っても必ず本審査に通るわけではないという点も知っておいてください」

小松「ローンの種類もそうですが、どの銀行を選んでいいかもものすごく迷います。これまでのお話を聞いていると、やっぱり金利が低いところが良いんでしょうか」

鈴木「金利はもちろん重要ですが、銀行のホームページなどで金利を確認すると、よく0.45%“~”と、幅を持たせて書いてありますよね。一番低い数字が目立つように書かれていますが、その金利でローンが借りられるとは限らないんです。例えば転職したばかりの方に対しては、0.7%に調整されるなど人によって変わります。あとはいろんなオプションをつけると金利が優遇されたり、不動産会社が提携している銀行だとすんなり低金利で借りられたり…ということもあります」

小松「なんだか携帯電話の料金みたいに複雑ですね」

鈴木「団体信用保険の仕組みも銀行によって違いますね。通常、借りた方に万一のことがあった場合はローンの支払いが免除となりますが、がんと診断された時点で支払いが免除になるという保険もあります。そこまで調べていくと、もっと選択肢が狭められていくのかなって」

小松「金利や保険、あとは実際に購入する不動産会社との提携などで、選択肢が絞られていくということですね」

鈴木「でも、まずは購入する物件を見つけるところからですね。ローンの本審査では、物件の担保価値も審査の対象になりますから。お話ししたように、時間をかければかけるほど迷いが大きくなってしまうので、物件探しを始めたら早めに決めたほうが良いということも念押ししておきます」

小松「家を買うという目先のことだけで、長い目で考えられていなかったと感じました。もう、家の購入とかお金の話じゃなくて人生相談に来たような気分です」

小松あや
インスタグラム @i_am_ayakomatsu
オフィシャルブログ「私に鞭打つ再婚ライフ」
https://ameblo.jp/komatsuaya9021/

ファイナンシャル・アドバイザー/鈴木 千尋

広島県広島市出身。息子の出産を機に、保険会社に入社。10年間、800組以上の顧客を対応するも、得られる知識量に限界を感じる。多くの知識が必要になる独立系FP会社の門戸を叩き、数少ない独立系女性FPの一人として年間100件以上の個別相談やセミナー講師を務める。「保険を売る」という利害を捨て、親身に相談者と一緒に考える家計プランやライフプランで“世界に一つだけのマネープラン”を提供することを得意とする。相談者に家計のメリハリを覚えてもらう「楽しく節約」、「楽しくお金が貯まる仕組みづくり」が顧客の反響を呼ぶ。


■撮影協力

フォーカス蔵前
住所:〒111-0051 東京都台東区蔵前4-21-2
HP:https://focus-kuramae-jp.book.direct/ja-jp

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