以前、友人たちとの集まりで某女優の話題から「オーラはどうしたら手に入るのだろう」という会話になりました。

人間を含む生体から放たれるエネルギーをオーラというらしいけれど、デパコス売り場にも、おしゃれな街のショーウィンドウにも、それは売っていません。

オーラの正体って何だろう?

言語化することは難しいけれど、その答えの1つに自信から生まれる吸引力、すなわち引っぱる力のようなものがあるのではないでしょうか。見知らぬ人なのに、グイグイと引き込まれる、あの感覚を持つ女性。

オーラの真相は、一概に見た目だけの造形的な話じゃない。皆がそのことに気づき始めています。

最高級の美人ではないし(もちろん存分に可愛らしいけれど)、ファッションモデルのようなスタイルでもないのに「圧倒的な存在感を放っている」と映画ソムリエの私が個人的にどうしても目が離せない。そんなオーラを醸し出している注目の女優の最新作を紹介します。

話題の『エノーラ・ホームズの事件簿』とは

名探偵シャーロック・ホームズに妹がいたという設定で人気を集めた小説シリーズをNetflixが映画化したミステリードラマ『エノーラ・ホームズの事件簿』は配信開始から話題をさらいました。

推理力と行動力を発揮して、兄シャーロック・ホームズを出し抜き、行方をくらました母親を捜すエノーラ・ホームズを主人公に、若き英国侯爵をめぐる陰謀の真実を突き止めていく物語はヒューマンドラマでありながらアドベンチャーのようでもあり、華麗な展開に目が離せなくなります。

主演はNetflixドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のイレブン役でブレイクしたミリー・ボビー・ブラウン。10代の若さで彼女は本作の製作にまで名を連ねていることが話題となりました。『ハウス・オブ・カード』や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のように、エノーラ自身がカメラ目線で視聴者に話しかけてくる第4の壁を破壊する演出が多用され、まるで自分と会話しているような臨場感が新鮮で、彼女の話ならばもっと聞いてみたいと思わせる説得力のある存在感に魅了されます。

Enola Holmes-MILLIE BOBBY BROWN

また、特筆しておきたいのが彼女の兄のシャーロックとマイクロフトを『マン・オブ・スティール』のヘンリー・カヴィルと『世界一キライなあなたに』のサム・クラフリン、母を『アリス・イン・ワンダーランド』『レミゼラブル』『ハリポタシリーズ」のヘレナ・ボナム=カーターが演じていることです。

スーパースターファミリーの集結に興奮せずにいられません。なんて豪華!

これまで何度も実写化されてきたシャーロックシリーズですが、鉄の男スーパーマンを演じるカヴィルによるシャーロック・ホームズは、知性もムキムキの肉体が放つ色気も、セクシーに着こなしたスーツから今にも溢れ出しそうで…(笑)!

過去最高のイケメンと言っても過言ではないシャーロックももちろん見所です。

彼女をみれば、 わかること

SNSを通じて他人の生活がいくらでも覗けてしまうようになり、ステイホームも相まってその時間も増幅したように感じる今日このごろ。

旅行三昧の生活や贅沢で美味しいものをアップする人、

憧れのブランド物をいくつも持っている人、

世間から必要とされ評価される仕事をしている人、

誰もが羨む華々しい人生を送る人。しあわせそうなあの人。


「みんな、人生の良い瞬間だけを切り取って投稿している」

私だってそうなのだから別に動揺することでもないのに、使い古したドレッサーに散らばったプチプラコスメが虚しくて。急に自分がせいいっぱいになって手に入れてきた幸福が、なんとも惨めでみすぼらしいものに見えてくることもあります。

 “一生会わなくて良い”はずの人の生活に振り回される自分がこの上なく情けなく、もどかしくなる瞬間があるのです。

流されないでいるというのは思っているよりも簡単なことではありません。


“ALONE”(一人)という単語の言葉遊びから生まれたエノーラ(ENOLA)を見ていると、彼女の興味の矢印の矛先は、いつだって他人ではなく自分の中に向かっていることがわかります。他人にどう見られるかではなく“私”がどうしたいかがトリガーになっているのです。

自分に関心を持つことは、多くの人の情報が絶え間なく入ってくる現代に実は想像しているよりもずっと難しい行動なのかもしれません。

それでも、彼女を見ていると、自分の大切にしている世界を改めて自覚し、自分がどういった瞬間にしあわせを感じるのかという感覚をもう一度ちゃんとつかまえたいと思えてきます。

まず、自分を見つめる。ブレそうな時こそ、自分の外側に何か探すのではなく内側を見つめる。たまにはペンとノートで書き出したりしてみるのもいいのかもしれない。

自分の軸を持つことで、他人に流される機会もなくなるのでは…と。

彼女の生き様を見ると、気がつけば気持ちが軽やかになっていきます。

物語の1歩先へ

エノーラはコルセットを抑圧の象徴と呼び、女性がこうあるべきであるという世間の常識に縛られず、自分の道を進む女性でもあります。

この連載でも紹介してきた『ストーリー・オブ・マイライフ』や『マイ・ストーリー』ように強い女性が主人公の生き様や自立を描いた数々の名作がありますが、この作品はプラスαの重要な要素として「女性の参政権」などのテーマも盛り込んだメッセージ性もある作品となっています。

一見するだけではそこは目立たず、難しく考えなくても楽しめる推理ありの娯楽映画に仕上がっていますが、1歩進んだ理解を深めたいと考えている人は20世紀初頭に参政権を求めて立ち上がった女性たちの実話を基に描くヒューマンドラマ『未来を花束にして』をチェックされてみてはいかがでしょうか?(2020年10月現在Amazonプライム追加料金無しで視聴可能)

エノーラの母親がなぜ彼女に何も言わずに家を飛び出したのか、より深く理解できるはずですので、芸術の秋にはそちらも併せておすすめです。


Netflix映画『エノーラ・ホームズの事件簿』独占配信中




映画ソムリエ 東 紗友美(ひがし・さゆみ)

1986年6月1日生まれ。2013年3月に4年間在籍した広告代理店を退職し、映画ソムリエとして活動。レギュラー番組にラジオ日本『モーニングクリップ』メインMC、映画専門チャンネル ザ・シネマ『プラチナシネマトーク』MC解説者など。

HP:http://higashisayumi.net/
Instagram:@higashisayumi
Blog:http://ameblo.jp/higashi-sayumi/

Share

LINK