日本初の本格的エコツーリズムリゾートを目指す「星野リゾート 西表島ホテル」は西表石垣国立公園に位置し、自然環境保護や持続可能な観光を目指しています。また環境省やピッキオとの共同作業により、本格的に島の現実に向かい合い、さらに滞在するゲストと共にスタッフ総出で目的に向かい邁進中です。

もともとこの島の観光にも興味がありましたが、何といっても島を目指した一番の目的は‘イリオモテヤマネコ’をこの目で見たい一心からでした。無類の猫好きである上に、世界各地ですでに経験したサファリや野生動物とのラッキーな偶然の出逢いが多くあったがゆえに、ここ西表島でも「ネコに会えるかもしれない」期待を抱いていたのは確かでした。

 いざ石垣島から大原港へはフェリーで40~50分、西表石垣国立公園内に位置する「星野リゾート 西表島ホテル」に到着。途中の道すがら目にした情景に言葉を失いました。濃い緑のジャングル、緑に覆われた大地、奥深い山々や亜熱帯植物のマングローブが繁る様は、想像以上の野性味あふれる環境だったのです。到着後、目にしたホテルは一般の南の島のリゾートとは趣が違い、ネイチャー感が即座に伝わってきました。華やかなリゾートウェアでのんびり寛ぐ人々ではなく、ネイチャーツアーに出かけるための服装や、ザックを背負う姿など、ホテル滞在の目的がすぐに察知できました。



客室の1つ、デラックスツイン(54㎡)。


 スタッフたちは、島のサステナブルな観光仕組みづくりに取り組むために、その一環として「エコロジカルなホテル運営」「島の魅力と価値を感じるネイチャーツアー」「イリオモテヤマネコの保護活動」などを掲げています。滞在ゲストは、スタッフと一緒に体験する様々なネイチャーツアーに参加したり、スタッフが講師となってレクチャーを提供する‘学び’の時間に熱心に参加したりと、リゾートでの楽しみ方は‘自然’にふれることでした。スタッフは、プログラムによっては必要となる水難救助員の資格保持者や、趣味の一環としてダイビングライセンスを取得したり、中には救命救急や水難救助員の資格保有者もいらっしゃいました。



ペットボトルフリーを掲げるリゾートではレンタルボトルを提供。アクティビティの参加で出かけるときなどこのボトルに水を詰めて持参。


 一方、2023年3月から4月迄、ジョギングをしながらゴミ拾いをする「イリオモテプロギング」が開催されるといいます。西表島では野生と触れ合うだけに留まらず、スポーツを通して地域の人とのコミュニケ―ションをとろうというのです。SDG’sの観点からも、環境意識の高い人々にはこうしたソーシャルな行動が、もう当たり前と言えるのかもしれません。ところで、プロキングとは、環境に敏感なスェーデン発祥の言葉といい、ジョギングと、スェーデン語の「plocka up」(拾う)を合わせた造語でした。たとえば、サッカーの日本人サポーターたちが、帰り際に自分たちの座った周辺のゴミ拾いをする姿は世界のメディアからも賞賛されていますが、西表島でゴミ袋を持ってジョギングしながらゴミ拾いをする活動も、そこから必ず何かが見えてくるはずです。



この姿がかつてカメラに捉えられたという絶滅危惧種「イリオモテヤマネコ」の姿。神秘性や野生感など強いアンタッチャブルなオーラが感じられる。



「星野リゾート 西表島ホテル」のロビー階では「イリオモテヤマネコの学校」「世界遺産の学校」を日替わりで開催。知らない生態が学べるとあって盛況!



「イリオモテガイドウォーク」のひとつ、ジャングルコース。マングローブコースも有り。


 さて、私が島を目指した最大の目的は「イリオモテヤマネコに出会いたい」という願望だと述べました。島の固有種であり特別天然記念物、そして絶滅危惧種でもある貴重な野生動物は、現在、島の全域で約100頭が生息していると言われています。今回は滞在中に出会うことはありませんでしたが、同時に、「星野リゾート 西表島ホテル」滞在そのものが貴重な学びの宝庫であることも知りました。

さらに「ネイチャーツアー」の興奮も、厳しさも知ることができました。生物多様性、気候変動、環境保護など、言葉が独り歩きするような今、本当に必要なことは何であるのか、自然環境や野生の姿を良く知れば知るほど、私たち人間との共生共存が容易なことではないのだと思い知りました。私たちが抱えるこの永遠のテーマに、何としてでも早急な取り組みが必要なことも、自然や野生動物に触れる滞在で改めて体感できたのです。



ディナービュッフェ「イリオモテの日」から。西表島の方言でカマイ(イノシシ)、ガザミ(ワタリガニ)などの食材を沖縄原産の黒糖を使った‘すき焼き’に。



黒糖を使ったフレンチトーストを野菜と共にいただく朝食メニュー。



空撮されたホテルの全景。美しい自然に包まれたホテルの周囲には亜熱帯植物の繁るマングローブや豊かな水の流れる川や滝があり、絶滅危惧種や特別天然記念物とともに共存している。





取材・文/せきねきょうこ

Photo: 星野リゾート 西表島ホテル







せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数、21年4月、新刊出版。

http://www.kyokosekine.com


DATA

星野リゾート 西表島ホテル

沖縄県八重山郡竹富町上原2‐2

Tel:050-3134-8094

https://iriomotehotel.com/



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