この7月15日、マカオで開催されたアジア最高のバーアワード「Asia’s 50 Best Bars 2025」(主催:ウィリアム・ リード・ビジネス・メディア)に於いて、「東京エディション銀座」のシグネチャー カクテルバー「Punch Room Tokyo」(パンチ ルーム トーキョー)が世界36位にランクインというニュースがホテルに入ってきました。まさに自身が訪れた7月16日、快挙を達成したばかりのホテルは歓びに舞い、世界の優れたバーの仲間入りを果たしていたのです。東京の中心である銀座に2024年3月の開業以来、ひっそりと究極の隠れ家ホテルとして、静かなる人気を博してきました。

鋭角的な階段を背にしたロビーバーの一角、階段はホワイトメタルで造られたスタイリッシュなデザイン。

2020年10月に一足先にドアを開けた「東京エディション虎ノ門」は、開業当時、華々しい話題に包まれたのも新しい記憶です。ブティックホテルの仕掛人として知られる世界的な起業家、イアン・シュレーガーと、世界最大のホテルグループ、マリオット・インターナショナルの名のもとに生まれたホテルは、斬新なホテル造りで訪れる人を素直に驚かせていたのを記憶しています。筆者である私も、「東京に数あるラグジュアリーホテルの中でも異彩を放ち、これまでのブティックホテルの概念を覆している」と記事にしたためました。虎ノ門で掲げられたコンセプト‘East Meets West’という概念は、技の披露で飾り立てるのではなく、独創的なインテリアで、訪れたゲストがまるごとコンセプトを体感できるように創造されていたのです。

そして今度はここ銀座です。世界中のハイブランドファッションやハイジュエリーブランド、日本の誇る老舗店舗も多く点在する銀座二丁目エリアにドアを開け、エレガントな銀座にすっぽりと溶け込んでいます。ホテルに到着し、タクシーを降りたその一瞬、数多くの世界中のホテルに慣れているはずの私でしたが、看板もない小さなエントランスドアを開けるのを躊躇してしまいました。カーテンに覆われホテル内は見えません。すると、中からドアマンがすかさず小さなエントランスのドアを開け、ロビー内へと誘ってくれました。2階まで吹き抜けとなったコーナーウィンドーの高い天井やロビーバーの雰囲気に、自分が今、まるで映画の撮影中かと思えるほど不思議な感覚を覚えたのです。

シンプルでスタイリッシュな空間デザインは、濃い茶系のウォールナットで覆われ、アイボリーにこだわる布張りのアームチェアと大きなソファに囲まれたロビー空間、その向こうは対照的にキラキラとしたゴールドが基調の「Lobby Bar」へと続き、外国語が飛び交っていました。インターナショナルなムード漂う香港やシンガポール、ニューヨークのハイセンスなホテルに到着したような気分でした。エディションの‘アヴァンギャルドな願望’がここでも達成されている…と思わせる空間です。

「東京エディション銀座」は、マリオット・インターナショナルの最高級ブランドであり、「エディション」の日本2号店として誕生、世界では19番目となりました。建築家・隈研吾が内装デザインを手がけ、ブランドの生みの親であるイアン・シュレーガーとのコラボレーションとなり、新たなラグジュアリーの誕生となりました。ホテル関係者が私にこう尋ねました。「外壁はご覧になりましたか?」と。私自身は、到着時に瑞々しいグリーンウォールに気がとられ、躊躇しながらのホテル入りでしたので、上階の壁をみるほど気持ちの余裕がありませんでした。「隈研吾氏が唱えたコンセプトは「織る」なんです。壁の模様は、格子状に重なったメタルでできていて、繊維が重なった織物のように見えていますよ」と。世界先端を行く街の文化と、日本古来の奥深い伝統文化が織り成す街がまさに銀座であり、街全体を織り上げ、世界へと繋げていく新たなランドマークとしてのデザインが構築されたと聞かされました。

コンパクトに造られたチェックインデスクのバックを飾る壁は、20世紀の初頭の屏風絵が選ばれ、スタイリッシュなロビーバーの空間に異なるインパクトを与えています。ホテルの部屋数は全部で86室。スタンダードで41㎡という広さを誇り、奇をてらわないゆったり感があります。自然を感じるダークウォールナットの床や壁、そこにカスタムメイドのトラバーチンやオフホワイトのレザーやファブリックを使った優雅なカスタムメイドの家具が置かれ、シンプルな質感と豪華さがミニマルな統一感を生み、上品な印象は邸宅のように感じられます。また13階には115㎡という広さのペントハウスも造られています。

1階のロビーバーカウンター、キラキラとしたゴールドが目を引く。ロビーはイアン・シュレ―ガーが唱える“ロビー・ソーシャライズ”の場となり、実際にも、話に花が咲く世界中のゲストの様子がうかがえる。
デラックス・キングの客室。白を基調に大きめのカスタマイズされた家具で寛ぎを演出した部屋はホテルというより贅沢な邸宅の1室のよう。
ペントハウスのリビングとバスルーム。13階で115㎡を占めるペントハウスはパントリー・キッチンも備わり長期滞在や様々な用途にも嬉しい施設。

大切なレストランのメインダイニングは「Sophie at EDITION」。モダンブラッスリーとして、日本の小規模な農家から仕入れる新鮮食材や、旬の食材から様々なオリジナルメニューが提供されています。ダイニング内のインテリアは、1階の「Lobby Bar」とはイメージを変え、ナチュラルな色合いを魅せるブロンドオークと白い漆喰で覆われ、そこに椅子とカーテンのビビッドな色合いバランスが衝撃的に目に飛び込んできます。壁には7人のアーティストによる東京のストリート写真のコレクションが飾られ、明るく優しいムードのダイニング内に、モノクロ写真で「エディション」らしいオーラを感じます。

注目は「Punch Room Tokyo」、19世紀のロンドンのプライベートクラブをイメージし、日本初の本格的なパンチボウルが体験できるバーです。さらに屋上には緑に包まれた「The ROOF」があり、銀座では貴重なワインにフォーカスしたルーフトップバーとして人気です。シャンパンやオーガニックワイン、国産スピリッツや和の素材を使ったシーズナルカクテルも提供。社交の場としても、プライベートな時間を過ごすにも、シダやオリーブに囲まれた緑の屋上から銀座の街を俯瞰で見ることのできるとっておきの隠れ家と言えるでしょう。このグローバルで不思議な「東京エディション銀座」に一度足を踏み入れたら、リピーターとなってしまうに違いありません。

メインダイニング「Sophie at EDITION」は最上階の14階。モダンブラッスリー料理を提供するレストランでは、地元食材を多く使い、今では有名となった「東京はちみつ」も提供。シェフの得意料理「ブイヤベース」はかなり上等な美味しさ。朝食もここで提供され、あんことホイップクリームを添えた「抹茶フレンチトースト」やまるでパリのカフェのようなメニューも揃う。
「Punch Room Tokyo」はスタイリッシュな階段で1階から2階へ、入り口ではひときわ目立つシャンデリアがお迎え。パンチとは、スピリッツ、スパイス、柑橘類、ティー、シュガーの5種類をミックスした飲み物が原型と言われるカクテル。「Punch Room」は世界中で展開するエディションのシグネチャーバーコンセプト。
銀座の真ん中に佇む庭園でワインやカクテルを楽しめるルーフトップバーとして展開する屋上のバー「The Roof」(17:00-23:00)。東京タワーや街の高層ビルも望める。とっておきの‘ソーシャライズ’の場としても。
プライベートな夜を過ごすには最高の「The Roof」の一角。

取材・文/せきねきょうこ

Photo: 東京エディション銀座

せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数。

http://www.kyokosekine.com

Instagram: @ksekine_official

DATA

東京エディション銀座

中央区銀座2丁目-8-13

📞 03-6228-7400

https://www.editionhotels.com/tokyo-ginza/

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