フランスの暮らしとデザインを紹介する連載の10回目はカンヌを代表するホテル「カールトン・カンヌ」をご紹介します。100年以上の歴史を持ち、世界的なスターに愛され続けているラグジュアリーなホテルで、特別なステイを体験しました。

©RomeoBalancourt
地中海の青い海沿いに立つ、白亜の殿堂「カールトン・カンヌ」。優雅な2つのドーム屋根とベル・エポック様式の外観を持つこのホテルは、1911年にオープン。1913年に拡張され、長い歴史の中でヨーロッパの社交界のみならず、映画史にも深く刻まれている。

©︎Amaury Laparra

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ホテルは7年をかけて改装した。2020年には完全に営業を停止し、2年半の間大規模な工事を行い、2023年3月13日、グランド・オープンを果たした。設計はインテリア界の名匠トリスタン・オエールが担当。建築家、デザイナー、各分野で最高の技術を持つ職人、約750人を集め、歴史的な外観を尊重しながら、内装は贅を極めつつもモダンに刷新した。

新しく設けられた2つの棟には、プライベートプール付きペントハウスやスイート、最新設備の「C Club」(ボクシングリング、フィットネスマシン、エクササイズルームなど)を収めた約930㎡のウェルネスエリアが設置され、インフィニティプール、バーテラスを擁する中庭も完成。




332室の客室のうち72室が海向き。特に見逃せないのは、グレース・ケリー・スイートやアルフレッド・ヒッチコック・スイートなど、有名人の名を冠したスイートルーム。ヒッチコック・スイートのドア前では、実際にヒッチコックの映画「泥棒成金」のグレース・ケリーとケイリー・グラントのキスシーンが撮られたという。

© Carlton Cannes /Elise Quiniou

© Carlton Cannes /Elise Quiniou

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館内には2つのレストラン、ティーサロン、バーがあり、ホテル前の浜辺にビーチレストラン&バーを設ける。2025年4月にはアナトリア料理のレストラン「RÜYA(ルヤ)」がリニューアルオープン。プロデュースはドバイやロンドンでも成功を収める実業家のウムト・オズカンジャ。トルコのアジア側であるアナトリア地方の伝統料理をベースに、モダンなアレンジを加えたメニューを提供。シグネチャーはシェアスタイルの料理。羊肉や豆、ヨーグルト、野菜などの素材を中心に、スパイスやハーブで香り高く仕上げた一皿一皿が、伝統と洗練を同時に感じさせる。レストラン内に伝統的なパン窯を設置し、調理の様子を間近に見ることができるのも楽しい。




「リヴィエラ・レストラン」はフランスのブラッスリーの定番料理を味わえる。南仏やイタリアのタッチを加え皿や、上質な肉料理やその日の水揚げによる魚料理を提供。名物料理は地産の野菜を使った薄焼きタルト、アンチョビとキャラメリゼしたオニオンを薄いパン生地に乗せたピサラディエール、地中海産スズキのカルパッチョ(赤スグリ、レモンコンフィ、豆苗添え)など。ビュッフェ式の朝食も豪華!

リニューアル後にオープンしたバー「°58」。日中は落ち着いた雰囲気で、夜になるとともに活気を帯びる場所だ。クラシックなカクテルに加え、南仏の風土に根ざしたオリジナルレシピもある。「トマティーニ」は、ブラッディ・マリーを再構築し、ホテルの庭で育てるバジル、オリーブオイルを用いた繊細なカクテル。

ホテルが建つクロワジエール通りには、高級ブランドショップやカンヌ国際映画祭のメイン会場など、見どころがいっぱい。旧市街の市場も徒歩圏内。旧市街で地産の食材を味わったり、鮮魚店で牡蠣とよく冷えた白ワインをいただいたり。ローカルのような体験もお薦め。

©︎ Amaury Laparra
カンヌが誇る至宝「カールトン・カンヌ」。優雅さと気品に満ちた空間では日常の喧騒を忘れ、特別な休日を過ごせる。心に残る幸せな時間を、体験できる場所だ。
Carton Cannes
カールトン・カンヌ
HP:https://carltoncannes.com/en/
(文)木戸 美由紀/文筆家
女性誌編集職を経て、2002年からパリに在住。フランスを拠点に日本のメディアへの寄稿、撮影コーディネイターとして活動中。株式会社みゆき堂代表。マガジンハウスの月刊誌「アンド プレミアム」に「木戸美由紀のパリところどころ案内」を連載中。
Instagram:@kidoppifr










