星野リゾートが展開する温泉旅館ブランド「界」に共通するのは、「王道なのに、あたらしい。」というコンセプトです。

滞在することで温泉の知識はもとより、ご当地の伝統工芸、芸能、食、歴史を「界」を通して知見を深めるなど、日本の秘めたる面白さを再発見することも大きな楽しみです。

この連載では、ホテルジャーナリスト、せきねきょうこが日本中の「界」を旅し、その奥深い魅力に迫ります。


岐阜の山深い山岳地に、古くから人を癒す湯と共に発展を遂げた奥飛騨温泉郷‘平湯温泉’(標高1,250m)に向かいました。ここが日本の名湯の中でも‘日本三大湧出量’を誇っているとは知りませんでした。‘飛騨’という名は全国的に良く知られ、高級品の飛騨の家具、木工、世界的ブランドとなった飛騨高山地域など、様々なシーンで‘飛騨’エリアの名の響きは旅情をそそられます。

奥飛騨温泉郷の中でも最古の温泉として知られる‘平湯温泉’に、星野リゾートは岐阜への初進出として、2024年9月、温泉旅館「界 奥飛騨」を開業しました。「界」のコンセプトは「王道なのに、あたらしい。」とあります。ここ「界 奥飛騨」では、それに加え、もうひとつのテーマに「山岳温泉にめざめ、飛騨デザインに寛ぐ宿」が掲げられています。館内にはこの地域に伝わる飛騨の家具や組木、曲木の技法、木工の伝統工芸や継承される地域文化が随所にあしらわれ、伝統を現代風に昇華させたモダンなデザインに設えてあります。宿の周辺には広葉樹も多く茂り、「界 奥飛騨」は周囲に迫り来るダイナミックな山々に包まれるように静寂の中に佇んでいます。

飛騨地域は全国2位の森林率。古くからこの地には木工や飛騨の匠の職人技、アートなど、木に纏わる素晴らしい伝統技法が継承され、フロント内も木に包まれている。床に敷かれるナラ材はソファを岩と捉え「岩の間を流れる川」を表現。
フロント内の天井から吊るされる木製の‘フロント・アートワーク’。

ひと昔前の平湯温泉は、日本各地の山岳温泉同様に湯治客で賑わい、地域のひとびとが共同浴場を利用する温泉としてご近所づきあいが育まれたというのです。湯あみを楽しむ文化が生まれてきたのも当然で、それは賑やかな時代だったと伝わります。「界 奥飛騨」では、そんな平湯温泉の歴史や文化を礎に、客室棟を2棟に分け、東棟には客室、大浴場、食事処を設え、西棟にはプライベートに室内露天風呂を備えた客室が揃います。さらに温泉棟(湯小屋棟)が造られ、それぞれの離れや庭、休憩処を回遊しながら湯めぐりが楽しめるリゾートとして視線が集まります。「界」ブランド特有の地域文化に触れるのは、すべての部屋を‘ご当地部屋’として設えただけではなく、アクティビティには‘ご当地楽’ として古くから飛騨地方に伝わる木工技術を実際に体験する「飛騨の匠体験」を提供したり、旅の情緒を感じながら思い出作りに華を添えるよう歓待しているのです。

「特別室」内のブナやタモ、サクラ、ナラなどを使用したヘッドボード。匠の技のダイナミックな「曲木」の美しさをモチーフとしているアーチ形に感動。木の香りを感じながら木に包まれて眠る安心感は他に例えようがない。
ご当地部屋「飛騨MOKUの間」に設えた客室内のゆったりとした露天風呂。すべての部屋がご当地部屋であり、飛騨の魅力を最大限に演出、飛騨春慶のウォールアートや飛騨染のオリジナルクッションなど内装には伝統と今を融合。
「雪の回廊」をイメージした大浴場の露天風呂。天井の窓には晴れれば美しい青空が見え、夜は満天の星空を見ながら湯に浸かる!
用意された取っ手の木の部分を道具を使いながら少しずつ曲げていき、それに風呂敷を縛って仕上げる‘風呂敷バッグ’はご当地楽「飛騨の匠体験」の人気プログラム。出来上がりは持ち帰れる楽しみが。実際に木を曲げる方法を教えてもらいながら割れないかとやや緊張、1300年超の歴史に触れる時間。

伝統文化に触れるように造られたご当地部屋‟飛騨MOKUの間“では、春慶塗アート(漆塗りの技法の一つ、飛騨春慶塗は自然のままの木目を生かした琥珀色の漆器)が飾られ、日本三大美祭り「高山祭」の法被に使われる代表的な柄の龍が描かれた飛騨染めのクッションがソファを飾り、さらに飛騨産業の曲木チェア、山中和紙の柔らかな光を放つ行灯なども設え、飛騨の魅力を体感できる室内インテリアの中で過ごせます。中でもベッドの頭部から天井を飾るヘッドボードは圧巻でした。曲木をモチーフにし、ブナ、タモ、サクラ、ナラで造られたヘッドボードは柔らかなR型が美しく、室内で堂々とその存在を誇示しています。実際に、木に包まれるように眠る快適さは格別でした。

夕食は‘飛騨牛味噌すき会席’です。季節感や旬の食材を期待するのは当然でしょうが、何よりもゲスト最大の楽しみは‘飛騨牛’かもしれません。飛騨牛は美しい霜降りが特徴的。柔らかで香ばしい飛騨牛を、敢えて味噌仕立てのすき焼きにして提供されます。一方、‘ご当地朝食’では、彩り豊かな数々の干し野菜が使われ、それらを素朴な味噌仕立ての汁鍋で煮込んでいただく、とても元気の出る朝食に、奥飛騨らしい1日が始まりました。

飛騨の食材を採り入れたバラエティ豊かな「ご当地朝食」。この地域で食されている保存食、数々の干し野菜を煮込んで作る味噌汁(鍋)は圧巻。朴葉に包まれている地域の伝統食のひとつ「朴葉蒸し(きび蒸し)」は界 奥飛騨のオリジナル料理です。奥飛騨ならではの食材「朴葉」に、きびのおこわをちまきのようにつつみこみ、薫り高い1品としました。
中庭にある豊富な湯量の足湯でのんびりと景色を楽しむ。山に包まれる山岳温泉ならではの五感が静かに癒される。

取材・文/せきねきょうこ

Photo/界 奥飛騨

せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数。

http://www.kyokosekine.com

Instagram: @ksekine_official

DATA

界 奥飛騨

岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯138

界予約センター:050-3134-8092(9:30~18:00)

https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiokuhida/

「界 奥飛騨」ペア宿泊券 読者プレゼント

もっと知りたいホテル旅 ~麗し星野リゾート物語~でご紹介した「界 奥飛騨」のペア宿泊券を抽選で2組4名様にプレゼントいたします!

応募締切:2025年5月23日(金)18時
当選者の発表は、メールでのご連絡後商品の発送(6月中旬ごろ)をもってかえさせていただきます。
提供:株式会社星野リゾート

ご応募いただく前に、以下詳細をお読みください。
なお、ご応募いただいた時点で、以下の内容にご同意いただいたことになります。

<応募要項>
◆ご当選された方には宿泊レポートとして感想とお写真をご送付いただきます。いただいた内容はSUMAUおよびモリモトの公式SNSなどに投稿させていただく予定です。詳細はご当選者へのみご連絡いたします。

【プラン内容】界 奥飛騨
泊数 :1泊2日
人数 :2名一組 ×2
期間 :2025年7月1日~2026年1月31日
除外日:土曜日、祝前日、祝日、休館日、2025年8月7日~8月18日、12月29日~2026年1月4日
客室 :飛騨MOKUの間 和室(3名定員)
食事 :2食付き

【注意事項】
・当選された方が、その権利を第三者に譲渡することは出来ません。また、インターネット・オークション等での転売行為を禁止いたします。
・当選者の個人情報は、法律の適用を受ける場合や法的効力のある要求によるものを除いて、宿泊施設を除く第三者に開示することはありません。
・記載内容以外のお支払いはご宿泊者自身でのご精算となります。

※プレゼントの応募は締め切りました。たくさんのご応募をいただきありがとうございました。

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