「Inspiration Life」では、様々な分野で活躍されている方の生活に密接したご自宅を、ルームツアーのように巡りながら、空間のこだわりや仕事への想いについてお聞きします。
今回伺ったのは、住まいの空間を彩る製品とサービスを提供するLIXILで、デザイナーとして様々なプロダクトを手掛ける安間広介さんのご自宅。築50年以上のマンションを自ら設計してフルリノベーションされたという空間には、安間さんのアイデアとこだわりが随所に感じられました。

生活と仕事がグラデーションのように繋がっている

――安間さんのお仕事について教えてください。
入社当初は、水栓金具や化粧台、キッチンなどのデザインを担当していました。その後、新規事業の立ち上げ部署に所属したのですが、その部署のデザイン担当者は僕一人だけだったんです(笑)。だから製品をデザインするだけでなく、それを売るためのウェブや広告の制作、写真や動画の撮影まで幅広く対応していました。おかげでいろんなことができるようになり、現在は水まわりのデザインを担う部署で、全体のディレクションや若手デザイナーのサポートを行っています。

――もともとデザインに興味があったのでしょうか。
大学時代に4年間インテリアデザインを学び、大学院では様々な製品のデザインについて学んでいました。

――空間と製品、両方に関われるぴったりの職場だったんですね。お仕事をするうえで、大切にされていることは何ですか。
デザイナーとしての立場で考えれば、ユーザー視点はとても重要です。ただ、企業の中のデザイナーなので、企画部門や開発部門、生産部門など、連携する部門のメンバーが大切にしていることを、同じように大切にするようにしています。
企業としてビジネスをしている以上、原価や掛け率がどのくらいになるのかなども理解し、デザイナーの独りよがりにならないよう、ビジネス全体でバランスをとることを意識しています。

――新たなアイデアへのインスピレーションは、どこから得ていますか。
住生活に関わるデザインをしているので、生活のすべてがインスピレーションに繋がっています。何気なく料理の盛り付けをしている時も、デザインに結びつけて考えることがあります。
また、ギャラリーを巡ってアートや工芸品を鑑賞したり、Pinterestでリファレンスを収集したり、そういったことからヒントを得ることもありますね。

――リモートで仕事をすることも多いと思いますが、仕事のオン・オフはどのように考えていますか。
やはり、仕事と生活がとても密接なので、常にどこかグラデーションのように繋がっているという感覚ですね。この家の設計を経験できたのがとても大きくて、打ち合わせの中で「自分の家はどうなっていたかな」と確認して、それを製品に生かすということはよくあります。

ワイドスパンを生かした広々とした空間へ

――物件購入までの過程を教えてください。
コロナ禍で結婚し、子どもも生まれたので、前の家が手狭に感じるようになり、購入に良い機会だと考えました。物件を探し始めると、間取りを見て「ちょっといいな」と思っても都内だと考えている間に売れてしまうんですね。今の家は、見つけてすぐに内見をさせてもらい、一面が窓になっているのが気に入って、すぐに購入を決めました。リノベーションのイメージは、この家を見て浮かんできましたね。

――ご自身で設計をすることになった経緯を教えてください。
仕事の展示会やイベントなどでは空間のデザインをすることがありました。周囲に建築関係の知り合いも多くいて、「デザインのイメージを作れば、実際の設計は工務店にいる実施設計の人たちにやってもらえるよ」と教えてもらったんです。それならできるかな、と思ったんですが、進めている途中で工務店の実施設計の方が退職されてしまって。そこから、自分で設計まで手掛けることになりました。

――未経験で大変なことも多かったのではないですか。
大枠のイメージは描けるのですが、細かな設計図を描ききれなくて、現場の方に要望を伝えるのに苦労しました。イメージしたことが実際にそのままできるかというと、やっぱり違うんですよね。

――ご自身なりにこだわった部分を教えてください。
視覚的な広さを意識しました。部屋の高さを出すために、天井も床もギリギリまで広げています。だから、玄関が無いんですよ。本来、玄関はほかの部屋よりも一段低くなるものですが、部屋の高さを優先するために玄関は作りませんでした。
また、バスルームも天井高を確保するために、配管はむき出しになっています。それでも成立するようなデザインを考えて、サビ鉄調のタイルを選びインダストリアルな雰囲気にしました。

実は、リフォームを進める中で、寝室の一角にマンション全体の電気に関わる幹線が通っていることが分かったんです。天井の高さをキープするためには、その幹線の部分を工事しないといけませんでした。そこで、まだ入居していないのに理事会に参加して、「計画停電をさせてほしい」とお願いしたんです。みなさんの協力がなければ、この天井の高さは変わっていたと思うので、諦めなくてよかったですね。
また、視覚的な広がりや統一感を出すために、キッチンの高さや寝室の間仕切りのフレームの高さを、窓のサッシの高さに合わせました。

――そういったテクニックは、どなたかに教わったのですか。
自分で「どうすればいいのか」と考えた結果です。プロじゃないだけに、高さひとつを決めるのにも悩みました。よりどころが欲しくて、「もとからある窓のサッシに合わせればいいのかな」と。そうやって糸口を見つけながら設計しました。

――ご自宅で気に入っている場所はどこでしょうか。
キッチンから寝室までのロングスパンの眺めですね。こだわって作った広さを感じられますし、子どもがベッドでゴロゴロしたり、リビングで遊んだりしているのをここから見ていると、なんか安心するんです。
また、浴室・洗面空間はLIXIL(INAX)の製品群で構成されているので、仕事をしてきたデザインチームの一員としても誇りを感じられ、気に入っています。トイレも同じですね。

――家ではどのように過ごすことが多いですか?

たまにホームパーティを開くこともありますが、いつもは娘の勉強やおもちゃのピアノを弾いているのを見守ったり、一緒に子ども映画を観てゴロゴロしたり…とリラックスして過ごすことが多いですね。

――家を快適な空間にするために、大切にされていることを教えてください。
「魅せたいもの」と「見せたくないもの」をはっきりさせることですかね。僕の場合は、電化製品をなるべく見せたくないんです。ふつうはお風呂場に洗濯機があることが多いですが、そうなると洗濯機の周りに掃除道具も集まって、どんどん散らかってきます。お風呂って、素の自分になる場所で、本来はもっと神聖なものだと思うんです。
そういう考えもあって、洗濯機や冷蔵庫はキッチンの奥に専用のパントリーを設けて収納しています。

そんなふうに「見せたくないもの」と認識すれば、自然としまうようになりますし、しまう場所が確保できなければ、下手に買うこともしません。
そのうえで好きなお花やオブジェを飾るなど「魅せたいもの」を取り入れます。

本当に「魅せたいもの」に囲まれて生活するのは心地よく、常に部屋を綺麗にしておきたいという気持ちにもつながる気がします。

安間広介(やすま・こうすけ)さん

LIXILデザイナーとして、水まわりを中心としたプロダクトデザインを手掛けるほか、WEBデザインや広告制作など幅広い業務に携わる。インテリアや料理などライフスタイルに関わること全般を趣味に持つ。

Instagram:@kosuke_yasuma

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