その昔、江戸前期の頃には、島だった堂島が開発され「堂島新地」が造られ、蔵屋敷が並び、役人・米市場の商人が利用する遊廓が栄えた土地だったと言います。その後は商業地となり、遊廓は別の街角に移り、堂島は現在でもビジネス街として、また文化や芸術の花開く街としてあります。2024年8月1日、その堂島に立つ高層ビル「ONE DOJIMA」内に「フォーシーズンズホテル大阪」が開業しました。

西日本の商業の中心地である大阪のキタ(北)に位置する堂島の今はオフィス街ですが、今も尚、特に大阪の歴史と文化が息づくエリアとしても知られています。そんな中、「フォーシーズンズホテル大阪」は、世界的な名を‘冠’に水都のラグジュアリーホテルのアイコンとして、気鋭のアーティストの作品とともにエレガントな高級感を漂わせています。

ビルは高層49階建て、その1~2階、27~37階を利用した全175室(客室は28~35階)からは、周囲のビル群や活気あふれる現代の大阪の様子が眺められ、とりわけレトロな建物や壮麗な橋、歴史的な水門、そしてアイコニックな大阪城や川面にネオン煌めく道頓堀など、過去と現在が織りなす風景が目に映ります。超高層複合タワー開発により、大阪に初めて進出する「フォーシーズンズホテル大阪」と、大規模な分譲タワーマンションが一体となった日本初のプロジェクトは特別感に満ちています。

驚きは、28階のワンフロアを占める特別コンセプトフロアとして造られた「GENSUI(玄水)」です。フロアは照明が落とされた薄暗い空間であり、他のフロアとは大きく違う印象です。「玄」とは、赤味のある漆黒の色。このフロアの特徴としては、古から伝承される日本文化の‘陰陽’が息づく空間と言うのです。デザインはシックな和モダンを表現することに優れたシンプリシティが手掛けました。テーマは「モダンな旅館」で、全21室はすべて畳の敷かれた客室です。

真っ白なベッドが印象的な「デラックスルーム」
上層階にあるすっきりとモダンな印象の「デラックスルーム」。窓からは大阪市街が見渡せる。睡眠環境を重要視するホテルは、シモンズと開発したフォーシーズンズ共通のオリジナルベッドを使用、寝心地は最高。
全面ガラス張りのバスルームは、「プレミアコーナースイート」。大阪には銭湯カルチャーが残り、どの部屋にも四角いバスタブが用意されている。
88㎡あるゆとりの「グランド畳スイート」。「GENSUI(玄水)」フロア最大の部屋で掘りごたつ式テーブルや畳敷きのベッドルームも。
大阪の雑踏を忘れる緑に囲まれたレストラン「ジャルダン」のテラス。
天空のプールのような高層階のプールは36階に。ウェルネスゾーンには、他にスパ、ジム、銭湯文化にインスパイアされた風呂&サウナも完備。

水都、天下の台所、西日本の文化と商業の中心地など、大阪は多彩な魅力に溢れインバウンドの観光客も多い街です。そこには‘食道楽の街’としての誇りも依然として輝き、「フォーシーズンズホテル大阪」では、その大阪の伝統を5つのバラエティ豊かなレストランやバーに表現しています。

特に今回の滞在では、「鮨 ラビス 大阪 ヤニック・アレノ」でモダンフレンチと江戸前鮨の饗宴を賞味しました。フランスで三つ星レストランを2軒所有する現代フレンチの巨匠、ヤニック・アレノ氏と、料理人歴30年以上の安田至料理長が手掛ける「フレンチと江戸前高級鮨の融合」という贅沢な食事が披露されたのです。さらにシェフのお任せコースには、貴重な日本酒「獺祭」6種がペアリングとして華を添えていました。

贅沢なお任せコースを飾ったのは、普段ではあまり目にしないフランスで使われるエンダイブとトレビスのサラダ、こだわりの握り鮨、ホタテ・山椒・白州のスモーキーなブイヨン、大地と海のコンソメ…など、ひと皿ずつ、ひと握りずつがまさにフレンチと日本食の美食の融合、いずれも旬を大切にした良質の食材が際立ち、オリジナリティあふれる料理を満喫できました。

グルメといえば、1階にあるオールデイのフレンチビストロ「ジャルダン」でも手の込んだメニューが出されています。特に印象的だったのは、エキサイティングな朝食でした。スペシャリティメニューからメインディッシュ一品を選び、さらにセミブッフェを楽しむものです。メインには、クロワッサンベネディクト、和牛テンダーロインすき焼き、ポーチドエッグなど、いずれも個性派揃いの見た目も華やかなプレゼンテーションでした。食に対する熱い追求は大阪らしい?悩んだ挙句、私はポーチドエッグ、鰹節、のり、オランデーズソース、漬物などの付いたボリューミーな「焼きおにぎり」を選び、朝からサプライズのセミブッフェも満喫しました。食事の楽しさは滞在の楽しさにもつながります。料理に手を抜かず、バラエティ豊かなメニューで朝のひとときに英気を養う、まさに大阪の‘食道楽’はここにも生きていました。

「鮨 ラビス大阪 ヤニック・アレノ」で腕を振るう左は料理人歴30年以上の安田至料理長、右はフランスで三つ星レストランを2軒持つヤニック・アレノ氏。フレンチと高級江戸前鮨の饗宴。
新鮮な旬のネタを握る江戸前鮨。
美しいプレゼンテーション、その日入荷の刺身盛り合わせ「お造り」。
フランスではよく食される野菜「エンダイブ」。葉の間にマッシュルーム、大葉、洋ナシを挟み、野菜や果物の風味や甘味、エンダイブのほろ苦さなどを味わう手の込んだ美味しいサラダとして。

取材・文/せきねきょうこ

Photo: フォーシーズンズホテル大阪

せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数。

http://www.kyokosekine.com

Instagram: @ksekine_official

DATA

フォーシーズンズホテル大阪

大阪市北区堂島2丁目4番32号

📞 06-6676-8682

https://www.fourseasons.com/jp/osaka/

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