長い間待ち望んでいたブランド「バンヤンツリー」が、いよいよ日本に初上陸しました。その舞台は京都東山の閑静な高台にあり、「バンヤンツリー・東山 京都」として格式を湛え、スタイリッシュな‘和’との共存です。この歴史的な地域は癒しや安息を求めて滞在するには最高の立地でもあります。
バンヤンツリーは、世界の景勝地や歴史的な聖地、エキサイティングなビーチやリゾート島などに次々とオープンし、女性を中心に憧れのリゾートブランドの歴史を辿ってきました。2016年、当サイト「SUMAU」のホテル連載に初めて登場し、1年にもわたり世界のバンヤンツリーらしい華やかなホテルストーリーを綴りながら、読者の皆様に旅の情緒を感じていただきました。
バンヤンツリー・リゾートの創業は1994年9月、タイのプーケット島にあるラグーナ・プーケットという統合型リゾートに、世界初のバンヤンツリー・リゾートとして誕生しました。ラグーナ・プーケットは30年経った現在、バンヤンツリーを含め、リゾートホテルが6軒、ゴルフ場やテニスコート、ショッピングモールなど幾多の娯楽施設が揃うアジア最大級の‘リゾート・コンプレックス’に進化しています。
その時以来約30年、みごとに成長したバンヤンツリーは、日本初進出にあたり、世界の観光地の中でもトップクラスの人気を誇る古都京都を舞台に選びました。しかも最高の立地に、スモールラグジュアリーリゾートとしての開業です。6タイプで構成する全52室の客室は、敷地内に建てられた能舞台にちなみ、能の伝書のひとつ「風姿花伝」の中から「秘すれば花」の一節をモチーフにデザインされたと言います。東山三十六峰を背にし、京都市街を一望できるロケーションも魅力的です。周辺には世界遺産の清水寺や、二年坂、三年坂、そして、坂本龍馬ゆかりの護国神社や知恩院、円山公園など、京都の歴史や文化、自然を体感できる最良の場に佇んでいます。
自然と言えば、高低差のある敷地の裏手には竹林と緑濃い森が能舞台を包むように囲んでいます。「バンヤンツリー・東山 京都」のコンセプトは‘幽玄’とあります。その意味‘趣きが深く高尚で優美、気品’の通り、繊細なアートの感性とスタイリッシュな‘現代の和の世界’を巧みに融合させて表現し、客室内に美しい空間を創り出したのは‘橋本夕紀夫デザインスタジオ’でした。
また、一方ではサステナブルの概念を駆使し、エコや環境活動にも積極的に取り組んできたバンヤンツリー。そのサステナビリティの観点から、敷地を囲う石垣は「ホテルりょうぜん」(1970年~2019年) 時代からあったものをできる限り活用・補強することで歴史を継承しています。そして待ち望まれたホテルのグランドオープンは、2024年8月20日に迎えました。
特に美しい竹林は6年余りをかけて手入れを行い蘇ったものといいます。その竹林を借景に、京都のホテルで唯一の白木造りの‘能舞台’が併設されました。能は650年の歴史を経て継がれる日本特有の古典芸能であり、2008年にはユネスコの無形文化遺産に登録されています。京都東山の霊山(りょうぜん)地区は、古来より京都の町と山の間、そして町の端に当たる場所で、このような霊山エリアの特殊な立地を背景に、敷地内に隈研吾氏のデザインにより能舞台が完成しました。将来、ここで能楽以外に、どんなパフォーマンスが見られるのか楽しみでしかありません。
ホテルには、敷地内から湧出する天然温泉「京都東山温泉」が提供されています。スパにも温泉を引き、プーケットのバンヤン・スパ&ウェルビーイング・アカデミーで技術の訓練を受けたセラピストが数々のメニューを提供します。京都オリジナル‘シグネチャーメニュー’も開業後にはお披露目されるでしょう。また、シグネチャーダイニング「りょうぜん」では、地元の食材で作る会席料理、和食割烹料理が提供されています。都市型の「バンヤンツリー・東山 京都」ですが、街の雑踏を忘れさせてくれる静謐な空気が漂っています。
取材・文/せきねきょうこ
Photo: バンヤンツリー・東山 京都
せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数。
Instagram: @ksekine_official
DATA
バンヤンツリー・東山 京都
京都府京都市東山区清閑寺霊山町 7 番
📞 +81 75 531 0500