日本を代表する最高級ホテル「The Okura Tokyo」は、長い期間の工事閉鎖を終え、2019年9月19日に再開業しました。日本中が見守っていたこの再開業は、ホテル名も新たに、予想を遥かに超えてすっかり様相を変えて門出を迎えたのを覚えています。
しかし「オークラ プレステージタワー」5階のメインロビーは、温もりのある‘名ロビー’として長い間愛され、壊すときにも惜しむ声が多く聞かれましたが、改築後、天井から飾られるランタンも以前の趣を残し、驚くほどそっくりに再現されたのを見て、オークラのファンはどれほど喜んだことでしょう。以前のインタビューで語られた代表取締役社長の梅原真次氏の言葉を思い出しました。「オークラには改築をするにあたり、最初から変える部分、変えない部分、変えてはいけない部分がありました。」ということ。老舗ならではの難しい判断も数えきれないほどであったろうと想像しています。
新生「The Okura Tokyo」は、17階建ての中層棟「オークラ ヘリテージウイング」と、41階建て高層棟「オークラ プレステージタワー」の2棟から成り、ホテルの客室は全508室。5つのレストラン、3つのバー、20の宴会場で構成された大型ホテルです。
今回は、オークラグループ最高峰のラグジュアリーブランドとして再生され、迎賓館としての重要な役割を放つヘリテージウイングの魅力をご紹介しましょう。コンテンポラリーなプレステージタワーとは趣を変え、1都市に1軒と決められた「オークラ ヘリテージ」は、エントランスを入った途端、落ち着きと静寂、プライベート感に満ち、上質さが伝わってきます。一人一人を大切に出迎えるもてなしも以前とは変わってはいません。
今回は初めて、ヘリテージイングにある「ヘリテージルーム」(60㎡、ワイドリビング)に滞在しました。8mの間口、3mの天井高、広々とした空間など高級感溢れる客室、そしてバスルームには全室スチームサウナが設えてあります。また日本的な室内のアメニティには、「玉手箱」と呼ぶBOXが置かれ、中には扇子、巾着、折り紙、紙風船など、日本情緒あふれる品が詰められ、海外からのゲストが大喜びする姿が目に浮かびます。
建物や意匠デザインはもちろんですが、それぞれ自慢の料理にも未来へと向かう革新的な変化が見えました。ここですべてのレストランをご紹介できないのは残念ですが、「進化を遂げるホテル」として、「The Okura Tokyo」は、メイド・イン・ジャパンのホテルとして、また最高級の老舗ホテルとしての伝統やサービスマインドの原型を礎に、さらに新しいエッセンスが加わったように感じました。気取らないスタッフとはカジュアルな会話もでき、融通の利く細やかな対応は変わらず、ヘリテージウイングでの初めての滞在は大満足の時を過ごすこととなりました。
一流とはいえ、ホテル内に堅苦しさは有りません。レストランでも同様、プロフェッショナルな対応に嬉しい食事タイムを過ごせました。帰りには、プレステージタワー5階の「シェフズガーデン」で、パンやスイーツをたくさん買い込んで帰宅の途に就きました。ホテルの醍醐味は、こうして滞在の時を楽しみ、食べて、泊って、もてなされ、そしてブランドを持ち帰るショッピングのワクワク感も有るのです。未来へ向かうホテルとして大きな進化を遂げた「The Okura Tokyo」は、常に日本文化の発信地であり、オークラスピリットは今も健在であることを体感できました。
取材・文/せきねきょうこ
Photo: The Okura Tokyo
せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数、21年4月、新刊出版。
DATA
The Okura Tokyo
東京都港区虎ノ門2丁目10-4港区虎ノ門2丁目10−4
📞03-3582-0111