みなさんこんにちは! 弁護士の菅原草子です。連載が始まって3年目に突入したようでして。聞いてはいたけれども、年々早まる時の流れに少しの恐ろしさを感じている2025年1月です。気付けば弁護士歴もまあまあ積み重なってきました。気持ちは今でも初心のままなのに。まだまだ日々、全力です。今年もよろしくお願い致します。
去年の暮れ、どうしても行きたかったライブのチケットが一般販売では取れず、はじめて正規のリセールサイトで入手して参戦してきました。それはもう本当に良いライブで、リセールに心底感謝しました! 一方で、チケット転売に関しては、トラブルがニュースになることも…。その瞬間にしかない特別な思い出と感情をアーティストから与えてもらえるライブで、悲しい思いをする人が出てほしくない!
ということで今回は、実は知らない転売チケットのOK?NG?のボーダーラインを解説していきます。
1 チケットを転売はすべてが違法?
結論からいうと、違法になるケースと、ならないケースがあります。
そもそも、転売行為が法律で取り締まられるようになったのは、「ダフ屋」や「転売ヤー」による高額すぎる転売が増え、問題意識が高まったため。
一般に、「ダフ屋」は、ライブや舞台等のチケットを、転売目的で購入し、会場の周りで販売価格よりも高額でチケットを転売する人で、「転売ヤー」は、オンラインのオークションサイト等を利用して、高額でチケットを販売する人のことです。彼らが、自分でライブ等に行く目的ではなく、高額転売を目的にチケットを購入することで、本当に行きたかった人がチケットを取れなくなり、不当に高額な代金を負担して購入しなくてはいけないことになります。
これはアーティストや主催者側にももちろん影響があります。たとえば、自分のファンがチケットを取れなくなるという事実自体はもちろん、もしお客さんが定価でチケットを購入できれば、複数回ライブに参加できたり、グッズを購入したりすることに費用を回せて、その分がアーティストの利益になったはずであるところ、高額転売があることで、そのような利益を失う可能性もあるからです。
ダフ屋については、実際に会場付近で販売行為を行っていることから、各都道府県の迷惑防止条例で取り締まることができますが、同条例は基本的に「公共の場」における行為が対象のため、インターネット上での「転売ヤー」は取り締まることができませんでした。
そこで、2019年6月に施行されたのが「チケット不正転売禁止法」であり、これにより「転売ヤー」による高額転売も取り締まれることになりました。
2 転売が違法になるケースとは?
「チケット不正転売禁止法」では、国内で行われる映画、音楽、舞踊などの芸術芸能やスポーツイベントのチケットのうち、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨が明記された座席指定等がされたチケットの不正転売等を禁止する法律です。
不正転売とは、興行主に事前の同意を得ずに反復継続の意思をもって行う有償譲渡であって、興行主等の販売価格を超える価格で特定興行入場券を転売することをいいます。
対象となるチケットを、「特定興行入場券」といいますが、これにあたるのは、次の①~⑤のすべてに該当するものです。特定チケット、と表記がされていることもあります。
①チケット販売の際に、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨が明示されていること
②①について券面(電子チケットは映像面)に記載されていること
③興行の日時・場所、座席(また入場資格者)が指定されたものであること
④座席が指定されている場合は、チケット販売時に購入者の氏名と連絡先(電話番号やメールアドレス等)が確認されており、その旨が券面に記載されていること
⑤座席が指定されていない立見のイベントなどの場合は、入場資格者の氏名と連絡先(電話番号やメールアドレス等)が確認されており、その旨が券面に記載されていること。
招待券などの無料配布チケット、転売を禁止する旨の記載がないチケット、販売時に購入者又は入場資格者の確認が行われていないチケット、日時指定のないチケットなどは、「特定興行入場券」には該当せず「チケット不正転売禁止法」の対象外となります。
「特定興行入場券」に関して禁止される行為は、
- 特定興行入場券(チケット)を不正転売すること
- 特定興行入場券(チケット)の不正転売を目的として、特定興行入場券を譲り受けること
です。
もし違反した場合には、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはその両方が科されます。
3 違反転売されていたチケットを購入した人はどうなる?
これについては、チケット不正転売禁止法によって処罰されることはありません。ただし購入者も不正転売目的であった場合には、処罰の対象になる場合があります。
購入者は違法、処罰にあたらないとしても、多くのチケットは、転売が禁止されていますので、高額でチケットを購入したとしても当日入場を認められない場合があります。また、後述のように、トラブルも報告されています。そもそも、不正な転売行為自体が違法とされている以上、そのようなチケットを購入するのは控えるべきでしょう。
4 やむを得ず転売する場合は、正規のリセールサイトを!
とはいえ、急用や急病で予定していたイベントに行けなくなることはありますよね。転売が完全にNGとされ、チケットを無駄にしてしまうのは、誰も望まないこと。そこで利用できるのが、正規のリセールサイトです。
法の施行に伴い、「チケット適正流通協議会」という組織が発足しました。ここでは、チケットのリセールについてユーザーが安心して購入できる上質なサービスを認定し推奨する活動等が行われています。正規のリセールサービスとして認定されているのは「チケトレ」などの「FTマーク」があるリセールサービス。興行主の事前の同意も得ており、チケットの券面金額でリセールが行われます。転売者も購入者側も、同サービスを利用すれば、安心してチケットと代金の授受ができます。
5 実際にあったトラブル事例
インターネット上におけるチケット転売のトラブルは、年々増えているようです。国民生活センターからは、例えば以下のような事例が報告されています。
<事例1>検索サイトで一番上に表示されたサイトにアクセスしたところ、海外の転売仲介サイトと気づかず、高額なライブチケットを購入してしまった。
<事例2>SNSでチケットを譲りますとの投稿を見つけたため、個人的にやりとりをしてライブチケット代金を振り込んだ後、連絡が取れなくなってしまった。
このような場合、非正規のサイトでの購入では入場ができない可能性はありますし、違法転売を助長することにもなります。またSNSのアカウントから個人を特定することが不可能ではありませんが、時間がかかりますし、代金以上の費用がかかることが予想されます。いずれも結局は楽しみにしているイベントへの参加ができなくなってしまいますよね。
チケットを購入する場合には、やはり正規の販売サイトから購入するよう注意するのがよいでしょう。国民生活センターでは、もしもトラブルが生じた際には相談するよう呼びかけています。(*消費者ホットライン「188(いやや!)」番)
チケットを転売するときも、それを購入するときも、正しいリセールで気持ちよくライブに参戦したいですね!
【参照サイト】
・文化庁「チケット不正転売禁止法」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/ticket_resale_ban/index.html
・チケット適正流通協議会
・政府広報オンライン「チケットの高額転売は禁止です!チケット不正転売禁止法」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201904/1.html
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弁護士 菅原草子(スガワラソウコ)
仙台市出身。都内法律事務所所属。個人から企業まで分野を問わず相談をうける、駆け込み寺的存在を目指している。
大学院農学研究科で食品成分の研究をしていた異色の経歴をもち、企業の社外役員も務める。
趣味は、ビールと美味しいごはんと海外旅行。
instagram:@sooco_s328
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