次々と開業する京都のホテルの中に、一際エレガントなスモールラグジュアリーホテルがオープンしました。その名は「THE SHINMONZEN」(ザ・シンモンゼン)、古くから古美術商やギャラリーの多く集まるアートな新門前通、白川の畔に建つ瀟洒な邸です。

 もともと駐車場であった土地をパディ氏がホテルのために購入。祇園で4階建ての建物への承認申請に時間がかかったと言いますが、地下1階、地上4階建ての瀟洒な新築建造物が出来上がりました。すべての部屋が白川に望み、川のせせらぎ音が静かに聞こえ心を静めてくれます。ホテルの建つ祇園新橋付近はもともと市の祇園縄手・新門前歴史的景観保全修景地区に指定され、世界遺産の京都の街に於いても、絵葉書に見るようなたたずまいが情緒的です。


祇園白川に召したリバービューの客室。それぞれにテラスがついて快適。

玄関の引き戸を開けると別世界へと誘うこの美しいアプローチが。建築家、安藤忠雄氏らしいミニマルでモダンな空間。

 京都を代表する街の一画に佇むホテルは、アートに造詣の深いアイルランド人オーナーのパディ・マッキレン氏が熱い思いを込め、アート香る新門前通りを選んで造り上げたプライベートコレクションです。京都文化への憧れや、快適な西洋のデザインも備えたホテルは、オーナーと友人関係にあるという世界的建築家である安藤忠雄氏の感性と技が活かされ、シンプルモダンでラグジュアリーな空間となっています。

障子のあるこの空間はレセプション。壁にかかるのは全9室用のルームキー。レセプションデスク(シャルロット・ペリアンのデザイン)は最高級品であり、その価値は最高級スポーツカー級。

4階にある「HINOKI」のリビングルーム。白の優しいデザインのソファはトゥアン・グレン、ダレン・チュウのコラボでホテルのオリジナル。

「HINOKI」の寝室、コンパクトでとても気持ちの休まる空間。

それぞれにデザインの異なるバスルームの大理石でできたダブルのシンク。ピンクの大理石でできたダブルシンクの部屋も有る。

 マッキレン氏はフランス・プロヴァンス地方にバイオダイナミック農法の葡萄畑やワイナリー「シャトー・ラ・コスト」を有する一方、2017年には同じロケーションに最高級クラスのホテル「ヴィラ・ラ・コスト」も開業しています。ここ京都でも客室に置かれたパジャマや数々のアメニティなど、現地のヴィラで使われているものと同じアイテムにこだわっているといいます。美しく映える障子、京都川島織物の手織り絨毯、ドアに掛ける「Do Not Disturb」用の札の代わりとなる草履、他に家具や調度品も厳選されたオリジナル品が置かれています。各階の壁にかかるアートはオーナー自身の所蔵品が多く、4階には安藤忠雄氏の「Ando×Ando」(ブルー一色の作品)や名和晃平氏の現代アートも飾られています。

もっとも広いスィート「SUISHO」(68㎡、テラス25㎡&4㎡)のテラス。桧風呂、ピンクの大理石のダブルシンク、手織り絨毯など贅沢な設え。

朝食に出される一品、「AVOCADO TOAST」。世界的な流行となっているアヴォカド+フランスパンを使ったダイナミックなトースト。

1階に位置するレストラン「ジャン・ジョルジュ」は、様々な世界情勢や未だ収束しない世界的コロナ禍の状況のため、シェフの来日が遅れ、今尚、開店待ちの状況にありますが7月オープンを目指して準備中です。

 シンガポール出身の総支配人、カトリーナ・ウィ氏のインターナショナルで温かな人柄がスタッフにも浸透し、ホテル全体がゲストを迎える笑顔に包まれています。サービススタッフには韓国、インドネシア、アイルランドなど海外出身者も。またジャン・ジョルジュの名の下にクリエイティブな料理を作る料理長はフランス人のアレクシス・モコ氏が就任しています。祇園地区で唯一となったインターナショナルなホテル滞在は、未来へと継ぐ古都‘京都’の発信拠点として、反対に‘新しい京都’に出逢ったようでもありました。



取材・文/せきねきょうこ

Photo: THE SHINMONZEN





せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数、21年4月、新刊出版。

http://www.kyokosekine.com


DATA

THE SHINMONZEN

京都市東山区新門前通西之町235

📞 +81(0) 75 533 6553

https://theshinmonzen.com/jp/

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