住居や職場の在り方がこれまでとは変わった今。自分が暮らす場所、また働く場所について改めて見つめなおすことが増えた今、様々な分野で活躍する方に生活スタイルと結びつきの深い空間について今感じていることをお伺いしていきます。

グラス一杯分のワインが小さな瓶に詰まった「MAIAM WINES」のプロデュースを務める野木麻衣さん。仕事場とプライベートスペースを兼ねたサロンを借りたことで、満たされた時間を過ごせるようになったそう。新たなワインとそれを楽しむ時間や空間までも提案する野木さんに、ワインとの出会いや事業を始める経緯など様々な話をお伺いしました。


ワインを味わう時間や空間まで楽しんでもらいたい

―まず現在のお仕事について教えてください。

商品コンセプト、デザイン、ブランディング、企画など「MAIAM WINES」に関わることは全て自分でディレクションして、デザイナーさんや製作チームと一緒に進めています。打ち合わせをしたり家にこもって作業したり、倉庫からの発送のオペレーションを確認したり、会社の代表という立場ではありますが、気持ちは現場側の意識でいますね。


―仕事をするうえで特に心掛けていることは何ですか?

お客様がワイン一杯を味わうそのひと時を、どうすれば幸せに過ごせるかを常に考えています。

例えばワインがどんな場所で作られているのか、どんな料理に合うのかまで知ると楽しみが広がりますよね。また映画を観ながらゆっくり過ごすとき、友達とのピクニックでわいわい過ごすとき、などワインを飲むときの空間やシチュエーションまで提案していきたいと思っています。

そのために、箱を開けたときに驚きや感動を与えられるように、ワインが美しく見えるパッケージデザインになっています。また、ワイン1本1本に込められたストーリーを伝える説明のカードや、産地のフランスを旅する気分を味わえるような地図も同封しています。


5本セットの箱は瓶が浮いたようなデザインで、ワインの美しさが映える


―そういった発想はどこから生まれるんでしょうか?

「自分だったらこうしたいな」ということから思いつくことが多いですね。私自身がワインに出会って人生が本当に豊かになったと感じているんです。毎日の食事にどんなワインがあうかを考えたり、レストランにある数種類のワインから自分が好きな味のものを選べたり、そういうことってとても豊かだなと。


―そもそもワインを好きになったきっかけは何だったのでしょうか?

イギリスの大学に通っていたときに、飲食店でアルバイトしていました。そこでワインを飲む機会があって、最初は単純に美味しいと思って飲むようになりました。

それが本当に好きだと感じるようになったのは、それから何年も経ってパリで生活をしていたときでした。パリではライフスタイルの中に、ワインという物がごく自然にあるんです。ビジネスマンがランチで商談をしながら白ワインを飲む光景や、犬を連れたマダムが買い物帰りにテラスで一杯飲んでから家に帰る光景を何度も目にしました。レストランでの経験も、日本ではソムリエさんが説明しながら丁寧に注ぐようなイメージでしたが、パリのローカルなレストランではもっと良い意味で適当な感じで(笑)、ワイングラスやワインの銘柄にそこまでこだわることはなく、食事の中に自然にワインがあるような光景がとても素敵に感じたんです。

日本ではワインというと難しく考えがちですが、ブドウだけでできた自然なものなので、どんな料理にも、人にも合うものだと思います。だからこそ、ワインをもっと生活に身近なものにしたいと考えたんです。


―それが今の仕事につながったんですね。

パリで暮らしているときは、人生を模索しているタイミングでもありました。「ワイン」と「女性」をテーマに何か形にできないかと試行錯誤していたんです。ワイナリーを巡るなかでサンプリング用にこのボトルが使われているのを知りました。見た瞬間にいろいろと思いついて。サンプリングじゃなくて美味しいワインが一杯分になったら…と。

フランスの色々な地域のワインを楽しめるワインギフトを作りたい!という発想が、今でも一番人気の商品「エトワール」を販売するきっかけになりました。


9/26発売予定のワインスタンドの試作品


ダイニングテーブルで過ごす温かい時間が好き

―このサロンではどのように過ごしていますか?

打ち合わせや撮影ができるスペースとして、今年からこのサロンを借りています。会食や外出をする機会が減ったので、プライベートな空間としても活用して、自分の好きな家具やインテリアを買い揃えたり、ワインを飲んだり、好きな映画を見たりと、ここで過ごす時間はすごく満たされていますね。


―特にお気に入りのインテリアはありますか?

ダイニングテーブルです。イタリアのヴィンテージテーブルなのですが、初めて見たときに生きている感じがしたんです。イタリアで産まれたのに、すごく長い歴史のなかで、いま日本にいるというのも魅力的で。一目惚れですね(笑)。

インテリアのコーディネートをあれこれ考えていたんですがこのテーブルに出会って、全部考え直しました。合わせて買った椅子も、これだけだと絶対選ばない色だったと思います。

自然の石でできているからか、ここで食事をするとすごく温かい気持ちになるんです。


お気に入りのダイニングテーブル


―仕事をする際に快適に過ごす工夫はありますか?

まず周囲がきれいだと快適に仕事ができるなと思います。どんなにやることがたくさんあってもまずは部屋を30分かけて片付けるだけで、そのあとの効率がぐんと上がる気がします。

あとはパソコンからふと目を離したときに、目線の先にグリーンがあると心なしか癒されますね。お花や観葉植物など、生きているものにエネルギーをもらえるような気がするんです。グリーンはこれからもっと集めたいですね。


ワインスタンドのサンプル品の色み、新商品の箱の形やデザイン確認などを自ら行う


―オンとオフの切り替えはどうされていますか?

最近、夜は仕事をしないと決めています。あとは、やっぱりワインを飲んだ瞬間に仕事はおしまい。仕事でワインに関わっていると、お昼から飲みたくなってしまうんですがそういうわけにはいかないので(笑)。

―今後やりたいことを教えてください。

パリで出会った一杯のワインから始まったこの『MAIAM』ですが、ちょうどこの9月で設立して7年目になりました。

そもそもワイン店を目指していたわけではないので、これからはブランドとして認知されるようにワイン以外のこともやっていきたいなと考えています。今はワインスタンドのデザインをしているのですが、ワイングラスの商品の企画も予定しています。
また、このグラス一杯分のワインという少量で楽しめるコンセプトを活かして、他の企業の商品とのコラボレーションも行っていきたいと思っています。そして、まだまだ先ですが、将来的にはインテリアやラウンジウェアなどライフスタイル全般を提案していけたらと考えています。


ショコラトリー「JOHN KANAYA」のチョコレートとワインのセットも販売予定


―7年前と今でご自身が一番変わったと感じるのはどこですか?

できないことは無理に自分でやらないで人に任せようとか、自分の得意分野を活かせる環境作りをしようと考えるようになりましたね。

以前は、私は“こうなるべき”とか“こういうふうにならなきゃいけない”とか、周りからの意見にまどわされて無理をしている部分があったんです。

今は、できない部分も含めて自分は自分でいいんだって思えます。


野木麻衣

ワインの輸入・販売を行う株式会社MAIAM代表取締役。100mlの瓶に、ワイングラスたっぷり1杯分ずつに瓶詰めされたワイン「MAIAM WINES」のプロデュースを務める。


MAIAM WINES

HP:https://maiamwines.com/

YOUTUBEチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCgeZ5Do01s5y2OTyBsfDFDA

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